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第四十五話 魔獣の森

 今日は魔獣の森までピクニック、じゃあなくて狩りがてらホップの採取に来たのだが……。


 現在我々はウサギの集団に崇められ、その中心で昼食を摂る羽目になっている。


 何故、そんな事になっているのかというと……。


  ◇◆◇


 魔獣の森に到着し、さあどこから探そうか?なんて言っていたら珍しくクロベエが張り切りだした。


「ユウ このあいだみつけた いい場所がある 見慣れない 草もあったし 探しているものもあるんじゃないか」


 最近微妙に賢くなってきたクロベエが言うことだ。そういや前にデカい鶏、レッグコッカを獲ってきたことがあったな。恐らくそいつと遭遇した方向に案内しようとしているのだろう。


「今日は目的地を特に定めてないしクロベエについて行くことにするか」


 尻尾をブンブンふって先頭を歩くクロベエ。これはとても機嫌が良いときに、散歩の時に見られる行動だ。


 暫く歩くと確かに見慣れない木の実や花が目に入るようになった。

 せっかくなので摘みながらついて行くが、同じ森でもここまで分布が変わるとは驚きだ。

 確かに山菜採りで山に入ると特定の場所にだけコロニーを形成している山菜などもあったりするが、それ以上に様変わりしているような気がする。


 間もなく開けた場所に出た。


 小さな池があり、その周りには花が咲き乱れちょっとした公園のようだ。


「おっいい場所じゃ無いか。よし、ここでお昼にしようか?」


 とか言っていると何処で何のフラグが立ったのか知らぬが悲鳴が聞こえてくる。


 魔獣の森に人が?理由は分からないが何人か居るようでどうやら魔獣に襲われているようだ。


 パンにルーちゃんを任せ声の方に向かおうとするが、どうやら声の場所はとても近い。


 目の前の藪の向こうから聞こえてくるようだ。


 クロベエの背に乗り藪を飛び越えた瞬間、大きな白い猫がウサギに牙を向けているのが見えた。


「あれ?魔獣しかいねえ!」


 シュタっと降り立つと猫とウサギが一斉にこっちを見た。


 あれあれ?人の声は?あれ?なんて思ってると


「ああ!!!あのときの!くろいせんし!」

 

「またわれらを!すくいにきたのですね!」


 ウサギたちが喋ってる?あ!ルーちゃんか!


 ルーちゃんの自動翻訳はパッシブスキル。特に発動をさせる必要が無く、その範囲内に居る魔物はある程度の知識があればさえ互いに会話が出来る様になる。


「戦士ってなんのことだ?」


「せんしはせんし!くろいせんし!」

 

「おい!そこのくろいの!おれのえものをうばうきか?」


 女剣士みたいな声がすると思ったら白い猫だった。


「なんのことだ?俺はユウに言われてここにきただけだぞ」


「せんしさま!あいつ!われらをおそうわるいやつ!」


「やっつけて」「やっつけて」


 クロベエの後ろに回り込んだウサギどもがぴょんぴょこぴょんぴょこやかましい。

 

 なんにせよ邪魔なので広場に逃げるよう言ってこの場から追い出してやった。


「きさま!かってにえものにがしたな!にんげん!おまえもゆるさぬ!」


 どうやら戦いは免れないようだが、うーん……こうやって喋ってる魔獣を狩ってしまうのはどうもな。なんというか、ゆるキャラをころころしてしまう感じというか、なんというか。


 ルーちゃんのスキルが会話できるだけの知識があるもの限定でほんと良かった。そうじゃなかったら食えるものが極端に減ってしまったことだろう。


「クロベエ、殺さないように相手してやれ。でも無理はするなよ?いざって時は俺に頼れ」


「うん でも俺だいじょうぶ あんな奴余裕」


「ごちゃごちゃとうるさいやつ!」


 耐えきれず飛びかかってきた白猫。といってもかなりデカい。クロベエと同じくらいのサイズだ。


 慌ててクロベエから飛び降りるとクロベエも逆側に避ける。


 白猫はそのままクロベエを追い、なんとか間合いに入ろうとするがクロベエがそうはさせなかった。


「おいおい…なんだよあれは……」


 クロベエがソニックブ○ムを打っている。近寄ろうとするたび前足を振って風の刃を飛ばす。


 左に右に器用に撃つものだから白猫は一向に距離を詰められない。


 やがて焦れた白猫が取った行動は愚かだった。


 大地を踏みしめ風の刃を飛び越えてクロベエ目がけて飛び込んだのだ。


 その時クロベエの目がギラリと光った(気がした)


 待ってましたとばかりにヒラリと宙返り。


 後ろ足が白猫の腹に突き刺さり、相手の勢いも利用した大ダメージを与えた。


「まんま待ちガ○ルじゃねえか!!!!!!」


「グボァッ」


 白猫はそのまま地面に叩きつけられるも、なんとか距離を取ろうとがんばる。


 が、クロベエはその隙を逃さずマウントを取り、じっと睨み付けた。

 懐かしいなあ、良くクロベエが一緒に狩ってる猫たちとじゃれ合ってこんな真似してたっけ。


 なんとか抵抗しようと頑張る白猫だったが、体格差がそれを許さない。


 やがて抵抗するのを諦め、足掻くのを止めた白猫はじっとクロベエを睨み付けた。

 これは……、このシチュエーションは……!


(くるぞ、くるぞ……絶対に言うぞ……)


「くっ…!ころせ!」


「いただきました!くっころ!!!!雌猫のくっころ!!!」


「ユウー?こいつころしていいのー?」


「あ!だめだめ!ちがうちがう!そいつもう戦えないだろ、許してやれ」

 

 クロベエは俺の言葉にまあそうだろうなと言う顔をして前足の力を抜いた。


「お前 助かったな ユウがああ言ってるし俺も殺す気は無い どこへでも行け」


 拘束がとかれ解放されるとフラフラと起き上がり、暫く何か言いたそうにウロウロしていたが、クロベエに唸られると諦めたのかそのまま森の奥に消えていった。


 クロベエに変なフラグが立ったような気がするのは気のせいだろうか。

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