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第四十六話 フラグは回収するものさ

広場に戻るとウサギたちがルーちゃんと打ち解けお話をしていた。


「おお!くろのせんし!ぶじでしたか!」


「またすくわれた!われらのせんし!ありがとう!」


「で、こいつらは何なんだ?」


 クロベエに尋ねると、このあいだ散歩に来たときたまたま助けた形になってしまったウサギの魔獣だと言うことだ。

 前回はレッグコッカに襲われていたらしく、肉が欲しかったクロベエはウサギ達とレッグコッカを見比べた結果、より大きな肉であるレッグコッカを選びそれを狩った。


 結果としてウサギたちを助けることとなり、危機から護った勇敢な戦士という扱いになったらしい。


「でもウサギたちの言葉が わからなかったから 俺 ほっといてかえったんだ」


 まあそうだろうな。キーキーピョンピョンうるさかったことは想像できる。


 気づけば周りからぴょんぴょこぴょんぴょこどんどんウサギたちが現れ、口々にクロベエに感謝をしている。


「うーん、どうやらここはこの魔獣達の集落的な場所みたいね」


 一応ステータスを見てみるか。

====================================

 魔獣;ウッサ・ロップ

 群れを作り集落を形成する知能が高い魔獣。限りなく魔族に近いが、発声器官が未熟で人間と意思の疎通が取れないため魔獣の扱いとなる。義に厚く、一度恩を感じた相手には一生尽くすとも言われ、素晴らしい戦士の気概を感じるが、戦闘力はさほど高くないため気持ち程度に受け取っておくことをお勧めする。


 素材:罪悪感漂う毛皮 罪悪感漂う肉 罪悪感漂う尻尾

====================================


「相変わらずひでえテキストだな!今考えただろこれ!」


「失礼なこと言うわね!創ったとき考えたに決まってるでしょ!すっかり忘れてたけど!」


 きっとその時も雰囲気のノリで適当に設定したんだろ…。分かるんだそういうの。


 

  ◇


 そんなわけで、ウサギどもに囲まれながら昼食を摂る羽目になっているのだが、この辺で採れたという木の実やなんかを次々運んでくるため、部族の危機を救った勇者様一行感が凄まじい。


 異世界勇者は俺では無くてクロベエってのがアレなんだが、ウサギに称えられたところで嬉しくもなんともないから悔しくはない。ほんとうに。ちょっとだけ…


「せんしさま これからも我らほごしてほしい」


「くろきせんしいれば 我らあんしん」


 そんなことを口々に言ってるが、そんなしょっちゅうクロベエをここに寄越すわけには行かない。クロベエの事情もあるし、俺だって寂しいわい。


「俺も結構忙しいからそれは無理だ」


 クロベエもズバッと断っている。


 しかし、こんな連中とは言え、こうやって縁が出来てしまった。

 知らぬうちに全滅されちゃあ夢見が悪い。保護できないのであればダンジョンの住人にしてしまえば安心では無いか?そう考えパンやルーちゃんに提案するが……。


「それは良い案だと思うけどまだ無理よ」


「無理とは」


 「ルーちゃんが創った1階層は湿原の部屋よ。森の魔物にとって快適に思えないでしょ?心からダンジョンに入りたいと思わなければ契約は上手くいかない。そういうこと」


「じゃあ、第2階層を森にして…ってなるほどそういうことか。ルーちゃんのレベルじゃまだ次の階層を創れないんだな?」


「ご明察。だから可愛そうだけどルーちゃんが育つまで耐えて貰う必要があるわね」


 ぐぬー


 そんな時、都合良くフラグが回収される音がした。


 ガサガサ


 来たか……と、振り返るとそこにはやはり先ほどの白猫が立っていた。


 蜘蛛の子を散らすように穴蔵に潜りクロベエを称える歌を歌い出すウサギたち。うるせえ


 「クロベエ クロベエ くろきせんし われらの せんし であったやつは やつざきだ」


 物騒な歌合唱すんな!


