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第三十四話 沼地の戦い

 収穫に夢中になりすぎ危うく地形を変えてしまうところだった…


 と、逃げ惑う魚をみてモルモルの用事を思い出す。


「でさあ、モルモルの件だけど、魚類はどうやって連れて帰ればいいんだろう?ていうか話が通じるのかな?」


「うーん、沼地の方にいる連中なら知能があるから交渉もできるだろうけど、ここらの魚類は魔獣ってよりほんと魚に近いからなあ。多分、ルーちゃんの力でも対話は無理だろうと思うわ」


 じゃあ地道に釣るしかないかな?ふふん、まあそうだよね!そう思って用意しておいた釣竿とバケツを意気揚々と取り出した。


「はあー……、あなたねー今まで散々そのスマホで楽してきたくせに、ここで釣竿出す?出しちゃう?」


「ええ……おっしゃる意味がわからないのですが……魚と言えば釣りか漁でしょ?」


「開拓ツールで魚ごと水を切り取ってボックスに突っ込めばいいじゃないの。んでダンジョンについたらボックスからダバアすればおしまい。どうせ魚なんだから気にせずそのまま住みつくわ」


 なんだかさっき追い詰めた女神にまたやり込められて非常に悔しいが、このまま機嫌よいままにしておけば今夜もビールが飲めるってもんだ。悔しいが正論なので大人しく従うことにした。


 湿地にスマホを向け、適当に指で範囲を指定し、持ち上げる。どうやらきちんと「水」が選択できているようでぶわっと大きな水の球が浮かび上がり、ふよふよと漂っている。


 水球の中では慌てるように魚たちが泳ぎ回っているのが見え、一緒に取り込んだらしい水草の塊に逃げ込む姿も見える。その中にちょいちょい凄まじい牙が生えたものや、リヴァイアサンの子供見たいのが見えるがまあ、魔獣と言うことだ。気にしないでおく。


「わー おさかなたくさん すごいねー」


「ユウ!おれにも! おれのぶんもとってくれ!おれもさかなくいたい!」


 ピョンピョコ ピョコピョコ


 はっはっは大盛り上がりだ。俺もなんだか楽しいぞ。


 そのまま収納ボタンを押すとちゅるんと吸い込まれるように水球が消えた。


「わー! おみず きえたねー!もっかいやって! もっかい!」 


 いちいち喜ぶルーちゃんが可愛い。そうだな、もう一度くらい取った方が良いだろう。同じ場所でやって水だけだったら悲しいので、念のために場所を変えもうひと球入れておいた。


「ううん、ルーちゃんの仕事を奪ってしまったなー」


「あら、ついでに沼地の魔獣も連れて帰ればいいじゃないの」


 時計を見るとまだお昼前だった。そうだなあ、お昼を食べて沼地も見ていくか。ルーちゃんの経験値も稼げるだろうし、俺も近所のマップを埋めておきたいしな。


 ◇


 昼ご飯が済み、沼地へ向かって歩みを進める。


 とは言え、深いところでは2mを超える湿地帯をザブザブ泳ぐのは嫌すぎるので、橋的な通路を作って設置しながら進む。


 時間もかかるし面倒くさいが、一度やってしまえば次回からスムーズに沼まで行けるため丁寧に作る。


 2時間ほど進むとアシのような草、ショアと思われるものが鬱蒼と茂っているのが見えた。どうやら沼に着いたらしい。


 沼とは言え、うっすら見える対岸まではかなり遠い。結構な規模の沼地のようだ。


 3人と3匹で外周を歩いていると岩の上に腰掛けている魔獣?の姿が見えた。


「あれは……どう見てもカッパなんだが……」


「違うわよ。図鑑見てみなさい?タルットっていう亀の魔獣よ?」


 そう言われ疑うようにアプリで見てみるが、


=========================================


 魔獣:タルット

 沼地に住む魔獣で背中に立派な甲羅を持つ。

その甲羅は熟練の戦士が放つ槍すら跳ね返し、隙を見せれば得意のスモウスキルで投げ飛ばしてしまうぞ!

 ただ、そこまで凶暴な魔物では無いため、運悪く出会ってしまっても安心だ。好物のキウリーさえあげれば沼地を出るまで護衛してくれる良い魔獣だぞ。


 素材:タルットの甲羅 タルットの皿 タルットの嘴 


=========================================


「あの、これやっぱりカッ……」


「タルットよ!ほら!書いてあるじゃない!」


 うん、まあ、タルットなんだろうな…この世界じゃ……。図鑑の説明もカッパとしか思えないけどね…


 よし、取りあえず最初の魔獣?魔族?まあどっちでもいいや。とにかく友好的っぽいのと最初に会えたのはラッキーだ。ルーちゃん挟んで対話してみよう。


「まいどー、最近越してきたユウといいますー」


「おっ 珍しいな 新顔かいな」


 うわ、めっちゃ喋ってるし、めっちゃおっさん臭いぞこいつ……。


「ねえ、ルーちゃん無しで話が通じてるっていうかアイツめっちゃ喋ってるんだけど」


「ああ、うん……魔獣っていうより魔族ね、彼?は。知能が高いみたいね」


 あんたが作ったんじゃねえのかよ!知っとけよ!って思ったが、まあ沢山作ったら忘れることもあるよねーと、あまり突っ込まないでおく。拗ねられても面倒くさい。


「え、えっとですね今日は…あ、ルーちゃん挨拶して」


「るーちゃんは るーちゃんです だんじょんこあ やってるのよ」


「へえ?ダンジョンコアかいな!たまげたなあ!それがまたなんでこんなとこまで?」


「るーちゃんね だんじょんに しっちのおへやつくったの」


「そうなんですよ、この子の初作品、第一階層は立派な湿地なんですよ。あ、勿論沼地もありまっせー」


「ほうほう!そら凄いな、で…、ほんでどうしたん?あ!まってや!まだいったらあかんで!おっちゃん当てたるわ!」


 やばいな、このノリ…面倒くさくてだんだん帰りたくなってくる。


「ん!わかったわ!当てたるで?ズバリ当てたるでー?ズバリ!……湿地を作ってもうた!?」


「だから今そういったやんけ!この鳥頭!」


「がっはっはーぬまだけに?」


「全然かかっとらんわい!」


「兄ちゃんおもろいなー気に入ったで がっはっはー」

 

 もうやだ……帰りたい……酔っ払いの相手してるみたいでつらいよお…話がいっこも進まないよお……


 

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