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第三十七話 おひっこし その1

ひどい1日から一夜明けた。カッパのおっさんは夢にまで出てきて俺を苦しめ、朝からとても気分が悪い。


 なので今日は気分転換にタオルや服でも作ろうかと思ったのだが、ルーちゃんがダンジョンに行こう行こうとせがむため仕方なくダンジョンに行くことになった。正直なところあのおっさん達妖怪と二日連続で顔を合わせるのはかなりキツい……


 とはいえ、俺はまだダンジョンと化した洞窟を、ルーちゃんが作った第1階層を見ていない。なのでそれはそれでちょっと楽しみだったりするのだが、ダンジョン内とはいえ、やはり心の傷がいえぬうちに湿地的なところに行くのはやっぱり気が重かった。


 そんなわけで浮かない顔をしてるのだが、ルーちゃんはウキウキで、


「ユウ、ダンジョン凄いからね。クロベエもね、楽しみにしててね!きっと楽しいよ!」


 スキップしながら俺の手を引っ張る。自分の成果を俺に見せようと、見せたらどんなに驚くのかと楽しみにしてるのだ。こりゃ暗い顔をしてたら申し訳ないな。


 そしてクロベエはというと……


「まじかー ゆうー たのしみだねえ」

 

 なんてワクワクした顔をしている。こいつは知らないのだカッパのおっさんのめんどくささを。そう、あのやかましい妖怪沼会議にクロベエはいなかったのだ。確かについてきたとばかり思っていたクロベエは途中エンカウントしたらしい魚の妖怪に夢中になり離脱、通路作成に必死だった我々はそれに気づかず沼へ。


 会議が終わった後クロベエがいないことに気づいて焦ったが、大きな魚の妖怪を平らげ満足げに寝ているのを見て通路から蹴り落としたい感情が芽生えたのだ。


 まあいっか、過ぎたことは仕方ない。猫は気ままな生き物だしな。


 ◇


 あれからどのくらいぶりだろうか。なんだかこの岩山も既に懐かしい感じがする。慌ただしい日々が続いたため、感覚がおかしくなっているが、攫われてから2週間くらいかな?


 久々にやってきた塩の洞窟は中に入っても以前とあまり変わらない印象で、本当にここにダンジョンなのか?そう思ってしまった。正直期待していたほど見た目から違いが判らなかったのだ。


 説明を聞こうと思ったが、ルーちゃんとパンのやつは見ればわかるからといった感じでさっさと歩いていってしまう。


 細い通路を進むと俺が採掘していた(スマホで大暴れした)場所についた。そこはさしずめ広間といった感じで、言われてみればダンジョンかなあって思うけど、やっぱり洞窟は洞窟だ。


 しかし、首を傾げながらも二人についていくと納得した。下り階段があったのだ。


「ははあ、ここを下れば湿地なんだな。なるほどなるほど、ダンジョンらしくなってきたじゃないの」


 と、頷きながら後に続くが、下りた先はそんなこともなく、会議室かな?って感じのやや広めの部屋だった。


「あれっ湿地帯は?見た感じ湿地帯って感じじゃないんだけど?」


「何言ってんの、まだ1階層じゃないわよ。って、ごめんごめん!説明してなかったわね、階層間の移動は転移門ゲートを使うのよ」


 なにそのファンタジー感溢れる素敵な移動手段!指をさされてみてみれば、床全体に大きな魔方陣のようなものが描かれていた。その中心にはATMくらいの石でできた立方体があり、そこにもまた何かが描かれている。


「ここがダンジョンの入り口でね、特別な仕様になっているの。ほらみて、ここに手を置いて行きたい階層を念じるのよ。するとね、そこまでショートカットできるってわけ。あんたの世界で言うところのエレベーターみたいなものね」


「あー、その手の奴はラノベやゲームで嫌ってほど出てくるからわかるぜ。定期的に中継地点が設けられてて、そこから帰還すると以後はそこに直行できるようになるってやつだね。なるほどなあ、ルーちゃんこんなの良く思いついたな」


 「流石にこれは私がお手伝いしたわ。ちなみにあんたが言う通り、行ったことがある階層までしかいけないのであってるわ。といってもまだ1階層しかないけど」


 仕様としては、1階層、もしくは行ったところに転送できるのがこの大転移門メインゲートらしい。今後どうなるかわからないけど、何かあって大勢入ることがあっても対応できるようにここだけは大きな転移門ゲートに設計したそうだ。


 今後、ルーちゃんが成長して2階層を作った際には1階層のどこかに2階層への転移門ゲートを設置するとのことだが、それは5~6人入れるくらいの小さなものにするとのこと。


 しかし、冷静に考えると、俺は普通の地球人なわけで、この手のものを使ったことがあるわけがない。


 なので、(転移の仕組みってどうなってるんだろう…粒子にまで分解されて飛ばされるのかな…飛んだ先の俺は果たして俺なのかな?俺の記憶をそのまま移された俺であって、今現在ここにいる俺とは違う俺になったりするんじゃないかな…)なんてお約束の想像をしてビクビクしてしまう。


「無駄に難しいこと考えているみたいだけど…そんな仕組みじゃないからね。

 転移門ゲートの上に立っている者たちを認識して亜空間に収納、移動先の安全確認後そこに配置ってだけだから。

 そうね、カット&ペーストみたいな感じよ。てか、分解とかそういう物騒な考え方どっからでてくんの?」


「なるほど(わからん)」


 まあ、俺なのに俺じゃない!ってことにはならなそうなのでわかったような顔をしておくか。今後も使うことになりそうだしな。


「ちなみにこの後実行するルーちゃんの召喚も同じ理屈だから安心してね」


「俺が召喚されること前提で言うなよ……」


「ほれほれ、石版に手を置いてみなさい」


 まだちょっとビクつきながらも言われるままに手を置いた。


 すると刻まれていた文字が淡く輝き、その光が石板を通じて床の模様に広がっていく。立ち上る光に包まれて何も見えなくなったが、ゆらゆらと青や緑に変わる光がとてもきれいだ。


 ファンタジーらしい光景をぼんやり眺めていたが、やがてそれは床に吸い込まれるようにして収束した。


 特にどこかに運ばれた感覚もなく、周りを見てもそこに広がっている景色は入った時と何ら変わりのない場所だったが、本当に転移されたのだろうか?なんて考えていると、元気いっぱいにルーちゃんが到着を告げた。


「ようこそ、第一階層へ!!!」


 ほんとうかあ?本当に転送されたのかあ?と、狐につままれたような顔で部屋から出ると眩しい光が顔に当たり、足元にはフカフカとした草の感触が伝わってきた。


「うおおおおお!なんじゃこりゃ!!!」


 目の前にダンジョンの中とは思えない広大な湿原が広がっていた。

例によって長くなってしまったので分けました。

続きは19時くらいに…

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