 クロベエもぐったりした顔をしてるが、一応ウサギたちを守る姿勢を見せる。


「まて、くろいやつ おれはたたかわない」


 何? 戦わないなら ここに用はないでしょ」


「おまえ とてもつよい おれ おまえにしたがう だからおれと子をつくれ」


 そう言うとごろんと仰向けになり腹を見せる。服従のポーズだ。


 これにはクロベエさん困ってしまって俺をチラチラ見る。


「ユウー 何だよこいつ どうしたら良い?」


 はっはっは、だがクロベエよ知ってるぞ。発情期のおまえの煩さを。窓の外をちょろちょろする雌猫を必死に目で追うおまえの必死さを。そして困ったふりをしつつ本能に逆らえずにまんざらでも無い本心を。


「おまえに服従するって言ってんじゃ無いの?話し合いでもしたらどうだ?」


 ここは若いもんに任せるのがキチだ。というか魔獣同士話した方が上手くいくはず。


「うーん おまえ本当に俺に従うの?」


「したがう おれよりつよいおす はじめて」


 ごろんごろんと転がり甘えた声を出す白猫。目を閉じて聞いていればアマゾネスのくっころが雌の顔して異世界勇者に子作りをせがんでいるように聞こえてしまう。

 これはいけない、目を開けて精神の安定を図らねば。


「お前と 子作りするかは 置いといて 俺の仲間になるのは認めてやる」


「ほんとうか! うれしいぞ! うれしいぞ!}


 むっくりと起き上がり、クロベエにスリスリする白猫。サイズがデケエだけで猫の日常にしか見えない。

 なんたってこの白猫もまたモフモフしてるからな。黒縞のメインクーンもどきと白いメインクーンもどきがモフモフとじゃれあってるようにしかみえねえ。


「白猫、そこに居るのは 俺の親のユウだ。ユウにも従え」


「クロベエのおや おれのおや かまわない」


「ユウ、こいつに名前をつけてあげて。このままじゃ呼びにくい」


「そうだな、おい、白猫よ。俺がつけてかまわないか?」


「かまわない おまえ いまから わがあるじ」


「そうだなあ……クロベエ、クロベエの由来は……くろだかんべ……よし、お前の名前は"ヒカリ"だ。由来はググれ」


「ひかり わかった しかし ぐぐれとは」


「そいつの言うこと気にしちゃダメよ。あ、私はこの世界の神にしてそこに居るルーちゃん、ダンジョンコアの母親よ。ユウはルーちゃんの父親。てことであんた、私にも従いなさい」


「かみさま おお…めがみさま… ちちうえのつがいか つまりははうえ」

 

「つが…ちがうわよ!ユウとはそんな関係じゃ無いから!ルーちゃんが生まれた経緯にそれぞれ関わったってだけだから!」


「ははうえ すまない むずかしいことばわからん つがいなのだな よろしくたのむ」


「要らんこと言うから変な勘違いされたじゃねえか!」


「……ぐう…。そのうち賢くなったら改めて訂正してやるんだから」


「そんなわけで、ヒカリ、クロベエの父である俺からの頼みがある。聞いてくれるか」


「ちちうえ なんでもいってくれ」


「いずれクロベエと一緒に住めるようにしてやるが、今は俺の頼みを聞いてくれ。

 こいつら、ウッサ・ロップを外敵から守ってくれないか?たまにクロベエを遊びに来させるからさ、な、頼むよ」


「ユウ、そんな勝手に 俺は…」


「ちちうえ まかされた クロベエ おまえくるの おれたのしみ」


「たまに…たまにならいい…」


 ウッサ・ロップ達もその経緯を聞いていたのか、さっそく「しろきせんし くろきせんしのつま」と変な歌を歌って称えている。こいつらはタルットと別のベクトルでウザい感じがするな……。


 


 

  

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