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第四百八十話 カズくんクリティカルヒット

 ……妙な怠さを感じる。良い具合に寝ている時に無理矢理起こされた時のような、机で寝落ちしてビクッと起きた後のような……何にせよ、スッキリしない目覚めと言った具合の状況、それが今の俺だ。


 ここは……ファミレス? あれ、俺はどうしたんだっけ? ユウさんと徹夜でハムった後、朝食がてらやって来たファミレスで寝落ちでもしてしまったんだったか……?


 ……いやいや。いやいやいや!


 違うだろ! ここは異世界、俺は異世界にやって来てるんだ。みろ、顔を上げると心配そうな顔のナギサさんが……――何か凄まじく良い笑顔でノートにペンを走らせてるな――……ナギサさんが心配そうに俺が目を覚ますのを待っていた。


「……おはようございます、ナギサさん」


「あれ、起きたか。もう少し寝てても良かったのに」


 そうっすか……。


 何があったのか、まだ記憶があやふやだけれども、どうやら何か心配されるような事では無かったらしい。大方長距離バスで発生した謎の疲労に負けて寝落ちしてしまったのだろうな。


「所でさっきから嬉しそうに何を書いてるんです?」


 サラサラとペンを走らせていたナギサさんがピタリと動きを止め、一瞬何かを考えるような顔をしてから俺の質問に答える。


「ん?ああ、ああ、ああ。これな。さっき大家さん、ユーサンが来てたの覚えてるか? 彼からちょっとした素材の情報を貰ったんでね、ネタ帳にもしっかりと書き込んでいたのさ」


 大家さん……ユウさん……いや、ユーサンか……。


 ……ああ!


「そ、そうだ!サスケさんがユーサンで!ユーサンが大家さんで!ユーサンが!ユウさん? ユウさん……」


「おい、どうしたホームセンター! あたまに悪い魔物でも入ったか?」


 どうして俺は気づかなかったんだろう。ユーサンとユウさん、口に出して発音してみればどちらも同じじゃないか……。ユウさんが飼っている猫とは思えない生き物がこちらの世界に来ていた……するとユーサンなる存在、その正体は簡単に導き出されるのではなかろうか?


 しかし、ユーサンとユウさん。口に出してしまえばどちらも同じ……同じだが、単純な物こそトラップが仕込まれている。あと一つ、あと一つだけピースが手に入ればこの仮定は証明され、ユーサンユウさん説が確定する……。


「ナギサさん、大家さんとお話してたんですよね」


「ん?あ、ああ。そうだね。さっきまでそこでパンケーキ食ってたからね」


 パンケーキ……!くそ、そういう物もあったのか! 俺もトーストじゃなくてそっちが良かったな!……じゃなくて!


「何か、俺について話してませんでしたか? 例えば、俺と古い知り合いだとか……」


「あー、そうそう。あたい、言ってやったんだよ。どうしてホームセンターをホイホイ殴るのかって。そしたらユーサンはこう言ったんだ『こいつは俺と同郷だからな』ってね」


 はいきた!これは来ましたよ!最後のピースがカチりと音を立ててハマる音がしました!


 ユーサン=ユウさん!証明終了!()()()


 だよなあ、やっぱあの人ユウさんだよなあ。そう思うと色々とスッキリしてくるから面白い――


「でさ、あの人トーキョーって街のメグロだかマグロだかってとこから来たらしいんだけどさ、お前知ってるか? 同郷でもお前と知り合ったのは精霊樹の里だって言ってたけどよ」


 別人だーーーーーーーー!!


 最後にはめたピースが形だけ同じ全然違う絵柄のピースだった、そんな感じだーーー!!


 ピタリとハマったと思ったが、気のせいだったぜ!うわー!良かった!ドヤ顔で発表して無くてよかった!心に秘めていて本当に良かった!


 ユーサン、東京人かよ!目黒ってなんか聞いたこと有るから、嘘は言ってないんだと思う。かー!東京人かよー。なるほどな、話していて時折アーバンな香りがすると思ったんだよな。


 ユウさんとにてるなーって思うことはあったけど、香りが違うっていうの? 漁港の香りが漂うユウさんと違って都会の香りが漂うサスケさん……いや、ユーサンか。この二人を間違えるだなんてどうかしてたな。


「……なんかスッキリしたような顔をしてるな?」


「え? ああ、はい。いえね、俺にはユーサンと名前がよく似た知り合いが居るんですけどね」


「ほ、ほう」


「もしかして、その本人なのでは?ってさっき目覚めたときから考えていたんですよ」


「!? そ、そうなのか? 珍しく冴えてやがる……じゃなくて、そんな偶然があるもんなのか?」


「ええ、俺もそう思って少し考えたんですよね。考えれば考える程……どう考えても本人で、となればこれまで感じた微妙な違和感がストンと胸におちるというかなんというか……」


「マジかよ……それで、アレか?ええと、なんだ。お前の中でユーサンはその知り合いそのもので確定したのか?」


「はは!いいえ!ナギサさんのおかげですね!確かにユーサンは俺が知る人物と……というか、俺と同郷で間違いなかったんですが、同郷でも住んでる場所がちょっと違かったんです。

 例えるならば、同じ春の大地出身ではあるけれど、俺が知る人は名もなき小さな集落出身で、ユーサンははじまりの街出身みたいな!それくらい別人でした!」


「そ、そうかい? さ、さっき言ってたマグロだのトーキョーだのってのがそうなんだろうけど、お前が住んでた街ってやつは結構でっかいところだったんだねえ」


 なぜだか、心からホッとしたような表情を浮かべるナギサさん。わからんが、多分俺の悩みがストンと解決したのを我が事のように喜んでいるのだろうな。これはこれで彼女は優しいからなあ。



 はー、しかしユウさんとユーサンか。ふふ、日本に帰った時の土産話がまた一つ増えたな。

ユウ『はい、せーの!』

パン・ユウ「『カズがばかでよかった!!!』」

ユウ『いやいやマジで。アイツ馬鹿でよかったよほんと』

パン「完全にバレたと思ったけれど、あんなしょうもない嘘でコロっといくとか、流石カズくんね」

ユウ『ノリと保険で東京目黒出身と伝えてもらったけど、めっちゃ効果あったな……』

パン「都会の香り(笑)アーバンな香り(笑)」

ユウ『どうやら俺は漁港の香りらしいがね』

パン「ふふ」

ユウ『証明終了!AED!(キリッ』

パン「ぶふー!げほっごほっ……や、やめなさいよ……」

ユウ『なんだよAEDって。カズの失われた知能は蘇生できねーっつーんだ』

パン「あははははは!だからやめなさいって!あはははは!」

ユウ『まあなんつか、彼にはこれからも間抜けでいて貰いたいですね……』

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