第二百五十一話 水源
配下のウサギ共に他人のごとくビビられて軽くショックを受けたわたくしユウ。
ウサギも鳥も同じく「1羽2羽」と数えるとは言え、こいつらも鶏頭だったのか?俺たちの関係は底までだったのか?そう思いましたが、ふとした思いつきで鑑定をかけてみれば、まあまあ、見事に『状態異常【恐慌状態】(超ひとみしり)」
これはこれは……穏やかじゃないなと、ティーラを突入させ、スゥちゃんから出してもらいストレージにストックしておいた『リパンニェルの聖水』で淹れたお茶を入れた所、思った通り見事大復活。
とりあえずウサギ共から事情聴取しよう!そういった具合でありまして。
「おう、こら!俺とティーラが居ない間に何をしていたか包み隠さず話せ!」
「包むも何も隠すことなんてなんも無いっすけど……まああれっすわ。取り敢えずご飯でもたべましょかーと、支度をしたっすよ」
今日のメニューは……カレーだな。この土地の気候、今後の開拓用にと倉庫に出してやった食材達、そしてウサ族達の表情から推測するとカレーで間違いない。
これが俺の推理力だ。
「ラミィちゃんたち昨日はカレーだったんだね!まだお部屋に匂いが残ってるよ」
はい。カレーの香りがめっちゃ残ってました。
カレーの食材はここに着くまで俺がスマホのストレージに格納して運んできたもので、特に何かバッドステータスが付与されるような悪い物は入っていない……はず。
となれば空気感染?いやいや、ティーラはともかく俺が平気だ。俺も多少は強化されているけれど、状態異常無効とかそういった便利なスキルは付与されていない。あいつがケチったからだ。
まあ、そもそも状態異常無効とかつけられた日にゃあ酒に酔うこともできなくなるからこっちから願い下げだけどね。
さてさて、そうなると犯人はどこからきたの?ってなるわけですが、だんだんとうっすらとわかってきましたよ。
俺が置いていったのは食材と、最低限の家具や道具くらいのもの。後必要なものがアレば現地調達したまえ、君達にとってそれくらい軽いだろ?むしろ何もなしで放り出してもなんとか出来るまであるだろ?
てなもんで一晩放置したわけですが、その際どこからか状態異常の素をホイホイと取り込んでしまったと。さあ、原因は何だ?一体誰がこんなひどいことを!謎は深まるばかりだ!
「ねえ、これ悪いのお水だよね?どのお水を使ったの?」
おっとお……? うちのローティーン探偵がなにか閃いたようですぞお。
「水だって?」
「そうだよ、父さん。スゥちゃんのお水は父さんが居ないと出せないでしょ?カレーを作るのにはお水が必要だし、ラミィちゃんたち、お外で汲んだんじゃないかなって」
なるほど、そう来たか……ていうかそうか、それしかないよな……知ってたよ、うん知ってた!
「ええと、水はですね、外に綺麗な小川があったのでそこから……」
ラミィに案内をさせ、その小川とやらの所に向かいますと、ああ、確かに小川がありますね。見た目はなにかに汚染されているようには見えない。
キラキラと陽光を反射する水は綺麗に透きとおっていて、ユラユラと水になびく水草が白い砂と相まってとても美味そうにみえますね。
が!
汲んだお水を鑑定してみるとこれがまたすごい。
【小川の水 -5】
非常に清浄で美味い水。
効果:潤い+20 状態異常【恐慌状態】付与
手抜き過ぎるテキストと効果が矛盾している。名前をよく見ればマイナス補正がかかっているわけで、そこで何か汚染されているということを現しているのだろう。
この小川は集落がある方向から流れてきている、つまりは村側が上流である。
何らかの原因で汚染され、マイナス補正がかかっているというならば、その原因を探り対処すれば集落も復活するのではないでしょうか。
てなわけで、集落……はスルーして……だって、寄ったところでまたビクビクされるんだぜ?めんどくさいったらもう。
スルーして、どんどこ上流へ上流へ。今回はラミィもつれてやってきました。やがて水源と思われる大きな泉が見えてまいりました。
何処から出したのか、ビーカーに水をくんだラミィがキリっとした顔でそれを俺に差し出します。
「うむ、やはりこれは汚染されているな」
手早く鑑定をしてみましたが、やはりここの水も汚染されている、つまりは水源の汚染原因を探り、なんとかしないとどうもこうもないわけで。
というわけで、ちょっと周囲を調査してみることにしましょう。
白い砂地に揺らめく水草、これは小川と同じもので、どうやらここから流れた砂や草が小川に影響を及ぼしているようです。なので、念のために調査をしてみましたが、結果は白。普通の砂に普通の水草でした。
強いて言えば白い花が咲いて綺麗!ってことがわかったくらい。
ううん、これがTRPGならどうでもいい場所に目星をしたりしてKPを牽制してヒントを引きずり出すのですが、これは現実……ッ!
と、ふと泉に目星をつかってみたところ、なんと何かが落ちているなあということがわかりました。
幸い、枝でも突っ込めば届きそうな位置だったため、近くに寄って見てみるとそれは何か、怪しげなコインで、何だコインかよと手を伸ばして拾いかけました……が!
ちょっと待てと。こんな所にコイン?ありえない。
この世界において硬貨というものは俺が作るまで存在しなかったはずです。
そしてこの泉、この水源から流れる水の影響で集落の人々やうちの家畜共がどえらい目に遭っているわけです。
それもこれも、何らかの原因で水源が汚染されているのが原因である。
となれば……どう考えても怪しいこのメダル、素手で触るわけにはいきません。ティーラの加護で汚染水に触れたくらいじゃ状態異常をくらわないようにはなっていますが、馬鹿の加護のように強烈な加護ではないので呪具やなにかの類では太刀打ちできないことでしょう。
「難しい顔してなにしてんすか?おや、こんな所にお金が……」
「あっ!」
止める間もなく、ラミィが泉に手を突っ込み、謎の硬貨を拾ってしまいます。これではまるでこの役目を果たさせるために連れてきたみたいじゃないか!
「ヒィイヤアアアアアアアアアア!!!!!!」
泉にラミィの叫び声が響く。
「ラミィイイイイイ!!!」
「冷たアアアアアイ!」
そっちかよ!




