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第四百七十七話 カズくん感動

(……おい、起きろ……起きろ、ホームセンター)


「んん……はは、ナギサさん。バナナ主食にするとか流石っすわ……正に森の賢者……」


(寝ぼけてんじゃねえ!良いから起きろ!)


「いでえ!?」


 ……腿の内側を思いっきりつねられるとさ、クッソいてえって知ってましたか?俺は今知りました……。


 起こし方っての有ると思うんですよね。こう、耳元で優しく囁くとかさ、ほっぺたをツンツンするとかさ、目を開けたら甘い香りと優しげな柔らかさに気づいて、なんぞやと思ったら膝枕されてたとか……これは違うか。


「くだらねえこと考えてねえで外見ろ、外」


 ナギサさんにしてはちゃんと空気を読んだ声量でそんな事を言っていますが、俺はね、もう外を見るのは飽き飽きなんですよ。何処まで行っても山!草原!たまに川! 無駄に広々とした草原に感動したのも最初のうちだけね。似たような景色が延々と続くもんだから、もういまさら何を見たって……ふぉおおお!!!


「なにこれ綺麗」


「だろ?お前にも見せたくてさ、無理やり起こしたのは悪かったけど……まあ、もう着くしいいだろ」


 へへ……可愛いこと言ってくれるじゃないの。でも、わざわざ起こした理由がわかるよこれ。


 丘の下に広がる湖から紅い朝日が顔を出していて、桃色の空と黄金色の水面……そして朝日を浴びてオレンジ色に染まった霧が水面に漂っていて……やたら神々しい。


 舗装された道路はそのまま湖畔を通るようになっているようで、なるほどそれでコハン村か、くっだらねえ!と軽くイライラしかけた時……目を疑うようなシルエットが水面に踊った。


「あれは……人魚……?」


 遠目に見えたシルエットなので、ちゃんと見えなかったけれど、サラリと長く伸びた髪、ピンと伸ばしたしなやかな両腕。水面から飛び上がったそれは、キラキラとした水飛沫と共に再び湖に還っていった。


「見ましたか?ナギサさん!ねえ!今!」


「ああ?うるせえよ。ほら、着くから降りる用意しな」


 ……もう景色に飽きたのか、純粋に降りる時間が迫ってるからなのか、いそいそと片付けをしていたナギサさんはどうやらあの神秘的な姿を見ていなかったようだ。



「くぁー!ついたついた!寝心地は良かったけど、やっぱりそれなりに疲れるなあ!」


「贅沢言うなよな。寝てる内にこんな遠いとこまで着くなんて最高じゃねえかよ」


「ま、そうなんですけどね」


 起きてる時間のが長かったんですけどね……そう思ったけど、言うとまた俺が知らない抓られると痛いポイントをやられそうなので口をつぐんでおいた。


 しかし、現在早朝である。流石に異世界とは言え、こんな朝早くからやっている店が有るはずもなく。早速困ってしまった。


 前にユウさんと東京行った時はひどかったな。深夜バスが6時につくもんだからさ、とりあえずファミレスでも行って暇潰そうぜ!ってなったんだけど、俺が悪いのか、アプリが悪いのか。


