第四百六十八話 カズ、珍しく活躍してしまう
俺が思いついたのは、コンビニやスーパーで見かけるカロリーモンスター!ま○ごとバナナだった。ショートケーキのようなものは見かけたことが有るから、再現はたやすいはず。
生地に生クリームとバナナを打ち込んで巻くだけだから、ゴリラのナギサさんでもいけるはずさ。
そう思って、ナギサさんにかくかくしかじかと説明をすると、何故か先に尻を蹴られたけれども、概ね良好な反応。だけど……。
「たしかによ、それが実現すればかなり美味い物ができるし、何故か沢山渡されるバナナも消費出来て良いと思うんだが……一つ問題があるんだよな」
「問題」
もしかして、俺が知らないこの世界の宗教かなにかに『バナナを生地で巻いてはならない』とかあるのだろうか?もしくは、この国の代表がバナナが嫌いでーとか。
と、思ったら理由はシンプルな話だった。
「あたいはさ、料理が出来ないわけじゃない。だから菓子を作って売ろうと思いついたんだけどさ、残念ながらケーキの生地の作り方がわからないんだよ」
ナギサさんいわく、その製法を知っているのはウサ族の里にいるアンコロ餅三姉妹とかいう、冗談みたいな名前のパテシエ達だけらしい。
じゃあ、行って聞いてくれば?と聞いてみれば
「あのなあ……。レシピは商売のネタなんだぞ? 職人の魂みたいなそれを教えてくれるわけがないだろ? まして、あの人達にコネなんて無いから無理だ」
と、ひどく残念な子を見るような目で言われてしまった。
参ったな、完全に当てが外れた。
ならば、ナギサさんが何を作って売ろうと思っているのか、それを聞いたらなにかヒントが得られるのでは? うん、我ながら良い案だ。
「あー、生クリームはあたいも作れるし、それを使った商売をしようと思ってたんだけどね。ウサ族の里にあるカフェで出してるパンケーキってのがさ、やってみたら結構簡単に再現できたんだ。だから最初はそれを屋台で売ってみようかなって」
パンケーキかー。だったらバナナだってちゃんと消費できるじゃんねって思ったら、それだけじゃ飽きられるからもう一つ何か欲しいらしい。なんてわがままな。
……ん? パンケーキは作れるのか。つーことは解決じゃん。
「じゃあさ、パンケーキの生地を薄く焼くことは出来ますかね? もう、ぺらっぺらに」
「出来なくはないけど、それ何か意味があるのか? パンケーキの生地ケチってるようにしか思えないんだけど」
「それがですねえ……ええと…………うん、俺の頭じゃ上手く言葉に出来ん!まずは試しにやってみましょう!」
「そうだな。言葉より実践ってことだよな。あたいも好きだぜ、そういうの」
好きですって!まあ!ナギサさんったら!
「んじゃ、生クリームも作ってもらって……あー、チョコソースってあるんです?」
「ああ、あるぜ。これもまだウサ族の里でしか売ってないから仕入れはちょっと面倒だと思ってたが、お前の考えてるネタが良さそうだったら果物のついでに仕入れることにするさ」
しかし、いいもんですね。
何が? そりゃ料理するナギサさんですわ。
女の子の部屋で、料理をする女の子の後ろ姿をじっと見つめる。これってアレじゃないっすか。カレシ?って奴みたいじゃん?
ダンベルみたいな物が転がってたり、デカい剣や弓が壁に掛かっていたりするけど……ナギサさんは口を開かなければゴリラではなく、可愛らしい小柄の美少女だしさ、俺にはちょっと刺激が強い状況だよね。
「よし、生地は焼けたぞ……だが、こんなにぺらっぺらでいいのか?」
「ええ、いいんですよ。あーあー!持ち上げないで!お皿に置いて!」
しかし、上手に焼くもんだな。俺が家で試した時はボロ雑巾みたいになったのに……。そういやユウさんこういうの上手いんだよな。
『これが女子の家系じゃー!』
とか言ってさ、アホほど生クリームをそびえ立たせたパンケーキ作ったりさ、プリンと生クリームが入ったクレープ作ったり……。
飯もうまいし、ユウさんが女子ならなーって思ったことが何度有ることか。
……いや、男のユウさんと何かしようとは微塵も思わんけども。
「ホームセンター?」
「あ、ううん、いえ、なんでも!ええとですね、確か……この辺りから生地に沿って生クリームをモリモリっと置いていって……」
「あいよ。結構生クリームを使うんだな。パンケーキと同じくらいだからいいけどさ」
「で、この辺りにカットしたバナナを……って、言うの忘れてましたね」
「ああ、冷蔵魔導具の中にカットしたの有るから出してくれ」
「ナイスですわ、ナギサさん」
「と、ぽん、ぽん、ぽんと。置いたぞ」
「後はチョコソースをうねうねと置いて、生地をくるくると巻いて下さい」
「ほほう……なるほど、わかってきたぞ。ああ、これはいいな。けど、上がちょっと寂しいか」
「なので、最後にまた上から生クリームを入れるんですよ。そして隙間にバナナを置いて、チョコソースを更にかけて完成です!」
「うおおお!これは!紙で巻いたら手で持って食えるじゃねえか。でかしたホームセンター!フルーツを買えたらバリエーションも増えるし、パンケーキよりこっちのが売れるぞ!」
「へへ、どうも、ぐふっ、ごほ、がは……」
褒めるのは良いけど背中を叩くのは辞めてほしい……死んでまうがな。
しかし、メインメニューを追いやってしまうほど喜ばれてしまったな。ここまで喜ばれると俺も本望だ。
ありがとう、日本の祭り広場にいた名も知らぬお姉さん。そこに俺をパシらせてくれたユウさん!貴方がたのおかげで俺はクレープの作り方を知っていました!
まさかその経験が異世界で生きてくるなんてなあ。ううむ、異世界の経験で俺もニート脱却できるかもしれねえな。
パン「リザレクション!」
ユウ「はっ!俺は!ここは!わ!綺麗な女神様!」
パン「うわ、まじか!大丈夫?蘇生失敗しちゃった?あー……なんか色々と揉む?」
ユウ「何言ってんだ!俺が恥ずかしくなるからやめろ!冗談だよ!」
パン「もー! でも良かった。死んじゃった時はどうしようかと」
ユウ「俺って不死属性があるんじゃなかったんですかね」
パン「いやあ、精神的に死ぬ事は想定してなかったから……」
ユウ「俺を何だと……しかし、カズめ俺が女子だったらとか気持ちわりいこと言ってるな」
パン「ああは言ってるけど、あんたがTSしたら結構ガチで釣れるかもよ」
ユウ「ラミィあたりに頼んで……いやいや、ろくなことにならねえ!」
ブー「なになに!?今なにかとっても面白そうな波動を感じたんだけど!?」
ユウ・パン「「なんもない!なんもないです!帰って下さい!」」
ブー「そう? 貴方達ほんと仲良しねえ」




