表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/577

第三十一話 一方その頃 パンちゃんは

「ぴょんぴょんぴょこぴょこー ぴょんぴょんー」


 ルーちゃんが歌いながらモルモル達と跳ねている……かわいい…


 肉体を持ったダンジョンコアが生まれたと知った時はびっくりした。だって私そういう設定してないもの。魔素がーとか、加護がーとかもっともらしいことを言って適当に誤魔化したけどそれだけじゃ納得がいかない部分もある。


 いろんな種族が居るとはいえ、ざっくりと人間族、魔族、魔獣くらいのカテゴライズしかしてないのよ?ダンジョンコアなんてダンジョンの自動生成装置として適当に組んだだけ。こんなに愛らしく歌ったり踊ったりすることはない。


「まーま どうしたの?」


「うん?なんでもないわよー さあ、もう少しぴょんぴょこしながら頑張ろうねー」


 はーかわい……


 こんなに可愛いとどうでも良くなってくるけど、一応ダンジョンは調べてみないとね。コアは心臓みたいなもので、本体はあくまでもダンジョン。そっちも調べてみないことにはわかるものも分からないわ。


 やがてアイツが作ってしまったダンジョンに到着した。


 アイツ、ユウはよりによって私の加護がかかった神具とも言えるスマホを狂ったように投げまくり本能のまま岩山を崩し、洞窟を作ってしまった。結果的にそこに魔素溜まりが出来てしまってダンジョンが生まれる条件は満たされていた。でも、それだけじゃただのダンジョンだったと思う。私の加護も何かしらの影響を与えているのは確かだけど、人型を取った理由がわからない。


 塩のダンジョン、ルーちゃんの本体に触れ経緯を探る。この空間に残された記憶、あの日のやり取りが流れ込んでくる。狂ったようにスマホを投げるこの姿はあんまり見ていたくないわね…ん?


 スマホから何か小さなものが外れ、飛んでいくのが見えた。


 意識を集中して行き先を探る。あった…


 小指の爪ほどのそれはmicroSDカードだった。


「あん?SDカードじゃないの。あー投げた衝撃で落ちたのね」


 ……まさかこれに原因があるとは考えたくないけど…一応謝っておくわね、ごめん!見るね!


 暇つぶしに使っているタブレットPCを取り出しSDカードを差し込む。カードは無事だったようでデータが表示された。


「ふむ、なにか色々入ってるわね……むっ!」


 そこに入っていたのはユウが描いた絵や資料として集めたイラストたちだった。


「うわー これはひどい……まあ、全年齢の健全絵しかないのは褒めてあげるわ」


 うーん、関係なさそうだけど一応…と、SDカードを手に握り加護の流れを探る。先にそうしなかったのは中身が気になったからでは絶対にない。絶対にだ!


 …と、私の加護を感じる。スマホに刺さっていたから一緒に加護を受けたのだろう。

 

 さらに加護の流れを追いかけるとひとつのデータに辿り着いた。


 そのデータに集中すると1枚の絵が浮かび上がった。

 

 それは「冬用設定画像」という名前が付いた絵で、青い髪をして水色の目をした少女だった。


「ルーちゃんじゃんこれ」


 細かい書き込みこそないものの、その絵は服を着ておらず、それで全裸だったのかと納得する。


 「なるほど……私がさらわな……連れてこなければ今頃は原稿に必死になっていたはず。この資料には思い入れが強く残っていてそれが私の加護に反応しダンジョンに影響を与えたわけか」


 多分そうだろうと思うが、実はよくわかっていない。自分で作った世界の事をすべて理解していたらこんなざまになんかなってないもーん。


「まーま!まーま!」


 気づけばルーちゃんが袖を引っ張って必死に呼んでいた。ああ!ごめんごめん!


「もるもるね、はやくだんじょんつくれーっていってるのよ」


「そうね、おうちを作ってあげましょうね。今日みんなで行ってきたところ、モルモルと会った場所覚えてる?」


「うん、おみずたくさんあるところ」

 

「そうね、あそこの事を強く思い浮かべて、ここにでてこーいって念じてごらん?」


「うん!ここにでてこーい!」


 ルーちゃん可愛い。声に出してる。


 と、グラリと地面が揺れダンジョンがまばゆく輝いた。


「きゃっ」


 ダンジョンってこうやって出来るものなの……?眩しいわね……。


 光は数秒続き、やがてそれが収まると目の前には広大な湿地帯が広がっていた。


「な…なによこれ…私が知ってるダンジョンとちがう…しゅごい…」


「わーい できた すごい?るーちゃんすごい?」


「凄い凄い!ルーちゃん凄い!えらいえらい!可愛い!」


 抱っこして頭をぐしぐしやるとキャッキャと喜ぶ。ああ…かわいい…


 モルモル達を見るとぴょんぴょこ跳ねて満足そうだ。


「モルモルたちね きにいったって ここにすむっていってる」


「ルーちゃん頑張ったもんねー えらいえらい!」


「きゃっきゃ」


 まだ時間がありそうだったのでルーちゃんと二人少しダンジョンを散策してみる。


 かなりしっかりと湿地が再現されていて、場所によってはかなりの水深がある沼地も見える。この様子ならいずれ沼地の魔獣もここに連れてこれるだろうな。


 せっかくこんな立派に作ったんだからそれらしくしないともったいないもんね。


 ルーちゃんを抱っこした時にステータスをチェックしてみたけど、しっかりと新しいスキルを覚えていた。今後新たな住人を連れてくるーってなった時、ユウの奴はきっと困るだろうけど、その時はギリギリまで内緒にしておこう。うふふ


 ……ユウといえばあいつ、どさくさに紛れて鉱石拾ってこいっていってたわね。うーん、この階層はもう湿地帯になっちゃったから外に出ないと無理ね。帰り道にでも適当に抽出して帰ればいっか。


「よーし、ルーちゃん、今日はもう帰るわよー。ユウも待ってるだろうしね」


「かえるー ユウのごはんたべるー まーまもいっしょに たべよねー」


 ユウの事はユウと呼び私の事はまーまと呼ぶ、これね!しっかりと教えてよかったわ!もしもあいつがパパ呼ばわりされてたらなんかこう……あれだもんね……。


 あいつがそこまで必死にパパアピールしなくてほんと良かったわ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