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第二百一話 里へ

 はあ、変なスキルの存在に気づいたがためになんだか眠れぬ夜を過ごしたユウです。


 スキルはまあいいとして、確かにここんとこ疲れにくいと思ってたんだよな。レベル的な概念があるってことで、なんやかんや狩ったり世界に貢献していたおかげかステータスがガッツリ上がっていた。


 完徹しても大してだるくないし、酒も酷い残り方をしなくなったし、疲れにくくなったような感じもある。強くなったと言うよりは健康になったという方がしっくり来る感じだな……。


 魔力は「ほんとに無駄でウケる」とか書いてあって非常に腹立たしかったが、確かに無駄なんだよな……。空になった魔石をチャージ出来るようになったからそこで役立ってるといえばそうなんだけど、パンのやつが魔法を教えてくれねーからそれ以外の使いみちがあんまりない。


 パン(女神)か……。最初はほんとに女神様みたいだったんだけどな。ボロは出てたけど。

 なんだっけ、人間族と魔族の両方に知恵を授けて建国させろとかそんな感じだっけ。もはや目的がうろ覚えに近い忘却の彼方なんだけど、人間族の方はまあいい感じなんじゃないっすかね?


 今後の目標としては、とりあえず4つの村をそれなりに成長させてそれぞれの運営方針をまとめる者を選出し、それを首相として建国させりゃいいだろう。


 そのまま統一国家として成長するのも良いけど、理想としてはある程度まで発展したら現在ある4つの村をそれぞれ独立させたい。

 

 考えたくはないけど、超長い目で見れば転送門(ゲート)が使えなくなる日が来るかもしれないし、そうなったらゲートありきで成り立っている国家体制は酷いことになるのが目に見えてるし。


 まー、そうなるまで俺が居るわけにもいかんので、居るうちに上手いこと根回ししときますかね。


 できねー!


 まあ、人族はメンドクセーから置いといて、魔族ですよ。アイツらしゅごいからほっといたら地球の文明レベル超すような未来都市を作りそうな気がするけど、とりあえずあっちも見守ってやらんとな。


 ……なんか知らんが、連中の領土が外じゃなくてダンジョン内になってしまっているが……


 ま、どうでもいいことだろう。


 とりあえず魔族達にも村を名乗らせて村長会議に顔出させるようにしないとな。



 てなわけで、なんだっけ、そうそう【深淵の森林】にあるウサ族の里に来ました。


 この里は中央にクソでかい世界樹のような木が生えていまして、それを中心に建物が広がっています。なんつうの?森と共存する都市づくりっていうの?ああ、あれだよあれ、エルフの国みたいな感じ。


 で、ウサ族はややこしい事に現在3種類居まして、人間と戦うウサギの絵本に出てきそうな感じの「まんまウサギが服着てるやつ」ってのと「ピンク色した牛の妙に性的な某球団マスコット」レベルで半獣化してるやつと、「いかがわしいお店に居そうな」コスプレ臭半端ないうさ耳とウサ尻尾はやしたおねーちゃん、ってな具合のほぼ普通の人に近い獣人です。


 なんでこんなめんどくせーことになってるのかと言うと、この里に未だ残っている女神の加護(やらかし)のせいで、レベルが上がるごとに見た目が進化していくようになってしまったらしいのです。


 うん、『女神の泉事件』ですね。以前バカが水場が無くて不便だというだけの理由で作った泉には加護がかかっていて、それを飲んだウサ族を2段階目、半獣化まで進化させた事がありました。


 あの時は作りたてだったので濃厚な加護でいきなり2段階目まで進化したようですが、現在は加護の出力が安定していて……って自分で言っててわけわからんな。とにかく、以前ほど急激な進化は起きなくなったが、日々その泉の水を飲み、せっせと働いてレベルを上げているうちに段階的な進化をするようになったのだといいます。


 無論、それはウサ族だけには収まらず、指から糸を出すどっかのヒーローみたいなお姉ちゃんや、頭にお花が咲いたチョロそうなお姉ちゃん等、どう見てもお前ら元々コテコテのモンスターだよね?って感じの知らない人たちが里をウロウロしていました。


 で、殆どの場合見た目が人に近ければ近いほどステータスも上がっているわけで、生意気にもこいつらが独自に立ち上げていた商業ギルドでは亜人的な魔族のみなさんがせっせと働いています。


「おう、やってるな」

「ユウさん!」


 親しげに声をかけてくる頭から花を咲かせたお姉ちゃん、僕はあなたを知りませんよ。


「ああ、この姿だとわかりませんか。ほら、紙を作っていたシズエですよ」


 あー、あのトレントねー、いろんなトレントが紙を作ってるのを視察したけど、その中のどれがシズエさんなのかわかんねーよーっていうか、名前をつける文化が出来たんだ。


「あーあー、シズエちゃんねー。うんうん、この間はどうもどうも」


 よくわからんから適当に答えたが、バレて無かったようでシズエちゃんは嬉しそうに微笑んでいますよ。緑色の髪に咲き乱れる白い花がとても可愛らしいですが、頭から生えているのだと思うと微妙な気分になりますね。


「うふふ、それで今日はなんの用件ですか?」

「ああ、この里を正式に村として登録して外の村と正式に交流できるようにしよっかなって」


 その話をすると、頭にぱぱぱぁっと花が咲き乱れまして、眩しいくらいの笑顔になりました。あー、頭にも表情が出るんだねあなた。


「それは素敵です!素敵ですよ!ユウさん!」


 思わずあなたも素敵だ!なんて言いかけたけど、『だが木材だ』と心がストップを掛けてくれました。

 まあ、木材だろうがお魚だろうが可愛けりゃホイホイなんだが。


 一応、現状でも交易場を用いたり、依頼という形で他の村との交流はある。

 しかし、村長会議に出席をしたり、村人同士の交流という部分はまだ実現出来ないでいる。


 色々な問題も山積みではあるが、とりあえずその第一歩としてこの里を村化しようじゃないか。


 シズエさんに代表者と会わせてくれるようお願いすると、直ぐにでもどうぞと奥へ案内された。

 

 普段とは違う形での村化だが、ま、うまくいくだろ……。

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