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第四十話 おふろ

「あら、タオル作ったのねー。えらいえらい!わたしに頼らずよくできたじゃないの。じゃ、ルーちゃんとお風呂はいってくるわね」


 さも当たり前といった感じで言われてしまったので、ついつい


「おう!あったまってこいよ!」


 と、笑顔で送り出してしまったが、お風呂を作ったのもお風呂の用意をしたのも、わざわざ材料を取りに行ってタオルや下着を作ったのも、それもこれもこの俺が風呂を渇望していたからであって、ルーちゃんは兎も角、女神を、パンを風呂に入れるためではないというのに、なんだろうこの状況は。


 我ながらあきれてしまう。


 風呂場からはルーちゃんとパンの楽しそうな声が聞こえてくる。どうやらダンジョンの運営について簡単な話し合いをしているらしいが、微妙な疎外感を感じてちょっと寂しい。


 娘と風呂に入る妻が"女の子同士の話”をしてるのを聞いてしまった夫ってのはこんな感じなんだろうか……。複雑な顔をして頭をかいているとクロベエがのしかかってきた。


「ユウ……おれがいるぞ……」


 うん…ありがとう……でもお前まえも言ったけどそのサイズだと…その……潰れる……。


 結局床に倒れる羽目になり、そのままクロベエの腹毛を堪能していると二人が上がってきた。


「お風呂あいたわよー、って何じゃれ合ってんの!ほら!さっさとお風呂入って綺麗にしてきなさい!」


 まったくお母さんみたいな事をいいよる。


 とは言え、待望の風呂だ。一番風呂は取られてしまったが久々にゆっくりするぞ!


 服を脱ぎ、タオルを肩にかけて浴室に入るとモルモルが居た。


「おお、すまぬ主よ。湯の浄化をしにきていたのだ。なに、我の事は気にせず身体を清めるといい」


「お、おう、そうかい、ご苦労さん」


 ルーちゃんの自動翻訳スキルの効果範囲が家の敷地いっぱいに広がっているようで、モルモルと普通に意思の疎通が出来てしまう。あんまり仲良くなるとその、色々なものの処理をさせるのが申し訳なくなるのだが、便利っちゃー便利なのでこのままでいいかあ。


「あ、ユウー?シャンプーとかあるでしょー?それ使っていいからねー。流石にそればっかりはまだまだクラフト出来ないしねー」


 外からパンの声が聞こえてきた。なるほどこれはありがたい!石けんで髪を洗うとキシキシして嫌だからな。一番風呂譲っといて良かったぜ。


 身体を洗い、湯につかる。プカプカと湯船をたゆたうモルモルがお風呂アヒルの様でついつい弄ってしまう。


「こらこら、主よ。我をつつくでない」

 

「ああ、すまんすまん。ついな」


「主よ、主が出た後に地下に居る同胞も湯にいれていいか」


「ん?風呂に入れたいのか?別にかまわんがどうしてだ?」


「それがな、主。この湯の浄化を始めてから我の頭が冴え渡るのだ」


「そういえば……普通すぎて気づかなかったけど、前より言葉がしっかりしてるな」


「女神の出汁が効いたのかも分からない。なので主、同胞も賢くしたい」


 女神の出汁て!なんか変な気分になってくるからそんなこと言うのはやめていただきたい。くそったれな性格してるし、寝屁はするけどアレはアレで結構可愛いのだ。風呂から出られなくなってしまう。


「ん、お前らが賢くなればそれだけ色々頼めるようになりそうだしな、いいぞ俺が許可する。」


 風呂から上がると女神はビール片手にクロベエの腹をまさぐっていた。威厳もなんもあったもんじゃねえ


「おっ 上がったわね。ほれ!」


 冷えたビールを投げてよこす。なんかすっかり女神らしくする!ってのを諦めた感じだな。


 湯上がりビールの幸せを噛みしめ、向かい側に座って今あったことを話す。


「つうわけで、風呂の浄化をしたモルモルが賢くなってたんだが……、お前の加護って水溶性なの?」


「はあ?なにいってんの?馬鹿じゃないの?そんなことあるわけないじゃない!どうせ、んー女神の出汁が効いてるーとか変なこと考えたりしたんで……んー?」


 否定しかけたパンは何か気づいたのかドタバタと風呂に駆け込み、間もなくバタバタと戻ってきた。家の中は静かに歩いて欲しい。後、女神の出汁とか言ったのはモルモルだよ!お前はモルモルレベルかよ!


「あー……、お湯の成分を軽く分析してきたけど……」


「なんですか、言いにくそうですね?」


「水に祝福がかかってた……」


「えっ」


「私は悪くないわよ?あんたが悪いんだからね?」


「直ぐそうやって人のせいにするのは貴方の悪い癖だって先生いつもいってますよね!」


「だれが私の先生よ!ほら、あんた水道引いたでしょ?」


「ああ、泉の水が出るようにしたな」


「まあ清浄な泉だから水質はそれで問題ないけどさ、フィルターもなんもつけないからたまに砂とか混じるのよ」


「あーー失念してた」


「しょうが無いなーって、そんくらいは手間でも無いから水道周りに浄化フィルターつけたんだけどね?女神である私が手をかけたものでしょ?それで…それを通す水に加護が……」


 コップに水を汲み鑑定してみた。


=========================================

 名前:泉の水(祝福)

 こんこんと湧き出る清浄な水が貯まった泉の水。そのまま飲んでもお腹を壊さないとても美味しい水である。女神の加護を得ることによりさらなる効果を得た。


 効果:潤い 美肌 回復+2 成長+1

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「潤いに美肌、回復ってなんか温泉みたいな効能だな……。さりげに混じってる成長+1が気になるが」


「んー、気持ち成長が早まるようなものみたいね。例えば畑にまいたら凄いわよ。

 普通の畑より成長速度が大分違うはず。まあ人や魔物が飲んでもそこまで変化は無いはずだけどね。別に老化が早まるとかじゃないし、経験値増加効果がわずかにあるとかそういう考え方でいいと思うわ」


「モルモルはどうなるんだ?知力が結構上がってると思うのだが」


「そんなの私が知るわけじゃないじゃないの!少なくとも加護の影響はあるみたいだけど、そこまでの効果はこの水に無いわよ!だってあんた別に賢くなってないじゃないの!」


 ついでに俺をディスるのはやめていただきたい!確かに頭が冴えたとかそういうのは無いけどさ!


「まあほら、あれよ。追々調べていけば良いわよ。うん、そうよ。あんた暇でしょ?今後の課題にしなさい。私はほら、ルーちゃんとダンジョンの調整したり忙しいからさ」


 こいつ、考えるのが面倒くさくなったな……。しょうが無い、暇なときにでもモルモル達を呼んで調査してみるか……


 

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