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第二百二十四話 めんどうなことに 

 助けた感じになった亀に集られて亀神宮に行ってきたユウです!亀の集りは継続中で、結局『はじまりの村』までついてきやがりました。


 まあ、遅かれ早かれ互いに見学会的な催しはする予定でしたので、『ナベゾコ村の村長』が先行して下見に来たと思えば良いかなってことで、面倒事が起こらない範囲で色々と見学させてやろうと思います。


「うおおお!なんじゃこれは!村じゃなくて街ではないか!」


 北門をくぐり、住宅地に入ると速くも亀が興奮し始めました。ワハハここはまだ住宅地!ウサ族の住宅地!まあボチボチとお店は並んでるけど、商業エリアはまだ先じゃ!


 やれ、道が舗装されているだの、やれウサギのお姉ちゃんがいっぱいいるだのやかましいですわこの亀。


「なんじゃなんじゃ?お前が作った村はウサギ族の村なのか?けしからん!」


「甘いな亀ちゃん。ここはウサ族達が住む地区ではあるが、本来ウサ族の村は別な場所にあるんだ。この村で仕事をしてもらうため住んでもらっているのさ」


 そう説明をすると亀はめちゃんこびっくりします。まあそうよね。ウサ族地区だけでも今や人口200人は優に超えてるんじゃないでしょうか?俺が目を離したスキにウサ族って増えてますからね。


 まあ、ここは別にウサ族以外住めないというわけではないので、チラホラと別種の住人たちの姿も見られますが。


 さて、そんな説明をされた亀は俺にさらなる質問をしてきます。それはある意味して欲しかった質問であり、答えるのが辛い質問でありました。


「であればユウよ。この村の主要な人種はどんなんじゃ?徐々にヒューマン的な姿が増えてきた辺り、やはりヒューマンの村なのかの?」


 くっそ、亀のくせに「ヒューマン」ときましたか。『人間族』の中に「ドワーフ」「エルフ」「耳」「龍」「鳥」「犬」「青鬼」がザックリとふんわりと収まってる謎世界観なので、そう呼んだほうが確かにしっくりきますが、なんつうか中身爺からその言葉が出るとアレですよね。


「この村の主要な人種……というか、元はここエルフの集落だったんだよ」


「ななななな、な!な!え!え!エルフ!エルフきた!はいきたよエルフ!勝つる!エルフ来た勝つる!これでワシの夢がまた一つ!」


 くっそ、なんだか自分を見ているようで嫌な気分になりますね。これが自己嫌悪ってやつですかね?見た目はともかく、中身を想像しちゃうと非常に残念なリアクションですが、このあと理解してしまうであろう現実に直面した時、亀がどんな顔をするのか楽しみですよねえ。


 やがて北の住宅地が終わり中央広場が見えてまいりました。この広場は当初、村の北門があった場所ですが、現在はこの広場を中心に東西南北にそれぞれ区画された大きな村になっています。


 牧歌的でしょっぱい集落時代を思えば何倍になったんだって感じですな。


 広場の南西にキンタの家……つまりは役場があり、南東には俺達の別荘があります。集落時代に仮設住宅を建てて滞在したのをそのまま家にした感じですね。


 キンタに挨拶は……まあ、後で良いでしょう。別荘前に魔導車を停め、ここで一度解散です。つってもラミィを解き放つだけですが。


「じゃあ、俺と亀ちゃんは一週間くらいウロウロするからさ、ラミィはその間ラボから連れてくる人員を何人か選定しといてよ」


「うっす!わかったっす!ついでにイケニエ共も見つけてくるっす!」


「おう、じゃなんかあったら連絡くれよ」


 そんな感じでいよいよ亀の見学が始まります。『ラボ?ラボってなんじゃ?未来ガジェット的な何かか?』とうるさかったのですが、ガン無視をして誤魔化しました。


 まだ当分あそこを教えるわけにはいきませんので。


 魔導車をンナオーンと鳴らし、去りゆくラミィを見送った我々は適当にブラブラすることにしました。


 亀が腹が減ったというので、じゃあ飯にするかってなったんですが、何を食わせてやろうか、それが問題です。


 現在この村には様々な飲食店が立ち並んでいます。つーか、俺があちこち居ない間にずいぶんと街らしくなっていますな。


 器用なウサ族人口が多いのもあり、他の村より店のバリエーションが豊かで、ラーメン屋、カレー屋、肉パン屋にピザ屋と何でもござれです。


 亀に『何を食べたい?』と聞いた所、あっちにフラフラこっちにフラフラしているうち、目を回して『だめじゃ……ワシには選びきれん……ユウ、頼む……』と情報に酔いつぶれてしまいました。


