第四百七十話 カズくん少し冴えてしまう
リューツー村はなんというか、流通の村で……。俺的には特に面白みはないんだけど、はじまりの街から出荷された荷物は一度ここで整理され、春の大地各地に配送されていくため、結構重要な場所のようだ。
俺が行ったことが有る街は、最初に降り立った精霊樹の里を除いて全部ゲートで移動できる場所だけだったから、こうしてバスでしか行けない土地に来るのはまあ、これはこれで新鮮で楽しいわ。
……ナギサさんが用足ししてる間、真剣に何もすることがなくて駄菓子屋の格ゲーやってたけどね。
この街、つか村? 流通の要というだけあって、村にしては栄えているけれど、観光するような場所がないから用がない俺にとっては面白みが無いんだよなあ。
そんな事を、到着した日の夕食時にナギサさんにそれとなくボヤいたところ、
『観光が出来るような場所のが珍しいんだぞ。ユーサンがあちこち回ってちっこい村を立ち上げまくってるけど、規模が小さい村は流石のユーサンでもおもしれーこと出来ねえって話だ』
でたよユーサン。もうその名を聞くのも慣れてしまったけれど、村を立ち上げまくってるってのは驚いたな。その辺を不思議に思ってナギサさんに聞いてみれば、この大陸に街や村というものが出来たのは昨年の事らしい。
……ウッソだろおい。
ユーサンがなんかするまで、この大陸の人たちには村や街という概念がなかったそうだ。
それでも一応、小さい集落を作って暮らしていたらしいんだけど、狩りや採取メインのその日暮らしって感じで、なんというか、歴史の教科書の縄文時代のページが頭に浮かんだよ。
俺ね、縄文時代にはちょっと詳しいんだ。なんでかって? 歴史の勉強しよう!って盛り上がるだろ? すると不思議な事に縄文時代のページを読んだところで満足しちまうんだ。
それを何度か繰り返してたら……流石の俺でもってわけよ。
ただ、この世界の場合はそれよりは少しだけ文明が進んでいたようだな。不思議なことに文字の概念はあったらしいし、簡単な魔導具くらいは作れていたみたいだし。
そんな状態だったから、少しのきっかけ……ユーサンとやらがあれこれ手を出し口を出したらあっと言う間に世界が成長したってのが今の状態みたいだな。
ユーサンってやっぱあれかな。組織とかじゃなくて……転生者?
……つうかさ、もしかしてユーサンってユウさんなのでは? クロベエだけ転移してるってのは考えにくいし、冷静に考えるとユーサンってまんまユウさんじゃん。
うーん……でもな。ユウさんがこんな事するかな……。あの人は世話焼きだし、マメなとこがあるし、なんたって就職して仕事をしてる真面目な大人だけどさ、一皮むけば残念な所だらけと言うか、俺と紙一重というか……。
未熟な世界に知恵を授けるとかそんなすげーこと出来るとは思えない。
ていうか、多分そのユーサンってのが魔導バスなんかも開発したんだろ?無理無理!ユウさんには一輪車がギリ作れるくらいの知識しかねーって!
もしかしたらって思ったけど、やっぱねーな。
「ふあぁ……わり、寝てたわ。今どのへんだ?」
「……どの辺だって言われてもわかんねえっすよ。俺だって初めて来たんだし」
「ははは、それもそうか」
疲れが溜まっていたのか、バスがリューツー村を経って早々にナギサさんはぐっすりと熟睡してしまっていた。今回もまた、俺の方に身を任せて寝るもんだから、妙に良い香りがするわ、なんか柔らかいわで俺はもう、どうにかなっちまいそうだったね!
それを紛らわせるために色々と難しいことを考えていたわけだけれども、ナギサさんが起きたならそれもおしまいだ。ゆっくりとナギサさんと乗るバスを楽しむことにしよう。
「お、アレを見ればあたいもわかるぞ。もうすぐ目的地だ」
着くのかよ!
ナギサさんの説明によれば、今から向かうナベゾコ村という変な名前の村は、トンネルを通って行くらしい。なるほど、確かに前方に見えるのは結構長そうなトンネルだ。
間もなく、バスがトンネルに入ったけれど、天井に明かりの魔導具でもついてるのか、俺が知る日本のトンネルと何ら変わらない感じで、バスに乗ってるんだから今更なんだけれども、なんだかとっても不思議な気分がした。
トンネルは結構長く、途中で少し曲がっているようで入ってから暫くは出口が見えなかったけれど、ある程度進んだところで薄っすらと向こう側が見えてきた。
ナベゾコ村って言ったっけ。名前からして鍋が特産品だったりするのかな? この大陸って、大地ごとに住んでいる人種が違うみたいだから、ここに住んでるのもきっと人間族が中心なんだろう。
人間族の特徴ってなんだ? 器用貧乏? この世界だとどうなのかはわからないけど、はじまりの街に住んでいる人達を見ると、特に特徴が無いような気もするな。
……ナギサさんはちょっとおかしいけどさ。
そして、出口の光が徐々に大きさを増していき、とうとう俺達が乗るバスはナベゾコ村に到着した。
窓から見えるのは、なんだか『ばあちゃんが居る田舎』と言った具合ののどかな景色で、藁葺き屋根が立ち並び、道路沿いには桜が咲き乱れていてなんだかとってもほっこりする……。
……わらぶき屋根ぇ!?
どうやらこの世界は、まだまだ俺が知らない謎が多くありそうだな……。
ユウ「っぶねー!!!なにあいつ!珍しく何冴えてんの!?こえーんだけど!」
パン「まったくよ!ヒヤヒヤしたわ!」
ユウ「まあ、彼処まで行って正解にたどり着けない辺りがクソザコナメクジなんだが」
パン「カズクンがアンタをどこかクソザコナメクジだと思ってたおかげじゃないの?」
ユウ「くっ! そういや『俺と紙一重』とかすっげえ失礼なこと言ってたな!」
パン「あたしから見れば同意せざる……あ!うそうそごめんて!何か企んだ顔で見ないで!」
ユウ「ちいっ。女神のやらかし日記をカズに渡して幻滅させてやろうと思ったが、それはまたにしておくか」
パン「待って。何その日記!」
ユウ「知り合いのBさんからいただいたんだが?」
パン「待って!Bさんってもろにブーちゃんじゃないの!ちょっと!それ!よこしなさいよ!こら!ユウー!」




