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第二十五話 動物と魔獣

 長いようで短かった出張販売も終わり、今日は家に帰る日だ。


 立つ鳥跡を濁さずって事で、朝からキャンプ道具の片付けをしている……といっても、テントや食器などをアイテムボックスに突っ込むだけなので楽ちんだ。


 ここの人達には色々見せちゃったし、もう今更だしいいかーと、荷車もしまってしまう。いやほんと、これ別にいらなかったよなあ……。持って帰っても邪魔だし、集落で使ってもらえばいいかと考えた所で、家畜の姿が見えなかった事を思い出す。


 ……恐らく動物を飼育するという概念すら無いんだろうな、この他の異世界という物を小馬鹿にしたような世界にはさ!


 ん? 動物? ……そう言えばこっちきて純粋な動物という物を見たことがない気がする……。


 片付けの邪魔だからと、テントから叩き出しておいた女神様を探してみれば、広場の脇に横になり、寝ぼけ眼で尻をかいている。


 このふざけた世界の事は、ふざけた創造神に聞くに限る。というわけで、めが…パンちゃ…いや…もう呼び捨てでいいや…パンに聞いてみようと足で尻を軽く小突き、薄れかけている意識を覚醒させてやる。


「なあ、パンよ。この世界には動物は存在するのか?」


「ふえ……? どうぶつ? どうぶつならビスケットがいいなあ」


「なに寝ぼけたこと言ってんだ! まだ頭がスッキリしないならこれでも飲んで目を覚ませ!」


 水桶で冷やしておいたお茶を無理やり飲ませ、手に肉サンドを握らせるとようやく覚醒した。全く俺は飼育員さんじゃねえんだぞ。


「ふう……で、動物の事だけど……それがねー居ないのよ」


「居ない」

 

「うん、この世界さ、人間と言われる者を含めて全ての生命が魔力を持ってるのね。多かれ少なかれ。」


「生意気にも魔法って概念が存在しているくらいだしな」


「でね、人間を含めた殆どの生命体には魔力を蓄える器官として魔石があるわけよ」


「異世界あるあるやね」


「その魔石があるとこう……超常的な能力を発揮することが出来るってわけで、例えばそこらのタヌキさんなんかも「魔獣」と呼ばれる存在になるわけじゃん?

 でもさ、スキルや魔術を使える以外はあんまし動物と変わらないわけじゃん? ウサギなら多分ツノが有るかないかくらいのもんよ? だからさ、わざわざ魔獣とわけてただの動物作らなくてもいいかな?って……ね?」


「いやその理屈はおかしい。じゃあ人だって魔族って事になるじゃんか」


「いやいや、魔族は別に居るのよ。魔力も人と比べてめっちゃ高いし、もう見た目からしてあれよ? あー君ダンジョンに居ますよねえって姿してるし。めっちゃ美人だけどよく見たら身体が蛇ーなんて娘もいるんだから」


「あーラミア的な」


「そうそう。ちなみにこっちの世界に馴染ませるためクロベエちゃんは見た目で分かるとおりだけど、あんたにも魔石埋め込んでおいたからね。それでもこの世界の人間が魔族だーっていうならあんたも魔族よ」


「恐ろしいことをさらっと白状しよった……まあ、魔力があるならあるなりに便利に使えそうだからいいけどな」


 多少問題発言もあったが、パンなりにきちんと説明してくれた。つうか、面倒だから魔獣と分けて動物を作らなかったって? 後先考えない乱暴な神様が居たもんだ。分かっちゃ居ないようだし、それがもたらす問題について突っ込んでやろう。


「ねえねえ女神様。文明の発達にはある程度生活の効率化が必要だと思うんだよね。例えばさ、身近な所だと畑を耕すのをもっと楽にしたりさ、移動をもっと楽にしたり、最近の例だと狩りに使う道具を向上させるぞーとかさ」


