第四百七十三話 カズくん 尻が鍛えられていく
村長であるレンゲちゃん直々に村のガイドをしてくれることになって、ナギサさんは非常に恐縮していたのだけれども、レンゲちゃんの人柄もあってすぐに打ち解け、なんだかすっかり仲良くなっている。
「でのう、ここは周囲を崖に囲まれていてのう。外から隔離されておったんじゃが……はじまりの街から来た者たちがトンネルを掘ってくれてのう。今ではこうしてお主らのように外からの客を招けるようになったのじゃ」
……なるほど、鍋の底みたいな地形だからナベゾコ村……そう言いたいのか?
いやあ、俺はてっきりユーサンとやらのチートで生まれた不思議スポットかと思ってたんだけど、レンゲちゃんの説明を聞くと違うようだな。
大昔から周りから隔離されている特異な場所という特性がいたずらをして、外部とはジャンルが異なる種族が多数生まれる土地になったらしい。
何言ってんだコイツって思ったけど、ここはファンタジーな異世界です。魔術やファンタジー種族はもちろん、神様だって普通に存在しているらしい世界なんだ。そういう良くわからん現象が起きるのも不思議ではないよな。
そして不思議なことに、ここの土地は日本の昔話に出てくるような文明に発展していった……らしい。今でこそ外の文明はユーサン効果で急成長して、ちょっとファンタジーから片足出しつつあるけれど、そんな事がなければここが最先端だったのかもしれないな。
「外と繋がりはしたがの。ここは元のまま、外の文明は取り入れずにゆっくりとした時間の中暮らすことを選んだのじゃ」
なんかわかる気がするな。
なんでも外の文化を取り入れればいいってものじゃないよね。確かに隣の芝は青く見えるかもしれないけれど、それを羨んでどんどん取り入れてしまった結果、元々周りが評価していた自分の良い所が上書きされて無くなっちゃうっていう悲しいことはよくあるんだ。
……親戚の美咲ちゃんがそうだ。綺麗な黒髪とあどけない笑顔がとてもかわいらしくってさ、正に童貞ころすレディーって感じだったのに……大学に入って夏休みをまたいだ瞬間……量産型のギャルになってしまった……。
たしかにさあ、ギャルになって綺麗な感じにはなったけどさあ、清楚系エンジェル属性という唯一無二の素晴らしき属性が量産型ギャルに上書き保存されてしまったのは頂けない。
きっと美咲ちゃん的には清楚系エンジェルな自分があまり好きではなかったのかもしれない。子供っぽいよねーって口癖のように言ってたし。
だが、敢えて言わせていただこう!その『子供っぽい』という属性を欲しくても得られない人々が多数いるのだと!
はぁはぁ……なんだか話がおかしくなったな?
「む、ホームセンターがまた妙な事を考えてる顔をしている……ちょっせえ!」
「ぬぐわ!?な……な、なぜ蹴った……んです?」
「そこにお前がいたからだ」
「理不尽……」
「うひょー!理不尽な暴力!いいぞよ!なぎさちゃん!今の最高なのじゃ!」
……なにか凄く喜んでいる……レンゲちゃんは俺になにか恨みがあるのだろうか……。
「でまあ、ここは独特の文化を築いておるじゃろ? じゃから外から来た者達にそれを見てもらうのを商売にしようと思ったわけじゃよ」
「あー、俺がやったゲームの聖地がそんな感じだった気がするなあ。文化財だかなんだかで保護されてるんだったか」
「うむ、そんな感じじゃの。ここもある意味似たような見た目の土地じゃがのう。ほっほ」
確かに言われてみれば、あのゲームに出てきそうな建物が沢山あるものなあ。
……?
なんかレンゲちゃんとのやり取りに違和感があるな。うーむ、話が通じている? こっちの世界の人たちにわからないような話が通じてしまっている? あのゴリラには当然通じなかったのにレンゲ……
「うるぁ!」
「ぐべらっしゅ!」
「最近神託が多いな……おい、ホームセンター!女神様に迷惑かけんじゃねえぞ!」
「俺が……何をしたっていうんだあ……」
……あれ?今とっても大事な事を考えていた気がするんだけど……わからなくなってしまったぞ。
まあ、忘れたってことはどうでもいい情報だったってことだろう。大切な情報であれば後でまたおもいだすだろうしな。
「そうじゃ、お主ら宿は決まっておるのかの? もしまだならわらわの家に泊まるがよかろう」
「レンゲちゃんの……お家に!?」
「いいのかー!?」
「ああ、かまわんぞい。普段はわらわとお手伝いさんだけでの、寂しいもんじゃから是非とまっていっとくれ」
まだまだ明るい時間だけれども、とりあえず荷物を置かせてもらうことになり、レンゲちゃんのお家に向かった……だけど、こりゃびっくりだな。
なんだっけ?なんか忘れたけど、L字型の平屋っていうのかな。平屋なんだけど、兎に角面積が広くって、でっかいお屋敷って感じがする。さっすが村長さんのお家だぜ。
お庭もなんつうか、日本庭園?いや、違うな。田舎の婆ちゃんちって感じでさ、ニワトリ見てえな鳥が放し飼いにされている。懐かしいな、ニワトリ。小学生の頃、学校でよく世話したもんだぜ。
「ああ、ホームセンターよ。それは人を選ぶでな。お主はあまり近づかぬほうがよいぞよ」
「ちーちーちー よーしよしよし……えっ!?」
『KKkkkkkkkkyaaaaaaaaCoooooooooooo!!』
ニワトリの!群れが!俺を!いでえ!いで!いでえええ!追って!いっでいでで!来る!
「あっはっは!クッカは弱者にはとことん厳しいからなあ。そうかレンゲはホームセンターとパーティーを組んだからあいつの力わかってたんだな」
「気の毒だからあんまり言いたくはなかったがのう……。ホームセンター、お主の荷物はわしらが置いてきてやるからの。クッカと仲良くしとくんじゃよー」
「ちょ、れ、レンゲちゃ……いっでえ!ナ、ナギサさんたすけっ!っでえ!」
「クッカにやられて死んだやつも大怪我したやつもいねーよ。いい機会だ。クッカに認められる程度に鍛えてもらいな!」
「そ、そんなあ……」
も、もうニワトリはこりごりだよ~ って言ったら……暗転して攻撃がやんだり……っでえ!?いでで!しねえか……。
ユウ「ひゅー!亀とカズを絡ませんの……ヒヤヒヤするなあ」
パン「あいつ結構口が軽いっていうかゆるいからね。ポロッとボロを出しちゃう感じでさ」
ユウ「俺ほどじゃないがカズもそれなりにゲームや漫画に詳しいからな……」
パン「亀が食いつくネタを出したらそっから連鎖的にボロボロ行きそうよね」
ユウ「しっかし……カズめ常々気持ち悪いやつだと思ってたが、やっぱ気持ち悪いな!」
パン「ミサキちゃんの話?」
ユウ「そうそうー。覚えてるぞーカズから『美咲ちゃんが劣化した』ってメール来たの」
パン「うわあ……最悪ね」
ユウ「言わんとしてる所はわからんでもないが、個人の自由は尊重してやらんとな」
パン「本音は?」
ユウ「清楚系のギャル進化はNO!でも!ギャルはギャルで有り!悩ましい!」
パン「……」
ユウ「ちょ、距離とんな!こら!そんな目でみんな!冗談!冗談だって!」




