第二百七十七話 釣り大会の様子
さあ!ここに釣り大会の火蓋が切って落とされたぁ!なんて言いつつも、どうやって盛り上げよう……なんて頭を抱える私ユウなんですけども『たすけてラミェもぉん!』なんてお願いしてドローンとか作ってもらったところで色々アレ過ぎて使えないので、無難にウロウロしながら各チームの様子を見に行くことにしました。
まあ、将来的には?ドローン飛ばして観客席に設けたモニタに表示ー!とかやっても良いかも知れませんが、まだまだ当分はあまりやらかしすぎないようにしたいと思います。地上では。
そんなわけで、わわあ!っと散っていった各チーム!最初に目に入ったのはチームはじまりの村の面々です。
名将リットちゃんの指示で、3組がボートで湖に出ていき、残りった3人はひたすら陸を移動しながらポイントを探しているようですね。俗に言うランアンドガンとかいうやつだな。
ボート組に堅実な釣りをさせ、残ったネームドメンバー達で一発逆転を狙う。これは中々に賢い作戦。生物に詳しいシゲミチくんは昨日のうちにお魚の食性を研究し、本日は中層を主軸とした狙い方をしているみたいですね。
おおっと、キンタがかけた!生意気にもかけた!かけたが……小さい!これはキープするのが恥ずかしいサイズ!リリースか?リリースか!リリースをしたがらない!しかし、リットちゃんがーーー!逃がしたああああ!!!
「おい!リットなんで逃がしちゃうんだ?」
「いくら何でも、そんな小さなお魚を計量に出すのは嫌だよ」
「しかしだな、万が一1匹も釣れなかったりしたら……」
「お父さんの心はお魚のように小さいのかな?」
「ぐっ……」
辛辣ゥ!っと、眺めていてとっても面白いですが、彼らだけに構ってるわけにはいきませんね。彼らの健闘を祈りつつ次の場所へ行きましょう。
◆◇
入り江的な所にやって来ますと、ゆっくりゆらゆらと動くボートが目に入りました。乗っているのはバーグ氏、シズク、そしてマルリさんだ。
ゆっくりとボートを漕いでいるのはバーグ氏。どうやらエンジン代わりに酷使されている様子。まあ、残る二人は中々に強烈なキャラ達ですからね。薄めのバーグ氏には文句を言う事は出来ないんでしょう南無。
しかし、しかし。マルリさんの様子がおかしい。
ゆったりとボートに、いや、シズクの膝を枕にしてなんだか寝ているぞ。これは…………シズクも釣り竿を持っていない!一体このチームはなにをしているのか!?マルリさんのお昼寝のために入り江に来ているのか?
いや!マルリをさんをよく見ると……右手にロッドを握っている!釣りをしている最中、睡魔に負けたマルリさんの末路なのか?
っと、マルリさんの竿がしなる!しなった瞬間起きる!起きたマルリさん、巧みにロッドを操り、→左にロッドを煽り煽り、時には寝かしておおっと!これはでかい!デカいぞ!水面から上がったのは50cmありそうなバス的な魔魚だあ!
「ユウさん、あれはもしかして……」
「ええ、アレは恐らく伝説の釣法、寝釣りですね。ねーづーりー!ねーづーりー!のかけ声をと共に釣り場で寝転び、寝ているのではない、釣りをしているのだとアピールしつつ、糸を通して伝わると言う殺気を隠し、より自然な状態で魚たちを誘うという……」
「まさか本当にそんな釣法が……!」
いきなり俺の一人実況に混じってきたのはパンでした。こいつも暇なんだな……。聞けば子供達はルーちゃんの応援に向かったようで暇になったとのことでした。
暇って……お前ちゃんと保護者やれよな……。
……一番保護して監視をしておかないといけないのはこいつかも……。
取りあえず一匹居れば便利そうなので、女神も連れて回ることにしました。
「さあ、見えてきましたが……あれは何処のチームでしょうか、パンさん」
「あれは……特に面白みを感じないあたり、リューツー村のみなさんですね」
「なるほどー、あのモブ感はやはりそうでしたか。あ、何か掛かってますね」
「ニゴイですねー。ううん、やはり釣れる魔魚もモブ感あふれていると言う事でしょうか、流石です」
こいつも中々辛辣でおもろい事を言うな……。ちなみにこうやって喋っているのは暇つぶしのごっこ遊びではありません。頭に付けたカメラで撮影をしていまして、流石に一般公開は当分しませんけれど、後で関係者を集めて楽しむための記録映像を撮っているんです。
まあ、見せたらあちこちから怒りの声が飛んできそうですが、そこは許して貰いましょう。
映像的に面白みがないモブの方々を適当にスルーしつつ、暫くうろついているとメリル村の連中が見えてきました。
「おっと、あそこに居るのはヤスアキですねえ」
「親しみやすい名前で有名なヤスアキさんですねー。と言う事は、ああ、居ましたねラーファくんです」
「ラーファ君は風龍と言う事ですが、パンさん、これは何か有利になるという事はありますか?」
「そうですねー、人化を解いた瞬間、魚たちは驚いて深場に逃げてしまうでしょうね。戦闘的には有利ですが、釣りとなるとデメリットでしかありませんねえ」
「うーん、残念!まあ、楽しそうに魚釣りを楽しんでいるようなので良いことにしましょう」
「そうですね、ヤスアキとマナがまるで我が子のようにデレデレしているのが気になりますが……まあ、良いことにしましょう!」
こいつ、あそこの村とあんまり絡みが無いから結構適当なこと言ってるな。まあ、俺もあそこはあんまり……気付いたら色々と終わってた感あったし……っと、ヤスアキがこっちに手を振っているな。
「ヤスアキが手を振っていますねー。これは余裕の表情、もしかしたら既に良い獲物をつり上げているのかも知れませんね」
「そうですねー期待できそうです」
っく、適当すぎる!
しかし陸を歩くのも疲れてきたな。ルーちゃん達も湖に出ているみたいだし、俺達もそろそろボートで移動しよう。
ボックスからアルミボートを取り出し湖に浮かべます。魔導モーターで駆動するため、オールで漕いでる普通のボート達より水中への影響が抑えられます。これなら暢気にフラフラ観戦していてもあんまり邪魔にならない、というわけですねえ。
「こんな楽なのなんで他の参加者には使わせないのよ?」
「流石にこれは……オーバーテクノロジー過ぎるだろ……?」
「車走らせといて今更過ぎる……」
「それを言われると……そうなんだけど……でもなあ……」
そんなこんなで舞台は湖上に移ります。さあ、ルーちゃんはどうなっているのか!ルーちゃん達の活躍は!そして、ルーちゃんは今!
次回、ルーちゃん!お楽しみに!
「あんたルーちゃんの活躍が見たいだけでしょ」
「それ以外でなんのためにわざわざカメラ回すっつーんだよ」
おっとつい本音が。




