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第二十二話 謝肉祭その1

 狩人たちと集落に戻るとだいぶ日が傾いていた。


「今日はもう遅いから解体だけしてしまおうか。今日狩った肉は明日の昼、集落の人みんなで食おう」


 うおおおー!と、盛り上がる若者達に反してキンタは何か考えるようにしている。どうした?肉だぞ?肉?さっきからメールで『リブッカ!私も食べたい!リブッカ!私も!リブ』と連打されてるくらいだ、きっととてもうまい肉だぞ?


「どうしたキンタ?何か問題でもあったか?」


「あ、ああ!いやすまん。もうすぐ夜になるだろう?今から解体していたら暗くなる。明日でもいいのではないかと思ってな」


「そのことか。明日食う前に解体してもいいかな?って思ったんだが、明日やるのもめんどくせーなーって思ってね。なーにすぐ終わるから見ててくれよ」


 その心配、断ち切ってやりましょうと、取り出したリブッカを取り囲み解体の様子を見ようとする狩人たち。


「ユウさんの解体!参考にさせてもらいます!」


 なんて言ってるけど……無理なんだよなあ。


 俺はちゃっちゃとスマホをかざし解体ボタンを押しちゃうのだよ。俺の解体にはナイフもロープも水だっていらねんだ。


 光に包まれたリブッカが素材に変わる。


 スマホの画面には図鑑が表示されていた。


 魔獣:リブッカ 体長3m~6mとされるが、10mを超す大型の個体も伝説として残っている。


 厚めの皮で脂肪層に大量の魔素を蓄え防御力を上げているため通常の武器では貫くことが難しい。また、見た目に反して素早く動き、角を用いた攻撃はかなりのものだ。なに?近接武器しかもってない?家に帰るんだな。おまえにも家族がいるだろう。


 素材:毛皮、魔石、肉、角、蹄


 相変わらず真面目なんだかいい加減なんだかわかんねー説明だな。表示が毎回コロコロ変わるしよ。まさか都度手動で撃ち込んでいるのでは無かろうな……? まあいいや。角や蹄は薬なんかに使えるのかな? 後で素材単体で鑑定してみよう。


 さて、解体も終わったし取りあえず俺が預かって……あれ?


 「お……おおお……ここ……」


 やっぱこうなるか。


 「そそ、そのなんだ、魔法?ってのはすげえんだな!それも勿論俺には……」


 「すまん!こればっかりは俺にしか出来ないだろう!」


 やっぱそうかと肩を下すキンタ。他の狩人たちも残念そうな顔をしている。まあそうだろうな。解体という面倒な作業を喜んでやるやつはよほどの好きものくらいだ。俺だってフォルンから魔石抜くのすげー嫌だったし、さっさと解体の事教えてくれなかったパンちゃんはほんと許せねえ。


 キンタたちが狩ってきた他の獲物も解体して、分配について相談した。


「改めて聞くが、リブッカの肉や他の肉たちは明日みんなで食うということでいいかな?」


「ああ!もちろんだ!謝肉祭にしよう!」


「そうだそうだ!明日は肉の人謝肉祭だ!」


「肉の人の祭にしよう!」


 くそ、忘れたころに出てくるな肉の人コール


「でさ、リブッカの素材と、あとキンタたちが狩った獲物の素材を少し俺にくれないか?何に使えるか調べておくからさ」


「ああ、かまわないぞ?俺たちは肉があればいいしな」


「いやいや、羽根で三枚羽根の矢を作ったり、毛皮で服や何かつくったりあるだろ?」


「ああそうかそうか!肉の事しか頭になかったぜ!がはは!」


 素材だけその場で分け、肉は俺が預かって明日また広場で会うことにしてみんなと別れた。


 広場は俺がキャンプしてる所なわけで、さっさと起きないとまた大勢の人に取り囲まれての目覚めになるな……今日は早く寝よう……。



 ◇


 ざわざわ…… ざわ……


 にく……  にくにく…… にく……


「うわあああああ!!!!」


 嫌な気配を感じ飛び起き、テントから顔を出すと多くの人たちに取り囲まれていた。


「あ!肉の人だ!」


「「「おはようございます!!!」」」


「…おはようございます……」


 まだ7時じゃねえかよ!ほんとはええな畜生!俺は8時まで寝ていたいマンだっつーのにまったく!


「ずいぶん、早くから集まってくださってありがとうございます!」


「いやあ、調理する時間もあるでしょう?今から準備すれば昼時には食えるかなと」

 

 そうかそうか、生のまま食うわけでもないしな。会場の設営もあるしそうかそうか……俺が悪かったのか……。


 配布の時と同じく板を出し、そこに解体した肉を並べていく。リブッカの肉が単体でもかなりの量があることと、キンタたちの頑張りで集落の人口50人ちょい分は余裕でありそうだった。


「じゃあ、調理は任せますので用意が出来たらここでみんな揃って食いましょう!」


「ええと、お皿はどこに並べれば…?」


 ああそうか!椅子とかテーブルとか要るのか。


 ならばこうじゃ。


「そうですね、じゃあ1時間ほど待ってください。用意しますので!」


「え?あ、はい!」


 そんな短時間で?と思われたのか、”いちじかん”が伝わって無いのかわからんが取りあえず伝えたぞ。


「あ、そうだ俺は今から会場の材料を取ってきますが、手が空いてる人は広場の隅に穴をほっておいてください。これくらいのを3つ、体が半分埋まるくらいのを」


 腕を広げ直径50㎝くらいを示しすと、何人かの若者が立ち上がったので安心して森へ向かった。


 バットくらいの枝を拾い、木を叩いて強度を確かめる。うん、いけそうだ

 スマホを先端に括り付け、木に向かって軽くスイングする。


 ズン


 ズズズズズン……


 おっとあぶねえ!


 めんどくさいから1撃で切り倒したが、このやり方だと俺に倒れてくるな!


 ま、いざとなったらスマホでガードするしいいか!


 やたらメールが届いてる音がするが無視をしてどんどん木を切り倒していく。

 やりすぎて森の入り口がいい感じに拓けてしまったが、狩人たちのキャンプ地として使えばいいんじゃないかな……

 

 というわけで、かなりの量の木材を用意できたので集落へ帰ろうとクロベエにまたがった瞬間、強い力で肩を後ろに引かれる。


 くそ!このタイミングで魔獣か!


 振り払い、スマホを構えて反転するとそこにはパンちゃんがいた。


「もーーーーーーーーーーーーー!!!!!なんでメールみないの!みないの!」


 ええ……


「いやだって、どうせ見ても『肉』か『スマホをそんな道具に使うな』しか書いてないしいいかなって」


「もーーーーーーーー!!!!!だからって無視はないじゃないのよ!私だって肉食べたいじゃないのーー!!!リブッカよ!リブッカ!あれ美味しいのよ!私にも食べさせなさいよ!!!」


「つってもよー、今からお前が集落に紛れ込むの難しくね?今回はさあ……」


「だめ!!!!私も謝肉祭に出るからね!」


 押し切られてしまってパンちゃんとともに集落に戻る羽目になった。


 くそー どう説明すりゃいいんだこれ…

 

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