第二百七十話 暑くて辛い(私信)
キャッキャウフフと楽しむ少女とお姉さん。一見するとお姉さんが少女の相手をしてあげているような、保護者感あふれる光景に見えますが、実際のところは少女 (トータル250歳オーバー)とお姉さん(4歳)なのだからたまらない。
一定の年齢から成長が穏やかになる長寿妖怪、妖狐に転生した元高齢者のクソジジイと、元々成長が速くそんかわり短命だったウッサ・ロップから進化して寿命や成長速度なんかの色々がよくわからんことになっているウサ族のお姉さん、この良くわからんコンビ。
そんな中身をしっちゃあいるけれど、知っているから見えるものも有るってもんで、助平な爺が若い娘に手取り足取り釣りを教えている光景ってのは、その、なんだ!
羨ましいんだよ!!!
そんな自分でも良くわからない(わかっている)気持ちが爆発して、
「そうだ、俺には子供たちが居る!子供たちと!子供たちと楽しいレイクサイドキャンプをするんだ!」
…… …… …
そう、覚悟を決め、自分を奮い立たせてやってきたのがまあ、タルットのところ。タルットくん、僕と一緒にキャンプしようやあ……。
そんな、ユウさん……わい……心の準備が……という甘い一夜があったんや。ハフタルです。
「って、てめえ何途中から俺の日記乗っ取ってんだ!くそが!」
「いやあ、書いてる途中で気持ちよさそーにお昼寝始めたもんでちっといたずら心がわきましてん」
「……今後は一人の時かこ」
というわけで、ユウです。こうやってコツコツ書いてきた日記を乗っ取られる日が来るとは思いもしませんでしたわ。やはりタルットは悪!
とは言え、コイツラにキャンプ場のオジサンをやってもらわんことにゃーどうしようもないので、まあ少しくらいは目をつぶっておきましょう。
なんつうの?カッパが……カッパじゃないけど、まあカッパが営業してるキャンプ場って面白くない?
土俵とかさ、キュウリ畑とかあってさ(ああ、カッパらしいなあ)ってほっこりすんの。よくない?
まあ、ネタ分かるのは俺と亀、後は女神連中くらいだけれども……。
そんなわけでちゃっちゃかやっちゃいますか。
とは言えめんどくせえので、以前はじまりの村に作った管理棟と同じ物を履歴からロードして、若干手を加えて完成としたい。
追加するのは管理人達の部屋。1階のカウンター裏にタルットスペースを取り敢えず多めに10部屋追加。それぞれ個別の小屋を建てようかとも思ったけど、邪魔だし、管理しにくそうだし、腹立たしいしでそれはボツ。
こうして一つの建物にまとめておけば、互いに監視をしあってサボらず働いてくれることだろうと思う。
問題はコイツらに事務が務まるかどうかだが……、それはまあ、後でキレタルを1匹雇ってなんとかしよう。キレタルならモリタルやハフタルより賢いだろうし、それにウサ族をここに置くのはやっぱりこう……流石に良心が痛む……。
便利で都合が良い俺の下僕……もとい、優しい隣人ウサ族!そんな連中をタルットの巣に放り込んでいいはずがあるか!?否!
というわけで、後はもう流れでキャンプサイトを作りまして、さっさと完成させました。
はじまりの森と違うのは遊具の代わりに土俵とキュウリ畑が有るくらいか。後はレンタル品に釣具があったり、ルアーショップがあったりするくらい。釣具は貸すけどルアーは引っ掛けたら無くしちゃうからね。流石にこれは買い取ってもらいます。
とは言ってもまだそこに並べる釣具は出来てないわけで。これはイチャコラしてるだろう亀共にカツを入れてさっさと作ってもらわないとな。
ああ、俺が嫌いな言葉に「なるはや」というのがあります。なるべく早く?うるせえ!「今やれ」ってのをオブラートにくるんで遠回しにしてるだけじゃねえか!それならそうと言えよ!さり気なく略してんじゃねえ!って、にこやかな顔で「例の件、なるはやで!」って言われる度内申イライラしたもんです。
なので亀達にはしっかりと言ってやるのです。
『三日後、完成品を揃えろ。即座に工場に運ばせるから。納期を守れなかったら1時間につき大切な物が1つ消えていくからそのつもりでな』
と。
これくらい言っておかないとパプ美ちゃんは兎も角、亀のアホは動きませんからね。決してイチャイチャしてたのがイラッとしたからではありませんよ。決して。
さて、それはさておき、たちまちキャンプ場を作られたタルット達はと言えば。
「はえーさっすがユウさん。相変わらずでたらめですなあ」
「おめー俺がなんかやってるの見たことねーだろうがよ!」
「こういう人にはこう言っとけばいいかな感がしまして。後はアレですな『規格外だぜ!』とかそういう」
「いらん気遣いは良いから!いいか、お前らは今日からこの建物で仲良く暮らしつつ、遊びに来た客をもてなすんだ。言っとくけど仕事だからなこれは。俺が困るような真似をしたら……わかってるな?」
「へへえ、ユウさんにはほんまお世話になりっぱなしなんで、そこは裏切りませんから!」
「お前らにやってもらうのはキャンプ場の維持と客へのガイド、後は接客とかだけど、暇な時は裏のキウリ畑の世話したり、湖で釣りしたり好きにしてていいぞ」
「接客ということはお金が絡むようなお仕事もあるんですかね?」
「……何だお前急に素っぽくなるなよ……。金は当然絡むし、そっからお前らの給料も出る。街に行って買い物したりできるぞ、よかったな」
「よっしゃあ!」
「ちなみに金の管理は島から賢くなったタルットを1匹通わせるから……なんかやったら即バレるのでそのつもりでな」
「……よっしゃあ……」
ハフタルのテンションが一気にだだ下がりになったのが分かる。こいつ……!
ともあれ、これで下地は出来ました。めっちゃ不安が残るけど出来ました。
取り敢えず暫くの間はプレオープンとして宣伝はせずに練習がてらの営業をしてもらい、俺がGOサインを出したらオープンってことにしましょうかね。
さ、亀をしばきにいくか……。




