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第三十二話 我が家

 キッチンにダストシュートなど追加しているとルーちゃんたちの賑やかな声が聞こえてきた。


 迎えに出るとスライムを2匹連れて戻ってきたようだ。


「おかえりーダンジョンはどうだった?」


「んとね しっちたい つくったよー モルモルもよろこんでた ね?」


 ぴょんぴょこ跳ねるモルモル。これは喜びを表しているのか。


 パンちゃんから詳しく聞いたがびっくりした。まさかルーちゃんにそこまでの能力があるとは。いや、出来るという話は聞いていたけど、水族館や動物園みたいな省スペースの環境再現かと思ったんだ……。まさか空間そのものを制御するレベルだったとは。


 そうだこっちも報告しないとな。


「俺も頑張ったんだぞ。ここがお風呂で、こっちがトイレね。どちらも蛇口を触れば水が出るし、パネルを触ればお湯も沸くぞ。」


「キットのカタログからそのまま設置しただけじゃないの」


「ぐっ……!まあまて、排水周りを見てくれ!排水管を流れた汚水は汚水槽に流れこみ、そこで汚れを分解された水は池に流れ込むように作ったんだ」


「ふうん、モルモルに綺麗にさせたらそのまま泉に流せばいいのにわざわざ面倒なことしたのね」


 なんも考えてないのか、考え方の違いか、そんなことを言うので言いたくないけどわざわざ説明する。


「汚水はさ、風呂の水やキッチンからのものだけとは限らないのはわかるかね、助手」


「誰が助手よ!汚水でしょ?水っていったらお風呂とキッチン以外になんかあるの?」


「やはり間抜けだったようだな助手よ!そこの小部屋から出る汚物はどうなると思うのかね!」


 ビシッとトイレを指さす。


「ああ、トイレもあったわね。だからなによ?人を助手呼ばわりしてまで偉そうに…」


「飲み水はどこから取る?」


「泉よね」


「助手は汚水をどこに流せば良いと言った?」


「泉よ。何回言わせるのよ」


「清浄化されたとはいえトイレから流れた水が好きなのかね?助手は!そういう趣味なのかね!」


「ああっ」


 やはりこいつはポンコツの気があるな。


 というわけで、ぐだぐだし始めたのでさっさとモルモル達に仕事を頼む。


「そこのダストシュートを滑っていくと汚水槽に到着するんだ。君たちはそこに住んで貰って、汚水やゴミを食べて欲しいんだけど…やってくれるかい?」


 言葉にするととんでもなく酷い事を言ってるような気がする。なまじこいつらに知性があるため複雑だ。


「われらと おまえたちの かちかんちがう われらから みれば すべて しょくじ」


「なるほど、そういう考え方をしてくれるのか。ありがたい」


「いしょくじゅう くれるおまえ あるじとひとしく えらい われら したがう」


「そうか!よろしく頼むぜ」


「うむ こんごとも よろしく」


 魔獣に言われるとグッとくるセリフだが、るーちゃんが喋っているのでなんだか微笑ましい。


 ダストシュートから入り、池から抜けられると伝えると「さんぽもできるな」と嬉しそうだった。


 知性があるから気を遣ってそういう仕様にしておいたが、正解だった。


「ユウー 肉とってきたぞー」


 庭に出てみるといつの間にか散歩に出かけていたらしいクロベエが大きめの鶏を引きずってきた。魔獣の森はまだちゃんと探索してないからヒッグホッグとフォルン位しか知らなかったが、こういうのも居るんだなあ。そのうちちゃんと探索してみないと。


 得意顔のクロベエをえらいえらいと褒めて鑑定する。


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 魔獣:レッグ・コッカ

 体長1m前後の鶏だが、発達した脚から繰り出されるキックは大木をも打ち倒す。

 アースワームの天敵であり、その溶解液をも無効化する固い羽根は寝具には向かないが武器の素材として優秀である。

 通常、筋肉が発達した鶏肉は食に向かないと言われているが、この魔獣は魔力で筋力を上げているため死後はとても柔らかで肉汁あふれる素晴らしい食材となる。

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 相変わらずの解説だ。しかし、どうも魔獣の森はヤバそうな魔獣ばかり住んでいるな。俺の転移先をここにしたのは嫌がらせとしか思えない。


 ちらりとパンを見やるが、ルーちゃんをクロベエに乗せきゃっきゃと庭を駆け回っている。


 解体し、肉と魔石、羽根を手に入れた。集落で手に入れた野菜もあるし今日は鶏鍋にしよう。


 ムックルと鶏の出汁が効いた塩ベースの鍋は皆に好評だったが、醤油や味噌が恋しい。


 集落産の野菜から種を作るとき豆類を改良して大豆的なものに出来ないかあとで試さないとな。


 そうだ、生産と言えば……!


「そうそう、忘れるところだったよ。明日湿地帯いこうよ」


「あん?なんでよ?もうモルモルには用がないでしょ?」


 やっぱ忘れてるよこの鳥女神


「メールで聞いたじゃんか、綿花的なの欲しいって」


「あーーー ふわふわの木か」


「そうそう、俺としたことが生えてるのに気づかなかったからな。今度こそきっちり取ってきて布事情を解消する」


「私に頼らない辺りは素直に褒めてあげるわ。あらールーちゃん、おくちについてるわよー」


 と、ハンカチを出して口を拭いてあげている。


 くそ、普通にそういうの出されるとやる気が失せていく……。


「まあまあ、そんな目で見ないの。ほら、ビールあげるから飲みなさいよ、ね?」


 ぐぬぬ…… しかし冷えた缶ビールだけはどうあがいても生産出来る気がしないのでありがたく貰う。

 

 ビールで喉を潤しながら明日以降の予定をぼんやりと考えた。


 湿地に行って「ふわふわの木」を取ってきて布製品の生産を可能にする。

 

 集落の野菜を品種改良できないか試す


 まずは手近なところでこんな感じだろう。


 ここの生活がある程度安定する頃には集落の方にもいってみないとな。その頃にはあそこにも何かしら変化が起きているだろうし。


 バタバタとルーちゃんがクロベエを追い回し、それをきゃっきゃとパンがはやし立てる。

 

 不本意ながら家庭って良いなあ、ってほっこりとした瞬間、なんとも微妙な笑みでこちらを見るパンと目が合って妙にモヤっとしたので今日はもう寝ることにする。


 はあ……

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