第百九十六話 村を作る回だと思った?違うんだよなあ
結局メリル学園を作ってから2か月が経ちまして、第一期生達はとりあえずの卒業となりました。
中にはまだまだ勉強をしていたいという驚くべき要望を上げる生徒がいましたので、そういった方々には飽きるまで学んでもらおうと思います。
というのも、とりあえずの目的である「大人への基礎学習」は無事終了しましたが、せっかく作った学園を使い捨てるというのは流石に馬鹿な話だと思うのですよ。
なので残った大人たちを特別クラスとして扱い好きなように学習や研究をさせつつ、よその村にも宣伝をして子供たちの学ぶ場所として残すことにしました。
さしあたって年齢制限は設けず、親が「一人で出しても問題なく学習できる」と判断すれば受け入れるという後々酷いことになりそうなフリーダムな校風ですが、この世界初の学園なので誰も文句は言いません。
教師としてウサ族をそのまま残しますが、大人の残留組から将来的に教師が生まれたらいいなあと思ったりもしています。
ウサ族は便利な隣人だけど、ある程度は原住民たちにまかせたいからね。
そんなわけで、学園もひと段落しましたし、いよいよ第4の村を誕生させることにしましょう。
直にお知らせに行くのもなんだかめんどくさかったので、招待状を書きまして、ウサ族に持たせて各村長に届けてもらいました。
これが後に「うさ耳ロップの宅配便」として大いに活躍する運送業の始まりだとは誰も思わなかったのです、というか今閃いたので絶対やろこれ。転送門があるとはいえ村間の移動は面倒だもんね。
村人同士の交流が増えればきっと重宝するはずさ。
そんな感じでちょっと暇になったので、お子様用教科書を量産すべくウサウサ村に向かいました。
異世界転移(転生)お約束の現代知識チート、印刷技術をダンジョン内にもたらして教科書作成ついでに活字革命を起こしてやろうかと思いましてね。
シゲミチくんや学園居残り組同様、学問に貧欲な連中は潜在的に結構いると思うんですよね。世界を作った女神がアレだってだけで、そこに住む人々が決してアレなわけではないから学ぶ機会を与えてあげればウサ族みたいにどんどん勝手に発展していくと思うんだよね。
実際、じわじわとではあるけど、各村の住人たちが独自に生み出した技術という物もあるし、この短い期間でそこまでやっているのは正直スゲーと思う。
というわけで、ざっくりとふわっふわとした活版印刷の知識を携えてやってきました塩のダンジョンウサ族村。
「おーいウサギどもーいるかーユウサンがきたよー」
「あ!主の主だ!」
「ユウサンだ!」
ウサギやら木やら青いのやらクモいのやらがワラワラと集まってきました。
いつも通り近況を聞いて簡単なアドバイスをし、本題に入ります。
「なあ、これ見てくれよ。俺が作った本なんだが、『印刷』って技術を使ってるんだよ」
「あ、それ雪原の連中が最近開発したやつですね」
「でさ、さすがにこれを再現するのは無理だから活版……えっ?今なんて?」
「次の階層、雪原にうちらの親戚、スノウ・ロップがいるんですわ。ちょっと前にノリで女神様がうちらと同じように人型に進化させてくれたんですが、あちらさんはどうも魔道具の開発に長けてるようでうちらとしてもちょーっと負けてられないなって……それでユウサン、その印刷技術とは……」
「すまん!火急の用事を思い出した!じゃ!」
なんだってなんだってなんだってー?スノウ・ロップをまず知らんが、そいつらが進化して魔道具特化型になっている、しかも印刷技術を開発しただって?ユウサンそれは見逃せないっていうか、ちらつかせたドヤ顔をどこに発散すればいいんだ!?
動揺したまま仕事に来ていたヒカリに手を振り第3階層に向かいましたよ。
「くっそ、ナーちゃん連れてくるんだったな……クッソ寒いわ」
以前来た時よりひどい吹雪で、なんつうの?ホワイトアウト?よく見えない感じですわ。
ナーちゃんの加護がないので、Tシャツにジャケットを羽織っただけの薄着ではどんどこ体温が奪われ明らかに生命の危機を感じますね。
とりあえずボックスから防寒着を一式取り出して着替えます。あー、女神に頼んで蒸着!みたいな具合に一瞬で着替えられるよう仕様変更してもらおうかなー めんどくせーよ着替えるの。
なんて事を言いながらもブルブル震える体を温めるべくせっせと雪原を歩いていますが、正直ほとんど来たことがなかったのと、視界の悪さで遭難しそうです。
寒さが限界を超えたのか体が震えることをやめ、手足もうまく動かなく……ああ……やばい……見えちゃ行けないものが……見えてくる……。
朦朧とした意識の中、もふもふとしたお姉ちゃんの姿が見えます。
ああ……ここが天国か……。
「あれ、この魔力は主の主じゃないですか?わ、こんな顔してたんだ!」
「ええ……俺に魔力なんてものがあったの……?まあなければ魔道具なんてつかえねーか……」
「そうですね、魔石に火を入れるために微弱ながら魔力を使うわけですし……って、主の主?目を開けて!寝ないでー!」
白くてきれいなもふもふのお姉ちゃんが何か言っていますが、もはやお花畑に手が届く感じで……あれ……ばーちゃんが怖い顔で見てる……つれないなあ、10年ぶりだろ……久々に話そう……よ……
「わー!主の主がカチコチになったー!」
……
「知らない天井だ……」
目を開けると白い天井が目に入ります。ぽかぽかと温かく、どうやらどこかに収容されたようなのですが、何が何やらわかりませんよ。
しばらく寝かされていたベッドでうだうだしていると、もふもふのお姉ちゃんたちがやってきました。
「あ!主の主が目を覚ましたよ!」
「おお、さすがに頑丈だね!」
「正直リスポンするのかと思ったけど、人間やめてるよねこの頑丈さ」
なんだかひどい言われようですが、とりあえず助かったということですか。
「なあ、ここはどこなんだ?俺は確か雪原で死んだのだと思ったのだが……」
「なにいってるんすか、ギリギリ助かったんですよ。まあ普通の人間や魔族なら死んでたと思うんすけど……ここはラボ、魔道具開発ラボっすよ主の主」
「ラボ……だと……?」
およそこの世界では聞けないようなハイレベルな単語が耳に入る。
ああ、やはり俺は死んでしまったのだろう。
明日届く予定の新パソコンが来まして、グラボやらHDDやら移植しつつ環境整えてたらすっかりこんな時間ですよ!予約投稿しとけって話ですよね。
しかし8世代CPUモデルは快適ですわ……