 マップに騙されてファミレスが見つからず。


『歩いてりゃどっかにあるだろ』


 なんてユウさんの頼もしいセリフを信じて歩き歩き、歩いて歩き……気づいたらすげー歩いて電車で向かおうと思ってた場所の近くまで辿り着いてたりしたもんな。


 ま、異世界にゃそんな便利な店も無いし、ダラダラと湖の周りでも散歩して暇を潰す感じなんですかね。


「ん……流石にこの時間じゃ選択肢があまりないか……よし、ホームセンター。ファミレス行くか」


「あるのかよ!」


 あんのかよ……ファミレス……。何が出てきても今更驚かねーぞって思ってたけど、ファミレスが有るのはちょっと驚いたな。


「ああ、コハン村にも最近出来たらしいっていうか、地上だと初じゃねえかな? ウサ族の里には何店舗かあったんだけどよ、地上には今まで無かったんだよなあ」


 そういや何故かダンジョン内の街は地上に比べて自重してない感じがしたな。バイク走ってたし、宿屋って言うよりビジホだったし、コンビニもあったしさ……。もしかすれば、ユーサンとやらはダンジョンマスターに転生した日本人で、ダンジョン内でテストした様々な日本の文化を外に出し、ダンジョンをもり立てるリソースを稼いでるとかそういう事をしているのかもしれないな。


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」


 とか言ってる内にファミレスについた。ううむ、何のひねりもなくファミレスだ。強いて言えば店員さんが全てウサ族で、メイド喫茶か何かに来たような錯覚に陥るくらいか。


 早朝だと言うのに、それなりにお客さんがいてびっくりした。ナギサさんに聞くと、ここは釣りの名所で、釣りを学ぶため、技術を磨くため、主を釣るため等、様々な理由で各地から人がやってくるそうだ。


 ユウさんも釣りに行く時やたら早起きしてたもんな。それでこんなに混んでるわけかあ。


 ナギサさんと二人、同じ注文、モーニングセットをオーダーすると、すばやくコーヒーが運ばれてきて凄く嬉しかった。


 いつもの癖で砂糖とミルクをアホほど入れてしまい、ナギサさんにからかわれる!って思ったけど、ナギサさんも俺と同じくらいの量入れててほっこりしたわ。


「な、なんだよ」


「いえいえ。お砂糖とミルクたっぷり入れると美味しいですもんね」


「ああ!わかってるじゃねえか!おっお前のもいい色してんねえ!だよな!無糖ブラックとか苦くてのめねーっつーんだ」


「ですよですよ!」


 と、いい感じに盛り上がってると……。


「おっと!俺の腕が突然暴れだした!この衝動には抗えない!」


 スッパァアアアアアアアアアアアアン!


 よくわからないセリフと共に後頭部に激痛が走る!妙にいい音で叩かれたそのままの勢いでテーブルに頭を打ち付け……バウンドした所で後頭部を掴まれぎりぎりと締め上げられるッ! くっ!これは……突然のバトル展開か!


「あんた突然なんだい!?こいつはあたいのツレだ。ことと場合によっちゃただじゃ置かないよ!」


 ナギサさんが怒りに満ちた声色で抗議をする。いいぞナギサさん!もっと言ってくれ!どうだ、謎の襲撃者!うちのゴリラは強いんだぞ!謝るなら今のうち……


「あんたなんだいってか? そうです、私が大家さんです」


「んなっ!?大家さんって……さ、サスケさん!?」


「えっ!? 大家さん……!?サ、サスケ……さん?」


 突如現れ、どう見てもハリセンにしか見えない武器を装備したサスケさんが俺に理不尽な暴力を奮った……! そして、突如現れた大家さんに戸惑うナギサさん……なにやら平穏な時間が早々に終わり、混沌とした香りがしてきましたぞ……。

パン「あっはっは!見てよユウ!人魚だって!ばっかじゃないの、あれロン毛のタルットじゃんね!」

パン「ほら!見てって言ってるでしょ!今のシーン面白……あ……そっか、あいつ……もう居ないんだ」

ユウ『居るからね?なんか知らんけどいきなりコハン村に転移させられてびびってんだからね!?

   いやまあ、タイミングよくカズ達がファミレス入ったの見えてラッキーみたいな感じだったけど』

パン「そうだ!びっくりしたんだからね!アンタ何いきなり転移してんのよ!」

ユウ『えっ? お前が空気読んで飛ばしてくれたんじゃねえの?」

パン「えっ?」

ユウ『えっ?』

パン・ユウ「『なにそれ怖い……』」

??「うっふっふー……」

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