第三十話 くらしあんぜん
モルモルたちを引き連れ家に帰ってきた。
ブンブン尻尾をふりふり歩くクロベエに乗るルーちゃんについてぴょんぴょこ跳ねついてくるモルモル達。その光景はとても可愛らしかった。
帰り道でそれとなく気になっていた固有ポップ地について聞いてみたが、
「おうちで きえたのだけ おうちでうまれるの」
ということだった。何か間違いがあって家の中で死んでしまっても即補充されるとかそんな感じみたいだ。呼びに行くのが面倒とかそういうこと言ってた気がするからルーちゃんなりに気を回したんだろうな。別に家の中で無限に湧くとかそういう感じではなさそうでほっとした。
ただ、パンの補足によるとリポップするのはあくまで同種の別個体であり、多少の記憶は継承しているものの同個体では無いとのことなので、気分的にもあまり死ぬようなことは避けたいところだ。
さて、家にどうぞーと思ったが、家の改築はこれからするところだ。
まだモルモルさんたちを招く場所が無いので、パンにダンジョンを作りに行くよう頼む。
「え?あたしが?いやよめんどくさい」
「誰もお前に作れとは言ってないぞ。作るのはルーちゃんだろ?ルーちゃん一人でダンジョンに行かせていいのか?よくないだろー?」
「よくない!あたりまえじゃないのこんな小さくてかわいい子!私の子に何かあったらどうしてくれるのよ!」
「だからそうならないよう一緒に行けっていったんでしょ、ほら俺は家を改築しなきゃないからさ、頼むよ。ね?」
女神様なら何かあっても助けられるでしょ、偉いんだし!と言うと得意な顔になって胸をどんと叩き
「わかってるじゃないの。そうよ、私はこの世界の神!偉いの!任せなさい!なんでもするわ!」
と、とっても嬉しそうだ。
「よっ!女神様!じゃあルーちゃんと一緒にダンジョン生成おねがいしゃす!あ!ついででいいんで鉱石なんかあったらいくつかもってきてください!おなしゃす!」
「あいよ!なんでもまかせて!」
よし、いくわよー!と張り切ってルーちゃんとスライムたちを引き連れダンジョンへ向かう女神。扱い方を間違えなければ便利に働いてくれるぜ。
さて、増築だ。まずは予定通りリビングとキッチンを拡張し寝室を作った。これは今までと同じ感覚なのでそれほど面倒ではなかった。
問題はトイレと風呂だ。
まずトイレにしろ風呂にしろ水回りを兎に角どうにかしないとひどい未来しか見えない。かといって、俺に水道屋の知識があると言えばNOだ!せいぜい蛇口を交換したことがあるくらいで図面なんて引けやしない。
なのでダメもとで製作ツールを立ち上げ、カタログを見てみる。
「なんだよあるじゃないか」
『水洗トイレ(魔道式)』『水道セット(魔道式)』『魔道式お風呂セット』
なんというか、あれだな、世界に文化をもたらせーみたいな感じで呼ばれた俺がこんな適当に楽をしていいのかって思い始めるレベルだな。
「まあいっか、楽だし」
割り切ることにした。
とはいえ、排水周りはどうしようもないのでダメもとで図面を引いていく。水道キットへ続く泉からの水道管。水道は台所にシンクと共にひとつ、トイレとお風呂にひとつずつ。そして汚水を流す排水管にそれが繋がる汚水槽、さらに念のためにそこで浄化された水が流れ込む池までの下水管を書いていく。
恐らくモルモルが汚水槽の時点で綺麗にしてくれるとは思うが、それを泉に流すのは気分的にアレだからな。
図面が引けたので先に開拓ツールで池を作ることにした。
直径10mくらいの穴を掘り均す。適当に岩や砂利なんかを配置。
どこからも流入のない池なので、水をどうするか、泉から引こうか迷ったが逆流するのも嫌なのでここにも水道を引くことにした。庭に水道置くようなもんだと思えば…ね?
ここまでやったら後はアプリにお任せだ。水道管や排水管などの設置は自分で操作する必要があったが、市長になる街づくりゲーの操作まんまだったので苦労はしなかった。
池の水道をひねるときちんと水が出てきた。妙に感動したが、水が溜まるまでじっと見てるのも馬鹿らしいので今のうちに小物をクラフトしておく。
お風呂で使う桶でしょ、石鹸でしょ、トイレで使う紙でしょ、後は後はそうだタオル!タオル無いとね…ええとタオル…
タオルの素材が無い……。
タオルを作るにはビッグモスの繭か、ふわふわの木の花という素材が必要だった。ビッグモスはまあデカい蚕さんだろう。ふわふわの木もきっとそのまんま綿花なんだと思う。
「なあ、クロベエさんよ」
「んなあー」
暇すぎて寝ているクロベエを起こし一応聞いてみる。
「デカいちょうちょみたいなモンスターか、ふわふわした木ってみたことある?」
「うーん みたことない でかいちょうちょなんておれが見てたら ユウにおしえてるよー」
そりゃそうか。となればメールだな
「女神様、ビッグモス、もしくはふわふわの木の素材が手に入る場所はこの辺にありますか」
『あるわよ?ビッグモスは居ないけどふわふわの木ならあるわ』
女神様ってつけたおかげか返信がめっちゃ早い。
「ほほう、愚かな僕は今まで見たことが無いのですが、それはどこにありますか」
『なんなのその、気持ち悪いわね…まあいいわ。ふわふわの木は湿地帯にあったじゃない』
「ええ……そんなものなかったけど…」
『ちゃんと見てなかったんでしょ、じゃあ教えてあげるからあとで行きましょう』
そんなの見た記憶が無いが、きっとあったんだろう。てかパンの反応がやたらいいな。きっとこれはルーちゃんのためにもなるんだろうと読んでの事だな。俺の事となるとこうはいかないからな!
布が作れるようになればタオルの他に着替えだって作ることができる。タオルも頼めば地球から取り寄せてくれそうな気もするが、パンのご機嫌取りをする日々はあまり考えたくはない。早々に手に入れねばいけないな。
19時ごろパンちゃんサイドのお話が上がります。