 しょうがねえなあと、面倒だったので適当な食堂に入ったんですが、この選択がこの後の俺を悩ませることになってしまったのです。そう、この店に入ったのはある意味失敗でした。


「へいらっしゃい!お!ユウさんじゃねえか!久しぶりだね!俺もとうとう店持ちさ!」


 なんて気さくに声をかけてくれたのは、はじまりの村に元から住んでいた知らないおっさんです。うん、知らねえ……誰だコイツ……。いや、薄っすらと見覚えあるから『集落のオッサンD』とかなんだろうけど……まあ、遠まわしに情報探っていくか。


「おう、やったじゃねえか!ところで最近あっちの方はどうだい?」


「あっち?ああ、狩りか……。いやあ、正直悩んだけどさ、狩人はもう辞めたわ。キンタの奴も忙しそうだしさ、もう若い連中にまかせていいかなって」


 あーーー、この人あれだ、狩人の中のどれかだわ!……まあ、その程度の関わりしか無かったってことで。


 ノリだけでおっさんと会話をする俺を亀ちゃんが感心したように見ています。


「凄いのうユウは。さっきもそうじゃったが、村を歩けば皆頭を下げたり手を降ったりするではないか。どれだけの徳を積んだんじゃ?」


「んん……いやあ、俺はただやりたいようにやってただけだよ」


 亀に褒められるとなんか調子狂うな。確かに俺の介入で小さな集落がここまで立派になったけど、全部全部が俺の功績ってわけじゃないからね。俺はきっかけを作ったに過ぎないのさ。


 なんて一人かっこを付けているとメニューを持ってきたウサギのバイトが笑顔で話しかけてきました。


「あ!ユウさんだ!ねえ、ユウさん!あっちにお子さん来てるよ!今日もすっごい食べっぷりなの!あ、せっかくだし一緒に食べたら?」


 さて、亀にはまだまだ色々なことを話していません。なんでってめんどくせえからだよ!説明もさることながら、それによって生じまくるであろう質問の嵐に答えるのがめんどくせえからだよ!


 その一発目がここで炸裂してしまいました。


「のう、ユウ。お前……既婚者なの……?仲間じゃと思ってたのに……」


「すまねえ……って亀ェ!『孫の嫁』とかいってたろうが!亀ちゃんだって既婚者だろ!」


「む!前世過ぎて忘れておったわ!あ、でもほら!今は亀じゃなくて蓮華ちゃんじゃい!蓮華ちゃんは独身も独身、とってもきれいな身体なんじゃよ?」


 亀は無視をするとして、さて問題です。誰がこのお店に来ているのか。ウサ子は『今日もすっごい食べっぷり』と言っていましたが、これは全くヒントになりません。うちの子たちはみーんなアホほど食いますからね……。


 まあ、みんなそれなりに空気が読める子たちなので、誰が居ても面倒なことにはならないと思いますが、無難なのはソフィアかティーラのお姉さん組ですかね……。


 てなわけで移動です『奥のお座敷にどうぞー』と言われ案内されたのは靴を脱いで上がる和室です。俺はこんなの提案した覚えがないので、どうせまた女神が日本で行きつけの店を参考に入れ知恵でもしたのでしょうね。


「ユウデスヨー お友達をツレテキタヨー」


 そんな事を言いながらヌッと頭を差し入れてみれば……。


「お!ユウではないか!何処に言ってたのじゃ?わしを置いてまた面白いところにいっておったのじゃろう!」


 マルリさんかー!


「む?どうしたユウ?何やら幼子の声がするぞ?ワシにも紹介せんか!お友達になるんじゃ!」


 亀ェ!


「ユウ?誰じゃこの女子は!また新しい娘をつくったのか?」

「ユウ?誰じゃこのケモロリは!はよ紹介せい!わしの新しいお友達にするんじゃ!」


 キャラかぶり。


 ケモミミでロリ高齢者でのじゃのじゃで!ああああAAAAAAA!!!


 キャラかぶり!そう、これは俺が亀を連れて一時帰宅する際に危惧していたことです。亀と話している時頭にチラつく猫耳のあの子!マルリさん!


 猫と狐で見た目は違えど、かなりかぶってるこの二人……出会わせたくはなかった……!


「ああ、紹介するよ。彼女はマルリさん。ヒゲミミ村の村長なんだが、なんか知らんがうちの子として俺達と暮らしてるんだ。んで、これは亀。ナベゾコ村の村長!以上!」


「雑ゥ!ユウ!ワシの紹介雑すぎじゃ!あと亀じゃなくて蓮華ちゃんじゃい!」


「蓮華ちゃん」

「マルリちゃん」


 きゃっきゃと手を取り合って可愛らしくはしゃぐ二人ですが、俺からすれば敬老会の1シーンですわ。


 あーあ、めんどくせえことになりよった。


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