閑話 クロベエ狩りに行く
三十二話で途中居なくなったクロベエのお話です。
どうもクロベエの影が薄くなりがちなので、合間のお話を追加してみました。
こっちの世界に来るときに、女神様の力で身体が大きくなって、ユウと話も出来るようになった。
今まで話せなかった分、いっぱいはなそーって思ってたんだけど、実際そこまで話すことなんか無かったな。うん、おれ、ユウと遊んでられたらそれだけで良かったんだ。
でもおれ後悔はしていないぞ。ユウと一緒に面白いところにこれたし、新しい家族も出来たし。
ルーちゃんはおれの妹分。とてもかわいい。女神様もユウはからかってるけどおれには分かるぞ、あれはすごい。すごいけどおれには優しいから好きだ。
久しぶりにユウと二人なので前みたいに散歩に連れて行ってもらおうかな?っておもったんだけど、ユウのヤツ、家を作るのに忙しいみたいだ。お昼寝をしてみたものの、どうにもうるさくて寝付けない。
なので今日もひとりで散歩に行くことにした。あっちの世界ではクルマとかいうヤツが危ないからとユウと一緒じゃ無けりゃ散歩にいけなかったんだけど、こっちにはクルマのヤツは居ない。
「クロベエ、ここなら誰の迷惑にもならんしクルマも居ないから好きなだけ遊んで良いぞ」
前にユウがそう言ってたし、怒られないだろー。
出る前にユウに声をかけようと思ったけど、女神様とお話中みたいだし、そのままいくことにした。
◇
ここの森は好きだ。最初は怖かったけどおれのほうがここの犬よりでかい。
ユウがやっつけたブタのようなヤツはかたすぎておれには無理だけど、アイツの匂いは覚えてるから避ければ良い。
と、いつもの所に行こうとしたらアイツの匂いがする。しかもなんひきかいるみたい。
「ユウがきいたら喜んで狩りに来そうだけどー うーん ユウ忙しいし、今日はここじゃないとこいこう」
おれはかしこいので、迷子にならないようにあちこちに匂いをつけていくぞ。
いつもと反対に曲がってまだいってない方に向かう。面白いもの見つけたら後でユウにおしえてやろう。
なんだかいい匂いがするので、そっちの方に向かってみたらちょっと広くなってるところに出たぞ
そこにはウサギのようなものが何匹か固まっていて、ぴょんぴょこぴょんぴょこしてる。
前見たウサギとちがうなー、これをとって帰ったらユウよろこぶかなー
ゆっくりと藪から抜けたらウサギたちがこっちを見た。気づかれちゃったよ。
すると
「グァエー!!!」
変な声が聞こえる。
よく見たら大きな鶏がウサギたちの前に居た。鶏の前にはウサギが何匹か倒れてる。
多分この鶏がやったんだなー。
うーん、ウサギはあまり大きくないし、弱いのと遊んでも面白くないし、そうだなあ、あのでっかい鶏をやっつけよう。あれならユウのおみやげにぴったりだ。
こういうのは一気にジャンプして首をねらえばいっぱつだ。ユウの部屋から脱走した母ちゃんが山のでかい鳥を取ったときそうしてたし!
一気に走ってジャンプ!鶏はびっくりした顔でこっちを見てる!覚悟しろー
口を開けて一気にガブリだ!!って思ったのによけられちゃった。
そのままお尻のあたりをバシバシ蹴られてとても痛い。
「くそう!おまえやっつけてやる!」
何度も何度も飛びかかってる。でも、おれの攻撃はまったく当たらない。
攻撃するたびお尻をキックされて最高に頭にくる。
しかもあいつ、「クカカカカ」って笑ってるみたいに鳴くからもっともっと頭にくる。
「もうすっごくあったまきた!」
飛びつくのはもうやめだ!近づいてひっかいてやる!
ジャンプして頭を狙うと見せかけて手前に降りひっかいてやった!
鶏のヤツ、おれがまた飛んでくると思ったんだろーな。とってもびっくりした顔だ。
でも、アイツ素早い!ギリギリの所で当たらなかった!
でもこの距離ならそのうちあたる!何度も何度も引っ掻いてやった!
バシュッ ザシュッ バシュッ
ギリギリの所でチョコチョコ動いてよける!よけるなこの!!!
……あれ?おかしいなー 全然当たってないのに鶏のヤツ羽根をちらして辛そうにしてる。
うんー?
なんか変な感じだったので、鶏から離れて思いっきり素振りをしてみた。
するとなにこれ、びっくりしたよ、俺の手からなんか飛んでく。
飛んでった何かが木に当たったら木が削れちゃったよ。
これを鶏に当てればやっつけられるなー!覚悟しろー!
シュバッ シュバッ
うーん、羽根が抜けて辛そうにしてるけど、弱らないなー
こういうのユウは"けっていだにはならない”とかいうんだよなー
じゃあやっぱ "けっていだ" は細い首をがぶりだな!
首を狙う動きはすきが大きいから避けられてお尻を蹴られて頭にくる。
手からなんか飛ばせば当たるけどやっつけられないから頭にくる。
じゃあ二つあわせてジャンプしながら手からなんか出しまくれば!
シュバシュバシュバ!!
羽根と足下を狙ってやったら嫌がって後ろに下がった。
「ばかめ そこはおれが落ちるとこだぞ」
そのまま鶏の上に落ちてつぶしてやった。
「グギャァ」
動けないのか、苦しそうに悔しそうに鳴いていたけどそのままガブっとやったぞ。
きちんととどめをささないと、後ろから蹴られそうだしなー
うん、動かなくなった!結構大きいなあ、ユウよろこぶかなー
口にくわえて帰ろうとしたら、藪の中からウサギたちが沢山出てきた。でっかいのとったからこいつらはいらないんだけどなー
「キュー キューキュキュー」
「んー?何か言ってるのかー?」
「キュッキュッキュー」
おれの周りをピョンピョンしながら何か言ってる気がするなー
「うーん、ルーちゃんじゃないとわかんないぞー 今日はこれやっつけたからお前らはゆるしてやるー 命拾いしたなー」
ウサギたちのことあとでユウに教えたらよろこぶかなー
とりあえずこれをもってかえってユウにおいしくしてもらわなきゃなー
「じゃあね、次はユウ達と一緒に来るぞ。もしかしたらお前らご飯にならないですむかもねー」
「キュッキュー?キュー!」
そろそろルーちゃん達もくるころだし、いそいで帰ろう。
うーん、お土産も出来たしいい散歩になったなー