第二百六十五話 ナベゾコ村?そんなのダイジェストだ!
むっかしー むっかしー ゆっうさっまはー
たっすけった かっめにー のっせらっれてー
ってわけで、見事なまでに亀にノセられコハン村までの同行を許してしまったわけで。
ああ、はじまりの村から届けられた商品は大いに喜ばれ、特にお米は亀の一存で沢山仕入れる事になりまして、次回からは米を中心として生活雑貨等も含めて色々と幅広く購入する事にしたみたいです。
んでもってナベゾコからはモチコメやサクランボ、小豆などを取りあえず出荷して様子を見るそうな。ナベゾコにもなんか売り出せる物を考えないといけないかもしれんなあ。
観光で稼がせる気はあるんだけど、折角運送屋さんが通うようになるんだから勿体ないよな。
……と、本来であれば簡単な打ち合わせをした後、改めて後から来ると伝えて笑顔で亀ちゃんバイバイねーってするはずだったのですが……。
「ユウー!わしも上に行かせるのじゃ!」
「これ!亀!ワシが先じゃ!」
『コハン村フィッシングクラブ発起人の一人として視察はせねばならんのじゃ』
と、強引に魔導ハイ○ース(なんでも魔導ってつければいいってもんじゃねえ)に乗り込み、マルリさんと俺がいる監視スペースの取り合いをしています。
車の上というひどい位置に設けられたこの場所は、元々俺が街道を整備するため見晴らしが良い場所として選んだに過ぎなかったのですが、コハン村まではそれなりに整備が終わっているため、実はここにいる必要はありません。
ただ、ここって風がとても気持ちよくて……春のほんわかとした日差しが暖かくてですね……。
「マルリちゃんもっとつめるのじゃ。これではわしが狭い」
「ええい、亀がもう少しそっちにいけばよかろう」
……暑い……。
少女が2人わちゃわちゃと無理やりスペースに入り込んできたものだから、ぎゅうぎゅうと押されて暑いのなんの。
そしてまた、マルリさんのはまだマシなんだけど、亀の無駄にモフモフで多い尻尾がめちゃくちゃ暑苦しくて……
「のわーー!!!暑い!なんで2人そろって上にくるんだよ!」
「だって下は退屈なんじゃもん」
「風に当たりたい時もあるんじゃもん」
「「ねー」」
属性丸かぶりの爺さんと婆さんがすっかり仲良しになりよって……。
くっそ、羨ましくなんか無いぞ。
そんな具合に場所を強奪されたり、下に降りてカードゲームで子供たちにやられたり、パンを海戦ゲームで叩きのめしたりして過ごしているうちにコハン村に到着です。
やっぱあれね、舗装した道をブンブンと魔導車ではしると早いわね。特に俺たちが乗ってたやつは特別性で出力が高いため、先行して出発していた運送車に途中で追いついてしまいました。
そこからは俺たちが先導するような形でのっこらのっこら走ったわけですが、何事もなく平和なもんでした。
久々に見るコハン村は……うん、流石にそこまで変わんねえや。建物はポコポコと生えたかのように増えては居るけれど、何か目立って人がアホほど増えたとか、何か改革が会ったとかそういう気配は無いですな。
流石に1週間くらいじゃなんもないか。
さて、配送車ですが……、通常であればこのまま村長の案内で倉庫に荷物を入れ、次回の注文を聞いた上でグッバイとなるわけなんですが、このコハン村にはまだ村長らしいものはいませんので……まあこまったこまった。
こまったので、とりあえず作っといてもらった倉庫にラミィとその配下を呼び出しまして、配下を村長代理として手続きをさせました。
いやあ、ウサ族ってホント便利ですねえ……。
「焦ったっすよー。ユウさんのことだから絶対私を村長代理にするんじゃないかって読んでたっす」
「はっはっは。お前見たいな危険物質をいつまでも地上に置くかってんだ」
「その言いぐさはそれはそれで辛いっす……で、こいつを変わりにイケニエにしたってわけっすか」
イケニエって……まあ、そのとおりなんだけど。この怪しげな紫色のウサギ……こいつは当分ここの村長として置いとこう。ここの村長候補達、見どころがある連中はリューツー村の候補達同様に後ほど例の学園に送りつける予定ですので、奴らが帰ってくるまでは仕方なくこのウサギに任せるほかありません。
決して面倒だからとか、いっそもうずっとウサ族で良くね?とか考えていますん。
「あー、そこの紫色!お前は今日から『パプ子』だ。どっかで『パプ美ちゃん』を見つけてつるむことを許可しよう。
「えええ!名前いただけたんですか!言ってる意味はわかりませんが恐縮です!」
「はっはっはというわけで早速運送屋から荷物を受け取ってサインと発注をすませろ」
「えっ?えっ?えっ?いきなりそんな事言われてもわかりませんよ!ちょ、え?マニュアル?読みながらやれ?えっえっええええー!?」
ふう……いい具合に押し付けることが出来た……。
運送周りの説明をそう何度も何度もしてたまるか!マニュアル作ったんだから読んで頑張ってほしい。
涙目で運送屋に指示をするパプ子を暖かな目で見守っていると、ちょいちょいと俺の袖を引く亀がいた。
「なんだ?可愛いけど中身が亀なの知ってる俺には虚しいだけだぞ?」
「何妙な事言ってるんじゃ!ほれ!湖じゃ!はやく見に行かせるのじゃ!」
そうだったそうだった!俺の貴重な息抜き……もとい、コハン村の貴重な産業候補!
釣り事業に向けて亀と視察をするんだった。
「つーわけで、ちょっと我々は視察に行ってくるから、皆はゆっくり村を見て回っているように」
と、言ったところで気づきました、だあれもいねえ。
「お子さん達ならパンさんに連れられてさっさと言っちゃいましたよ」
くっ……




