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第二百五十四話 雑に行く

状態異常から立ち直った住民たち。しかし、長きに渡り集落に籠もっていたため体力は万全ではなく、まずはその回復に努めることになった!


 次回、超愚者女神 リパンニェル『餌付けの果に』


 おたのしみに――


 って、次回予告しちゃいましたが、ユウです。


 語るのも面倒なのでざっくりと省いて説明しますと、あれからもう2週間位、時がたっちゃったんですねえ。

 

 その間、何をしていたかって遊んでたわけじゃあなくって、散り散りに散らばってる周囲の集落を探してたんですわ。


 あるわあるわ、全部で5集落!マーナちゃんとこの【怯えの村】(仮)と合わせて5集落ですよ。

 これまたざっくりと数えた感じでは、全部で200人前後の人口です。


 長く伝統を護ってきた矜持もあるでしょうし、断られるかと思いますが、集落の統合をお話してみようかなあって思ってるわけですよ。


 そもそも、この土地で集落が細かく別れている理由は食糧難に備えてのことだったはずです。


 ある程度の人口を超えたら、狩場がかぶらない場所に新たな集落を作り、何人かをそこに移住させる。

 長年これを繰り返し、この春の大地北部で細々と暮らしていたわけです。


 であれば、食糧難を解消してやったらどうでしょう。


 先祖代々継いできた土地という思い入れもあると思いますので、その辺りの説得が必要だと思いますが、初期の『はじまりの村』よりかなり遅れた暮らし、それこそ縄文時代のような暮らしをしているので、集落を統合して宿場町(仮)で暮らすようになれば安定した生活が出来るようになるでしょう。


 まあ、無理強いはしない。


 来るなら歓迎するし、元の土地で頑張る!ってならそれはそれでフォローするし。

 俺たちは文化を壊したいわけじゃあないからな。


 ……メリル村は嫌な事件だったね……。



 というわけで、各集落に魔導バスを向かわせ、目下整備中の宿場町に各集落10人ずつさらって……ご招待することにしました。


 各集落には予め餌をバラマキ……食糧援助をして顔を売っておいたので、迎えに行ったウサ族が俺の名前を出せばホイホイと釣られるわけですよ。


 するとどうだ、たちまち人を満載にしたバスが3台、とことことやってくるって寸法で。


 キョロキョロとしながらゾロゾロ降りてくる人たちがお約束のセリフをそれぞれ言ってますわ。

『な、なんだこれは家か?』とか『どうやって作ったんだ?』とか異世界の人を舐めてますわってくらいベタベタな無知系リアクションをしてるわけですけれども、事実なのだから仕方がない。


 正直俺もここまで文明レベルの格差がある集落があるとは思ってませんでしたからね、家を見せただけでこんなリアクションが返ってくる日が来るとは思いませんでしたよ。


 メリル村は別として。


 とりあえず、お約束としまして、適当に見学をしてもらいまして


『わあ!水が家の中に湧くぞ!』とか『火がないのにお湯が沸くぞ!』とかのコメントも無事いただきまして、トドメとばかりに案内した畑で豊かに実る野菜たちを見せ、その場で味見会を開催。


『これがヤサイ……。今までやってきた畑は何だったんだ……』


 と、自信を刈り取りつつ新たな可能性に気づかせて上げました。


 ……こう言ってしまうとひどく悪いことをしているような気分になるが、まあ気のせいだろう。


 さて、この土地。ひとつ問題があるとすれば、肉の入手方法です。


 安定した動物性蛋白質はほしい所ですが、この辺りには小動物(小型魔獣)しか居ない。居るのは可愛い可愛いツノウサギちゃんや、イタチ的なものくらいです。


 せめてもう少し大きな魔獣が居れば狩りのノウハウを教え込めばなんとかできそうなもんですが……。


 と、ここで妙案が。


 しかしそれを実現するには少々、方々に相談をして協力を仰がねばなりませんので、今直ぐのお話ではありません。なので取り敢えず、田畑を主軸とした生活を基盤として彼らに住んでくれるか交渉をしてみることにしました。


 広場に人々を集めまして、もうすっかり慣れてしまった演説を始めます。


『えー、ご存知の方はこんにちは、そうじゃない方もこんにちは!わたくし、ユウが何者かと言いますと、皆さんの生活をより良くするために方々を巡り、新たな狩りの技術を伝えたり、家を整備したりと、なんで俺こんな事やってんだろ……って言う活動をしているものです』


 我ながらなんだか詐欺師みたいだ……。


『今回お集まりになっていただいた皆様にはご覧になっていただきましたが、ここに新たな村を作り、あちこち見て歩く人達の休憩地として使ってもらおうと考えています』


 説明が面倒になってきました!


『ぶっちゃけてしまえば、貴方方に元居る集落を捨て、ここに皆で移り住んで新たな生活をしてもらおうと思ってるんですが、どうでしょうか?そりゃ代々受け継いできた土地を捨てる覚悟というものもあります。愛着だってあるでしょう。そういう方は無理に来ていただかなくても良いのです。


 我こそは、我こそはここに住むぞ!ここに住んで新たな人生を歩んでやるぞ!

 そういう方は、立ち上がって下さい』


 さあ!と、声を掛けると皆立ち上がりましたよ。


『あれ?みんな立っちゃったの?』


「こんなの見せられたら今更帰れねえよー!」

「いつからここで暮らせるのー?」

「今日からじゃだめか!?」

「なあ、今直ぐ家族を迎えに行っていいか?」


『今の土地に思い入れとかそういうのは……?』


「「「あるわけないだろー!」」」


 えぇ……。


 取り敢えずみんな居るからそこにいただけで、なんも思い入れは無いとのことでした。


 そもそも、家族が離れ離れにならないほど困窮した暮らしはもういやだ!ってことで、まあそりゃそうかっていう。


 ううん、なんだか雑な感じになっちゃいましたが、まあいいか……。


 取り敢えず、村のことはもうウサ族に丸投げしちゃって、俺は動物性蛋白質の問題にとりかかろう。

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