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第二十四話 謝肉祭その3

「では、肉に乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 開会の挨拶を頼まれたのでノリでいってみたが、戸惑わず乗って来たあたり乾杯はあるんだな。


「えー、みなさんが今日食べているのは狩人達が狩ってきた獲物です!」


 うおおー!と盛り上がる会場。


「ユウがラウベーラを倒し森を取り返し、そして良く当たる矢を作ってくれたおかげだ!これからは前よりたくさん肉を持って帰れるぞ!」


 さらに盛り上がる会場。最高潮にあったまったここで余興の前フリをする。


「彼らはリブッカにも果敢に挑みました!狩人たちの矢はリブッカをハチの巣にし、やったか!と思いました。が、今の弓では矢は浅いところで止まり致命傷にはならず、残念ながら今回は狩ることができませんでした」


「そうそう昨日狩ってきたリブッカはな、ユウさんが魔法パンチで殴り飛ばしたんだぜ……」


「すげー!あの身体でかよ!弓いらねえってすげーな!」


「ごほん!しかし!俺は狩人のみんななら、いずれ狩れると思っている!」


「まじかよ!無理だろ?矢が通らねーんだぞ」


「そういうと思ってさ、余興代わりに用意したんだけど、ちょっとみんなこっちみてくれるかい」


 杭の方に集まってもらいボックスから秘密兵器を取り出す。


 ボウガンだ。


「これは弓を使いやすくし、そして威力を高めたものだ。こうやって矢をつがえて…こうして弦を引いて……」


「この引金を引くと!」


 バシュン、と音を立てて矢が飛んでいく。飛ぶ先は用意しておいた杭だ。


 バスッ


 深々と杭に刺さる矢にざわめく会場。


「うおおおおおお!なんて威力だよ!」


「ユウさんってパンチの人かと思ったが、弓の腕前も凄えな!ど真ん中だぜ!」


 隣の杭を狙ったんだって事は内緒にしておこう。


「いずれこれを大物用として狩人に使って貰いたいと思ってるんだけど、今までの弓と大分勝手が違う。だからまずは弓の腕が一番良いキンタに渡そうと思う。」


「キンタさんか、なら文句ないな!」


「俺でいいのか?」


「ああ、後で簡単に使い方を教えるから慣れたらみんなにも教えてあげてくれ」


 そして、俺が次回来る時まで実戦では使わないで欲しい事を伝える。慣れないボウガンで何かあっても困るし、矢も専用のものになるので量産できないと使いにくいだろうと思ったんだ。俺が来るまでみんなで練習して、使える人を増やしておいてくれ、そう伝えた。


 そして


「ボウガンはもう一つあるんだ。ザック、こっちに来てくれ」


 ザックはニート呼ばわりされてる若者の1人でやたら手先が器用らしい。もしかしたらボウガンの構造を理解して量産のとっかかりを作れるかもしれないと期待してたのだ。


「これを俺に?な、なんでですか?」


 そう言いつつ、ボウガンから目を離さない


「それさ、壊してもいいから分解して構造……どんな風に作られてるか調べて欲しいんだ。俺の作り方は特殊なんでな、俺以外の人でも作れるようにするためにはここの人が誰かが調べないといけない。ザック、たのめるかい?」


「俺でよければ!がんばります!」


 製造アプリで紙と筆記用具を作る。


「ザック、これを自由に使っていい。そのボウガンの構造をこの紙に書き写して鍛冶屋なんかが部品を作る時の参考になるものを書いて欲しいんだ。設計図、っていうんだけどな」


「はい!わかりました!」


「えっと鍛冶屋さん……名前はええと……」


「ダンだ、ダンでいいぞ」


「だんだ……いえ、ダン、ザックが調べ終わったらこの紙……設計図を持っていくと思う。金属の部品があるからそれを作るのを手伝ってあげて欲しい」


「おう!まかせろ!新しいものを作るなんて無いからな!腕がなるぜ!」


 てことで、後は……


「えっと、キンタ」


「なんだ?」


「彼らは狩人のため、広い意味で言えばみんなのために新しい武器、ボウガンを作ってくれることになったわけだ」


「そうだな、どうなるかわからんが期待しているぞ」


「でさ、それも立派な仕事だろ?彼らに狩でとった肉を分けてあげて欲しい」


「勿論だ!ザック!ダン!期待しててくれ!」


 ニヤリと笑うダンと耳に入っていないザック。すでにボウガンに夢中である。


 女神……パンちゃんはどうしてるかと探すと肉に夢中で奥様方の質問を完全スルーしている。肉に救われてるなー。



 よし、用も済んだし俺も肉を食うか!

 

 ボックスからもどんどん肉を追加して謝肉祭は遅くまで盛り上がった。



  ◇



 夜も更け、夜空を眺めながら今後の予定を考えていた。


 パンちゃんは、というと、「急に消えたら変に思われるでしょ?」と、俺のテントで丸くなって寝ていた。こりゃまた明日奥様方がうるせーな。


 まあさ、そりゃね?女神だけあってボロを出さずに居れば美人、結構好みの顔をしてるのでこういう狭いところに2人となると変な感情が起きそうなもんなんだよ。ただね?ほら、肉の食いすぎで膨れた腹を出しててさ、それをポリポリと掻きながら半笑いで寝ているじゃん?盛り上がるものも盛り上がるわけねーよ。


 あーわかった。こりゃ従姉妹のねーちゃんって感じだな!


 なんだかんだで1週間くらい家を空けてしまった。明日には帰って家の様子を見なくちゃいけないな。


 帰ったら畑を作ったり、 素材を集めたり……後はこう、もっと楽に暮らせる方法考えたりしよう。


 そして肉が溜まった頃、またここの様子を見に来るか。きっとみんな良い顔になっている事だろう。ボウガンの使い方を覚えた狩人たち、ボウガンの複製品も出来ているかもしれない。次は実践か……リブッカを狩れたら喜ぶだろうなあ……。


 プスー


星を見ながらいい雰囲気で素敵な未来予想に耽っているところだというのに屁をする女神。


こいつほんと……ほんと……!!!!


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