第四百六十九話 カズくんナギサさんとおでかけする
ナギサさんのクレープ屋は思った以上に好評で、商業ギルドの幼女先輩からもお褒めいただくほどでありました。
実際に幼女先輩から褒められたのは、ギルドから言われて発案者登録をしに行ったナギサさんなんだけどさ、もー、当日ギリギリまで
『この手柄はあたいじゃなくてホームセンターだ。発案者はお前なんだからお前が登録すべきだ』
と、煩かったんだけど、俺の必死の抵抗――
『いいや。だめです。ナギサさんが材料を持ってなかったら思いつかなかったんだし、こういうのは作って売る人が登録すべきなんです。俺が登録したところで宝の持ち腐れです』
こんな具合にのらりくらりと躱して無事ナギサさんに押し付けることに成功したのだ。
いやさ、特許?で不労所得ってのには憧れが有るしさ、実は勿体無いことしたかな?って思ってるよ。でもさあ、俺っていつまでも居るわけじゃないじゃん。
ナギサさんやサスケさんなんかと別れるのは辛いけど、日本にだって大切な人達はいるし、どちらかと言えばまだ日本に未練が有る。
どうやって来たのかわからない以上、帰り方もわからんけど、クロベエが女神様から召喚されたっていうんなら、女神様となんとかお話さえ出来れば、帰れる気がするんだよ。
そうとなれば、俺が権利的なのを抑えてしまうのは問題が有るわけじゃん。だったらナギサさんに押し付けてさ、末永く幸せに暮らしてもらえたらって思うじゃん?
そんなわけで、ナギサさんはまだ渋い顔をしているけれど、無事ナギサさんに権利を押し付けることが出来たわけで。
そんなナギサさんは
『冒険者……あれはもう趣味でいいんじゃないかな……』
なんて言っちゃうレベルで結構儲かってるようで、あまりにも儲けてしまったとかで、何やら俺に還元してくれるらしいんだけど……待ち合わせ場所、ここでいいんだよな?
昨夜いきなり部屋に来襲したナギサさんがこんな事を言ったんだ。
『おう、ホームセンター。お前には返しきれない恩が出来てしまったよ。だからってわけじゃないけどさ、明日からちょっと面白い所に行ってこようぜ。販路拡大のついでだけど、ちょっとした旅行にさ』
男女2人、旅行、何も起きないはずはなく。
ああ、何度だって言ってやる!言ってやるとも!様々な期待で寝付けなかった俺は今結構フラフラしながらバス停前広場に居るともさ!
楽しみすぎて、到着したのが待ち合わせ時刻の2時間前だってのに気づいたのは待ち続けてから1時間と少し経った頃だった。
それからかれこれ1時間が経ち、そろそろ待ち合わせ時刻なんだけど――
「お?ホームセンター早いな!待たせちまったか?」
「え?ああ、いえいえ。いま来たところですよ」
「ママーあのお兄ちゃん嘘付いてるよー。もうずっと彼処に居たじゃんね」
「し!だまりなさい!」
「……」
「……わりい」
「い、いえ俺があまりにも楽しみすぎて早く来すぎただけで……」
「へへ、そういうことか。ま、あたいも初めていくところだからよ、実は楽しみで寝れなくてな」
「俺もですよ!ナギサさんとおでかけですからねえ。楽しみで楽しみで……」
「言うじゃねえか!この!このこの!」
ぐぶっがぶっごぶっ……あれかな?目的地はその、天国ってやつなのかな? そろそろ辞めてくれないと本当に……ごふっ……がはぁっ……。
「うお、わりいわりい。おめえが変なこと言うから……っと、バスが着たぞ。ほら、乗った乗った!」
「……けほけほ……まったく、ゴリラなんだから……ぐばっ!」
ったく、他のお客さんに迷惑かかるだろ……バスに蹴り入れるのは本当に勘弁してほしい……。
ともあれ、なんとか無事に合流できて、バスに乗り込むことが出来たぞい。このバスの目的地は……なになに?リューツー村?変な名前だな?
「リューツー村ってとこが目的地なんですか?」
「あん?ああ、いやリューツー村でも営業するから一泊するけど、お前と行きたい場所はそこじゃないよ」
「んじゃ、そこからまたお出かけする感じですか」
「ああ、なんつうんだ? ちょっとした旅行って奴をしてみたくてね。最近流行ってるんだよな、転送門を使わない旅行ってやつがさ」
ナギサさんによれば、都市間を結ぶゲートは便利だけど、旅の楽しさというものがない!なんてユーサンなる存在が演説したそうで、魔導バスの普及により、それに頼らない旅というのがじわじわと流行り始めているらしい。
今の所、魔導バスは各大地の街を結ぶだけみたいだけど、いずれは各大地も魔導バスで行けるようになるみたい。大地感がどんだけ離れてるのか走らないけどさ、気候がガラリと変わるわけじゃん。結構でっかい事業になるんだろうな。
トコトコとバスに揺られて4時間位? 途中で寝ちゃったからわからんが、どうやらリューツー村とやらについたらしい。
「ここがリューツー村だ。あたいもここに来るのは初めてだが、見ろ、アレがこの村の特徴だよ」
ナギサさんが指をさす方向を見れば、日本でも見たような運送屋さんの魔導車が沢山走っている。その車が向かう先には、荷台と同じロゴが入った大きな倉庫が見える。
リューツー村って……まさか流通村じゃねえよな? いやまさかそんな……俺でもそんな簡単な名前つけねえぞ。
パン「ゲラゲラゲラ カズくんでも無いわって思うのね。そりゃそうよ ゲラゲラゲラ」
ユウ「……くそっ」
パン「だいたいあんたってネーミングセンス死んでるのよね」
ユウ「ウッサ・ロップ」
パン「え?」
ユウ「ウッサ・ロップってウサギのウサに、ロップイヤーのロップだろ?」
パン「……」
ユウ「タルットって、タートルもじっただけだろ?」
パン「……」
ユウ「……」
パン「まあその……ね?名前なんて……ねえ?」
ユウ「そうだな。わかりゃいいんだよ。わかりゃ」
パン「そうそう!わかりやすいのが一番!」
ユウ「そうだ!変に凝ってわかんなくなるよりマシだって!」
ブー「最近ホント仲が良いわよねえ」
ユウ・パン「「そんなことないし!」」




