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第四百八十一話 カズくんコハン村を楽しむ……か?

 俺が気を失っている間、なにやらナギサさんとサスケさん……いや、ユーサンとの間でやりとりがあったようで、コハン村についたばかりだと言うのに、早くも次の目的地は『マリーノ村』であると言われてびっくりしてしまった。


「えっ まさか、コハン村でのイベントをスキップするんですか? 『そして俺たちは二日間たっぷりとコハン村を堪能し、現在マリーノに向かっているところなのだ』とか唐突に言っちゃったりして」


「何意味がわからねえこと言ってやがる。当たりどころが悪かったのか? まあいい。とりあえずここを出るぞ。マリーノに行くならまずここで学べってユーサンに言われたからな」


 どうやらコハン村はコハン村で何らかのイベントが待っているらしい。一体今度は何が起きるというのだろうか。我々探検隊は――なんて考えていたらナギサさんが拳をぐっと握った気配を感じた。


「え、えっと学ぶって何を学ぶんです?」


 とりあえず暴力を回避すべく、話題に乗ってみれば、なんともコハン村らしい解答がかえって来た。


「何って、お前の頭は泥でも詰まってんのか?コハン村だぞ。ここは釣り文化の最先端の地。全ての釣具はまずここでテストされるらしいんだが、それを使ったテクニックを磨く釣り人が多数集うすげー場所なんだ」


 ほへー。なるほど、言われてみれば確かに朝から釣り客で溢れていたわ。


「え、でもマリーノにも釣具店は有りましたし、立派な釣り公園もあったりしてあっちでも訓練はできそうな感じでしたよ」


 なんて『あ、自分既にマリーノ行ってきてるんで。なんならガイドしますよ』オーラを出したのが行けなかった。


「いっでえ!」


「やっぱお前の頭は泥まみれのようだな。いいか? マリーノに釣具屋があったり、立派な釣り場が有るのはまあ、わかる。海とか言う湖みてえな所が有るらしいからな。だが、そこよりここは進んでるって話だろ? マリーノに行く前にここで修行したほうが楽しいぞってユーサンが言ってくれたんだよ……ってさっきも話したろうが!」


 首の皮を抓られながら……ここすっごい痛いよ! 抓られながら、ユーサンからのアドバイスであると告げられる。そう言えば確かにそんな事を言っていましたね。


「で、でも一体どうして釣りなんです? マリーノの魚介が美味いのは知ってますし、それをナギサさんがクレープに使いたがるのは俺でも想像できますよ。でも、市場で買ったらいいのでは?」


 言った後、しまったなと思いました。これはまた新たな痛いポイントを開発されてしまうのでは?俺としたことが、過ぎた言葉を言ってしまいましたな!なんて思ったけれど、幸いなことにお仕置きはされなかった。


「あたいが……、あたいがもし普通のクレープ屋さんだったらさ、それでいいし、それが正解なんだろうな。でもさ、あたいには冒険者という肩書もあるんだ。相手の生命を頂いて飯にする以上、なるべくなら自分の手で勝負したいのさ」


「ナギサさん……」


 かっこいい!かっこいいっす!漢だ!漢だぜナギサさん!


 そういう事ならあっしもお付き合いしますぜ!というわけで、我々はファミレスを出て一路湖に向かった。


 途中、早朝だと言うのに多くの人で賑わう釣具屋に寄ってオススメのセットをそれぞれ購入。最先端の道具で、本来ならば結構高価なものらしいんだけど、テストを兼ねてプロトタイプに近い商品を売っているとかで、マリーノなどで買うよりずっと安く買えるようだ。


 俺もナギサさんもそこまでお金に困っているわけではないけれど、お金は大切ですからね。見ればナギサさんもニッコリと上機嫌。何時もより大分フレンドリーな口調で釣具店の店長とお話をしていたわ。


 つうか釣具屋の店長もウサ族なのか……。この世界はマジでウサ族に牛耳られているのでは?


「おい!ホームセンター!朗報だ!すげえ訓練が受けられるぞ!」


「えっ!?」


 訓練……精神とアレの部屋……筋肉と美女が……筋肉と筋肉が……主に筋肉が俺の心を……うう、頭が……!


「どうした?ホームセンター、また何か変なの拾い食いしたのか?」


「俺は犬じゃないですからね。いえ、訓練と聞いてちょっと思い出に浸っただけですよ」


「変なやつだな……まあいい。今ならすげー人から釣りを学べるらしいんだ!善は急げだ!とりあえず走るぞ!」


[え、ちょ、待って!待ってくださいってば!もげる!腕が!もげる!抜けるから!俺のリボ球が!抜けるってええええ!!!!」


 冗談じゃなくてマジで腕がすっぽんと抜ける勢いで引っ張られ、慌てて足を動かしなんとかナギサさんのダッシュについて……行くのは無理だったので、腕を軽く炒める羽目になったけれど、転んで引きずられる前に目的地に到着できたのは不幸中の幸いだった。


「で、ボート乗り場……ですか。あのうだつの上がらなさそうなおっさんが実は釣りの名手とか?」


 眠たげな顔で店番をしているドワーフ族の男……。なんとも退屈そうな顔で漫画を読んでいるが、ああ言う人が意外とやるんだよな。釣り漫画のあるあるやね。よく見れば眼光が鋭いし、アレはかなりの腕前と見たね。


「いや、知らんがアレはただのおっさんだろうな」


 違かった!


「しかし、他に人影はありませんよ? こちらに向かってた釣り人達は全部追い抜いてきちゃったし、一体誰から釣りを習うというのです?」


「そういや話してなかったか……と、その前にボートだ。おい、オヤジ!ボート借りるぞ!」


「ああ、戻ってくるまで乗り放題で10リパンだよ。ちゃんと返してくれたら5リパン返却するからね」


 貸しボートにしては少し高いと思ったが、借りパク防止でそうなっとるんか。なかなか良くできておるな。


 どうやらこのボートが最後の一艘だったようで、俺達の後からやってきた釣り人達がひどく悔しそうな表情を浮かべている。


「くっそお!姫が来てるらしいって聞いたから急いだのに!」


「普段ならまだ半分以上ボート残ってんのによ!」


「悔しいが、姫が来ているという情報を早く得られなかった我が身を恨むしか無いな……」


 姫……?非常に気になる単語が耳に入ったが、ボートから俺を睨むナギサさんのほうが今は大切だな。これ以上待たせると湖の藻屑にされかねん。


「よっし!ホームセンター!漕げ!目指すは湖中央の島だ!」


「かしこまり!ホームガーディアン号発進!」


 そして俺たちが乗るボートは桟橋から解き放たれ、釣りの師匠の元へと進水したのであった。

ユウ『いやあ釣りもしたいっていうからさあ、折角だし少し練習してったら?っていったらこれよ』

パン「いいんじゃない?折角コハン村に来たんだし、ただ買い物して終わりってのも寂しいじゃない」

ユウ『まあね。ただなあ、カズは釣りの才能があんましねーんだよなあ』

パン「だったらちょうどいいんじゃない?何か釣りの先生見たいのが居るらしいじゃないの」

ユウ『ああ"姫"な。つうか、その姫様は今俺と一緒に釣りをしているわけなんだが』

パン「あっきれた!帰ってこないと思ってたけど、なにのんびりと釣りしてるのよ!」

ユウ『いやいや……自分で転移したわけじゃないんだよ? お迎えを待ってる間の暇つぶしなの!』

パン「あっ……そうだったわね。ごめん、迎えに行くの忘れてた……」

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