「そうね。それが出来ない人たちばかりだからあんた呼んだんじゃないのよ。でもでも、狩り技術は上がったから嬉しかったわよー。やるじゃない! このこの!」


「うん、まあ、それは良かったと思う。でもさ、俺は不思議なんだよ。あれだけ恵まれた土壌を持ってるのに畑の規模事態はあんまり大きくなかった。どうしてだと思う?」


「そりゃでっかい畑って耕すの大変じゃ無い? 農家の数も多くないしさ、手を広げられないのよ」


「そうだね、人の力だけだとそうなるよね。だからさ、地球の昔の人たちは牛や馬を使って賄っていたんだよ。馬力って言葉あるだろ? 馬ってさ、そんくらい頼りになる身近なパートナーだったわけだ」


「うん。うん?」


「それとさ、思ったんだけど酪農もこっちだときっと無いよね? そりゃこの世界にもどっかに牛みたいな魔獣も居るんだろうけど、全身が岩に覆われていて酷く獰猛だーとか、角を飛ばして攻撃してくるとか、どうせそんな感じの物騒な連中なんでしょ? 捕まえて家畜になんて出来ないよね?普通の農民がさ」


「あっ……で、でも一部……おとなしめの魔獣もいるし? 羊さんみたいのとか……」


「ふうん? まあ、それはいいや。でさ、狩りだってさ、魔獣の他に動物も居ればさ、ギリギリの戦いなれど大型の動物も狩れるようになってさ、そっから研究が始まってさ、俺が提案するまでも無く改良型の矢にたどり着いてたんじゃ無いかなあ?」


「うん? まあ、それはね?」


「流石にさ、クマとラウベーラ、イノシシとヒッグホッグじゃ大きな隔たりがあるよね……。

 大型動物に該当する魔獣達が軒並み矢が通らない狂ったバランスだけどさ、それってトライアンドエラーで少しずつ進むことすら出来なかったんじゃ無いかな…?

 小型の魔獣なら矢が通るしこれでいっかーってなるんじゃ無いかな……」


「あっ あっ あっ……」


 ようやく気づいたか駄女神め。


 魔獣は危ない、狩って肉にするべき生き物。大型? 無理無理! 矢が通らないし、近寄ったら死んじゃうよ! その点小型はいいよね! 矢は通るし、近づいて戦っても多少怪我する程度で済んじゃうし!


 デカかろうが、小さかろうが肉には変わりは無い! そうだ! 小さなウサギとか鳥を狩って生活をしよう!


 ……そういう考えが定着してしまっているのがこの世界だ。もしかしたら過去に魔獣の飼い慣らしを試そうと思った人も居るかもしれないけど、現状を見るに成功した様子は無い。

 

「念のために聞くけど、家畜化って普通の人間がやってやれないことは無いんだよな?」


「ええ、さっきも言ったけど魔獣と言うだけで中には穏やかなものもいるわ。何も全部の魔獣が物騒な攻撃してくるわけじゃ無いのよ? 魔力が少ないから害も少ないしね」


 居るなら居るで集落の近くに配置しろよ……多分何も考えずに適当に配置したんだろうな……まあ、今は置いといて話を聞こう。


「それは俺がよく知ってる家畜らしい感じのもいるってことでいいのかな?」


「そうね、ちょっと変わったのも居るけど、ちゃんと牛みたいのと馬っぽいのもちゃんと居るわよ。その手の魔獣は群れで移動してるから固定された生息地というのは無いけれど、草原を探せばそのうち見つかるわよ」


 もしも他の部分が発達、例えば魔法が発達して機械的な道具が要らないーとか、蒸気機関が発達して自動化されているーとかなら使役動物は要らないと思うんだけど、そういうのが発達する以前の世界だからね。矢もそうだったけど、工夫すると大幅に楽に出来る、楽が出来ると生活が大きく変わる!楽をするために生活を頑張るぞ!って住民たちが自主的に動く流れに持って行きたいよなあ。



 しかし、ほんと酷いボタンの掛け違いをしたような世界だよな……。こっからどうしていくか、考えるだけで頭がいたいよ。


 

魔獣と動物のお話を一応しておこうと思って本編とのつなぎがてら書きました。

続けて本編の続きもどうぞ。

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