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第二百九話 しゃかいかけんがく

 さて、やとこさ本題です。本題の見学会です。はい、ユウです。


 酔っ払った女神が『最近同僚が家ごと異世界人拉致した』とか凄まじいこと言ってましたが、うちの女神もコンビニごと拉致とかしてくれないものでしょうか。コンビニスイーツやら角なハイボールやらを時折無性に欲しくなるんですよね。


 てなわけで、本物のコンビニには敵いませんが、似たような仕様のお店に来ています。


「はい注目ー。これが最先端の店です」


 見た目はまさにコンビニ。魔導ランプで煌々と輝く照明も再現しましたよ。内装もほぼほぼコンビニですが、雑誌コーナーにたくさん並べるほど本というものがまだありませんので、それはご勘弁。


 その他商品もまあ、コンビニとは程遠い感じではありますが、魔導冷蔵庫で冷やされた飲み物や、ちょっとしたホットスナック、美味しいスイーツなどはコンビニっぽさがあります。


 その他の棚を見れば、そこらの雑貨屋臭がする商品が並んでまして、田舎の酒屋さんが看板だけコンビニつけてるようなアレに近い具合になっています。


 ちなみに営業時間は7時から23時。いい気分な感じの営業時間です。


 24時間営業にしたところで酔っ払いくらいにしか需要がないので、23時までということにしました。


「あーこらこら、買い物は後にしなさい!荷物になるでしょ!帰り!帰り!こら!パンもキンタもビールを買ってはいけません!店員さんも売らないで!」


 そうそう、最近漸く動き出した事業がありまして、瓶入り飲料ですよ。コンビニ案を出した時、ふと思ったんですよね。


(そう言えば女神の持ち込み以外で瓶入り飲料が無い)


 って。


 それで『ガラス製容器を作らねば』と思ったのですが、そこで手を上げたのがサンドゴーレムくんです。ちゃんとした名前は忘れました。


 いかにも砂漠にいそうな見た目と特性ですが、マリーノ村の浜辺にしれっといたのを捕獲してきたという経緯があります。元々はどこかにあるらしい砂漠にいる種族らしいのですが、好奇心に負けて彷徨っているうちあの土地に居着いたんだと言ってました。


 まあ、そういういい加減な奴なら何処に居ても良かろうと思いまして、面白いので森に離して置いてたんですが、意外なところで役に立ちましたねえ。


 サンドゴーレムのスキルは砂を無限に出しやがります。どっから出てるの?って思うのですが、本体の体積を変えず、何処かから無限に砂を出します。


 そのため、彼の家がある周辺はちょっとした砂丘になっていまして、深淵の森の観光地であり、七不思議の一つとされているようです。


 不思議でも何でもねえよ、そこの住人が撒き散らしてんだよ。


 っと。話がずれました。

 

 この無尽蔵に吐き出す砂をせっせとウサ族達が加工しまして、どんどこガラス瓶が作られていきます。


 初めてガラス瓶を見た連中がさぞや驚いていることだろうと思いきや……


「へえ、あのいれもんってこうやって作ってたのかあ」


 なんて、感心したように言っています。おかしいな。ここはこう、


『す、透き通った容器だと?』

 

 てな具合で驚くべき所じゃないのでしょうか。ここで思い出しました。こいつらが特に気にもしない理由を。


 なんやかんやと飲み会をする際、うちのバカが何を片手に馬鹿笑いをしているのか。飲み会が終わった会場に転がっているのはなにか。


 そう、酒瓶!大きなイベントがあるたび、女神は地球の酒を大盤振る舞いしちゃうため、酒瓶がゴーロゴロするわけですよ。中にはそれをありがたがって持って変える連中もいましたが、そうだよね、この世界にはないものなのだから珍しくて持ってくよね……。


 と、ともあれ!この世界で作れるようになったということには変わりはありません。これは誇っていい、いいよね……?


 気を取り直して製紙工場や製糸工場も回ります。どっちも口に出すと「せいしこうじょう」だからややこしいよね。もう一種あるじゃないかって?やめろよアッチ行きになる。


 色々な糸が安定供給されるようになって、生活の様々な部分に恩恵をもたらしています。わかりやすい部分では衣類。女性陣達が目の色を変えて見学しているのは無理もありません。


 マリーノ村で使われている網や釣り糸もここで作られていますし、紙をとじるのだって糸が必要です。また、その紙も生活をかなり向上させています。


 メモ帳やノートが比較的手軽な価格で出回ってますので、日常のメモや学習、仕事に大活躍ですよ。それ以外にも買った商品を入れる袋として活躍したり、最近ではおしり等を拭く紙も販売が始まりまして、これは各地でまたたく間に人気になりました。


 一番喜んだのは女性たちだったんですが、パンに営業しろつっても嫌がってやってくれなかったため、渋々俺がやりましたよ。


 ただまあ、あんまり具体的な説明をするとひどいことになるのが目に見えていたので……。


「良いかレディ達よく聞いてほしい。これはトイレットペーパーという新しい紙でな、トイレに置いて使うんだ。見ろよ……薄いだろ?触ってご覧……柔らかいでしょう?肌にあたっても痛くないほどにさ……。使った後はそのまま流してやってくれ。何に使うか……わかるよね? 今まで以上に清潔感を保てるようになるぜ!」


 がんばった!俺がんばったよ!遠回しに遠回しに、かつ何に使うものなのかに思考を誘導するように頑張って伝えたよ!


 あれだよ!キツさレベル的には圧倒的にコッチが下だけど、『せんせえがじょしをあつめてやるひみつかいぎ』を男の先生が担当するような圧倒的なアウェー感。


 そんなヤバさの片鱗を俺は味わったぜ……!


 その後男どもをあつめて「うんこしたらこれでケツ拭いてうんこと一緒に流せ!」と説明しましたが、なんて楽だったことか。


 後からパンが「男どもに説明をして家の女たちに伝えさせたらよかったじゃないの」と言われ、「あっ」と思いましたが、それでは独身一人暮らしの女性に伝わらんのでダメです。


 まあ、それでも「口コミ」で広まったんだろうと気づきまして、一人枕を涙で濡らしたわけですが。


 あのクソ女神、全部終わった後にそれ言うんだもんな。絶対わざとだよ。

 


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