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第四十二話 気候の仕組み

季節はめぐ…めぐ…あんまり巡った感じがしないが、俺の暦の上では12月も半ばが過ぎ、ここに来てからもう直ぐふた月が経とうとしている。


 攫われたときは11月になったばかりで、それまでしぶとく秋の気配を見せていた気候が一気に冬の本気を見せ始め、クロベエの散歩に出たときコートを着ないで家を出たことを心底後悔したのを覚えている。


 だというのに、ここときたら相変わらず肌を撫でる風は優しくて、どこからか花の香りを乗せてくる。


 柔らかに差す日差しはとてもここちよく、小鳥たち(魔獣だが)の声を聴いていると知らぬうちにうつらうつらとしてしまう。


 そう、この心地よさは正しく春だ。


 パン曰く、この世界には四季というものが無く、地域ごとに設定された気候の元それに適応した種が生息しているらしい。


 そしてこの地域は常春の地、狩りと農業に適した土地とのことで、曰く、わざわざこうしたのは地域ごとに特色がある気候を設定することにより、狩りなら狩り、農業なら農業の文化が発達しやすいようにした、この地域の土壌が豊かなのはそのおかげ、とのことだ。


 しかし、常春の国にろくなことはないって漫画で知ってんだ!


「なあ、女神様よ、突然だけどきいとくれ。俺が好きなゲームに"けして飢えないで下さい"という名前のものがあってね。孤島に送られたプレイヤーが現地調達でサバイバルをするというものなんだが、ソロプレイの場合、死んだらそこでおしまい、ゲームは最初からになるんだ」


「ふむふむ、なに?ゲームの話?面白そうじゃない、今度販売ページ教えてよ」


「で、だ。そのゲーム最初の難関が『如何に冬を越すか』なんだよ。食糧に乏しい冬に向けて食糧を貯めて備える。運悪くそれが尽きれば探しに行かなければいけないが、防寒対策をしっかりしないと死んでしまう、デフォルメキャラには似合わない結構ハードなゲームなんだよ」


「それがどうしたのよ?やりたいの?だめよ、パソコンまではサービスしないからね」


「いや、アプリ版も持ってるから別にそれは、ってそうじゃなくて、まず大体のプレイヤーが所見では冬に苦しむことになるんだよ。

 そしてその苦労を味わうと次回からは冬に備え様々な工夫を覚える。さっき言ったように食糧の備蓄や、防寒具の用意、マキをたくさん用意したり、冬場に有利な場所に拠点を作ったり。そう、冬に耐えるため色々やってるうちにゲームスキルが上がるわけだ」


「ふーん……ふーん……」


「でさ、例えばそのゲームで季節をオフにする設定を使ったらどうなるだろう?

 例えば春と秋を交互に繰り返すだけの設定にしたらどうだろう?

 生活は安定して死のリスクが極端に減るだろうけど、それってプレイスキルは上がらないし、結果的にゲームの寿命を短くしちゃうよね?

 ここまでいったら僕が何を言いたいかわかるかなー?助手ー?」


「はいー……、完全に四季がないからそれがこの世界の住人をぬるま湯につけてしまってぇ、生き抜く知恵を与えるきっかけが極端に少なくしてしまってぇ、結果として発展を妨げていたのかなあって思いましたぁー。

 これはやっぱりダメだと思いますぅー……」


 なんだよそのインタビュー受けた小学生みたいな反応は……


「でもさ、季節固定でも冬の地域に住む人間なら暖房器具の発達とか、防寒具の発達とか、食糧を集める知恵とか、そんなこんなで発達してそうなもんだけど冬の地域には人はいないの?」


「いるわよ…いる、居るにはいるが…、もともと寒さに強い人種に設定したし、なんだか大きな洞窟に住んでるようだし、火山帯で天然の床暖ばっちりだから意外とそこまで寒くはないし、特に苦労はしてない…と思う……」


「だめじゃねえか!!!」


「うわーん!だって厳しくして全滅しちゃったらかわいそうじゃないのよー!」


 気持ちはわかるが、こいつチートコード入れねえとシミュレーションゲーム進められない系の人種だな……。

 多かれ少なかれ多少の犠牲を払って国力をあげなきゃないところを、家臣が死ぬのが嫌だー!って言ってどこにも攻め入らないでいる内に周りを強国に囲まれて詰むとかそういう奴だな……。


「で、でも!基本洞窟ぐらしで鉱物に恵まれてるせいか近接武器がある程度発達したから!ふふん!」


「そこから近接武器が発展したり、他所に広まったりしてないってこた、なんか理由があるんだろうな」


「うわーん!知らないわよ!気になるなら後で見に行ったらいいじゃないの!」


 そう来たか……。


 おそらく近接武器が誕生した所まではよかったが、それを強化する必要がなかったり、火山帯からわざわざ外に出る必要性が無かったりと、発展せず、その武器が他の地域にもたらされなかったのには何かしら理由があるのだろう。


 まあ、遅かれ早かれあちこち見て回りたいと思ってたからそのうち旅行がてら見に行くのも悪くないかもしれないな。

 この世界で見た近接武器らしいものと言えば包丁やナイフ、斧といったどちらかと言えば道具と言えるものばかりだし、弓が発達した地域のせいか、魔物と戦うために使うという発想はないみたいだしね。


 そこの住人とも仲良くなって互いに交流させたら、なかなか楽しいことになりそうだ。


 うん、なんか知らんがやたらとやる気が出てきた!


 ……といってもまだまだ忙しいから当分は放置だな。焦らずゆっくりまずはこの地域の基盤を整備してから。


 集落に"最初の種"は蒔いた。今頃それが育って前より結構良い集落になってると思う。でも、それだけじゃまたそのまま停滞してしまう。近いうち集落に行って"次の種"を蒔き、次の段階に進める必要があるだろう。そうすればまた暫く緩やかな成長をしていくはずさ。


 それが済んだらパンやルーちゃんと相談して火山でも見に行こうと思う。



 

 今回は続きを書くつもりが説明回過ぎる回になっちゃったので、短めにまとめて続きも掲載!と思いましたが、色々足してるうちに結局長くなっちゃったので続きは明日ということで。

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