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第三十三話 湿地へ

 今日我々は湿地帯に来ている。クロベエと、パンとルーちゃん、それに家に住んでいるモルモル達2匹も一緒だ。


 なぜモルモルも居るのかというと、朝ごはんを食べながら湿地に行く相談をしている時、突然モルモルが話しかけてきたのだ。ルーちゃん経由でね。


「あるじよ われらも いきたい きょかを」


 突然のおねだりにびっくりしたが、「暇な時は散歩くらい適当にしてもいいよ」と言っていたので、別に俺らが行くときじゃなくても湿地くらいなら暇な時勝手に行ってきていいぞ、と言ったのだが、どうやらルーちゃんの同伴が必要な重要案件のようだ。


「ルーちゃんが必要?そこまで重要な用事ってなんだい?」


「だんじょんのことだ すこしだけ こまっているのだ」


「ふむ、ダンジョンか…そりゃ大切だな、よし詳しく話してもらおう」


「われらの だんじょん とてもかいてき でも まだ われらしか いない」


「なので われら るーさまが うみだした しょくぶつ たべてる でも さかなも たべたい」


 そういやダンジョンにポップする条件はルーちゃんがスカウトするか、魔獣自ら住みついてそこを気に入る必要がある、ってことだったな。

 魔獣とて霞や魔素を食って生きているわけではない。動物の代わりに居るというだけで、根本は動物と変わらない生き物で生態系もまた存在する。つまり他の魔獣が居ない今の環境はモルモル達の餌事情的にあんまり良くないということだな。


「あーそうか、魚も魔獣扱いになってるからルーちゃんが環境生成で干渉できねーとかそういうことなんだな?」


ジト目で女神を見つめ、責めるように確認をしてみる。


「うっ そうね…動物なら植物と同じく環境生成の際に生み出されるはずよ。ブーケニュールのとこなんかそうね、あっちは牧歌的な景観のダンジョンなんかあってさ、牛なんかも普通にわいてさ、冒険者たちのダンジョン食として大いに役立ってるようだしさ、やっぱり動物を作らなかったのはしっぱ……」


「ブーケニュール?前もそんなこと言ってたけど他の女神でも居るのか?」


「あっ!しまった!うう…いやほら…、この世界は私の世界だから私しか居ないわよ。ブーケニュールは別の世界の女神でね…ああもう!よその話はいいじゃないの!」


「ふうん、そのブーケニュール様の世界はとても快適そうだなあ。冒険者も居るんだね、凄いなあ。俺もそっちの世界ならもっと王様ビビらせたりしてさ、チーレムとかして楽しめたのかなあ。

 それに比べてこっちの世界の環境は人間どころかモルモルすら困らせてるわけだ。あー、こう言うところにもどっかの女神の雑な世界創造が影響を及ぼしているんだなあ」


  ここぞとばかりにとどめをさしていく。


「うっ で、でも小さい虫はさすがに魔獣じゃないからね?ちっこいのまで魔獣にしたら困るしさ、あ!ほら!だからほら!湿地にも水生昆虫なんかはいるわよ?ふふん!私だってそれくらいのことはちゃんとしてるんだから!」


「ちっさいことで威張るな!モルモル達は魚食いたいっていってんだろーが!」


「うわーん」


 そんなわけで、しょんぼりする女神を引きずってふわふわの木と魚系魔獣を捕まえにやってきたわけですが、やはりどう見ても綿花らしいものはない。しょうが無い"女神様”の知恵を借りるか。


「ねえねえ女神様、そのふわふわの木とやらはどこにあるのでしょう?」


「ん……?あ!女神様っていった?うふ、やあね目の前に生えてるじゃないの」


 ちょっとした言葉で機嫌を治す女神、扱いやすくて非常によろしい。


「というか……前来たときも目の前にこんだけ茂っているのにリアクションしないのおかしいなあって思ってたけど、目の前にしてもそれなのね?気づけない?見えてない?そもそもちゃんと目がついてるの?」


「ぐぬぬ…調子に乗り出したな!でもわからないものはわからないぞ。というか俺が想像してるのとかなり違うんじゃ…」


 わからないものはわからない、あるなら出してみやがれと食い下がると、パンはハアとため息をついて両手をかざした。


 その手は湿地の浅いところに向けられていて、「えい」という声とともに水の中から何かを引き抜いた。


「これがふわふわの木よ?どんなの想像していたの?」


 それは緑色をしたスイカくらいのぼこぼこした実をつけた水草だった。巨大なアナカリスにスイカがついているような感じだ。


「はあ?それのどこがふわふわなんだよ?ふわふわっていったらもっとこうふわふわだろうが!それはどう見てもアボカドみたいなごつごつで……」


 と、騒ぐ俺にパンが実を投げつけてきた。



「うわっ!なにしやがる!あぶねえ!」


 顔に迫るスイカ大の果物!当たったらただじゃすまねえ!スマホを取り出す余裕もなく腕をクロスさせ顔を守ろうとするが、至近距離なので間に合わない。中途半端な形で両手を前に出すという間抜けなポーズになってしまった。


 ふわっ


 あっ…この感触…身体の一部にとても悪い…二つ並べて揉みしだきたくなる感触…ふわっふわだあ……


「ね?ふわふわでしょう?」


 心を奪われかけたが、しかしやっぱり納得がいかない。


「ふわふわなのはわかったが、どう見てもこれが綿花的なものには思えないのだが」


 疑問をぶつける俺に女神が手刀を振り下ろす。

 

「うおっまたかよ!なにすんだよ!」


 ズバリといい音がしてふわふわの実が割れた。こいつこそ拳王なのでは……。


 中から現れたのはふわっふわの綿のような真っ白い素材だった。


「ふふん」


 得意げな顔が腹立たしいが、おかげで素晴らしい素材が手に入ったので許してやろう。これなら様々な素材に使っても満足なものが作れそうだ。


「こんなの見せられちゃうとぐうの音も出ないな……。よし、これはちょっと多めにとって帰ろう」


 多すぎかな?というくらいの量を取ってしまったが、増えやすい植物とのことだったので安心して乱獲した。



 

 


長いので分けました。続きは19時に

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