第百九十話 新たな子
風の子にスマンスマンと謝り、スケッチブックを取り出す。
風のコアか……、ベタだが、髪と目の色はグリーン系統がよかろう。羽根のような耳飾りがついていて……、お掃除が好きな頑張り屋さん……てことはエプロンドレスなんかいいな。
この手の服にはドロワは外せん、そして若干スカートから覗くロングがジャスティス。パンツじゃ無いから恥ずかしい事なんて無いもん!
サラサラと筆が乗り、ついつい色まで塗ったところで気がついた。ああ、しまったこれさっき休憩中にスケッチしてたページだわ……。
今から書き直すのも……うん、ソワソワフワフワと光が飛んでるね……。そんな時間は無いな。
ええい、せめて片面がスケッチになっている言い訳が出来るようにしておこう。
ここにいる、と。
「ようし!出来たぞ!あ、右側は気にするな!ていうかイメージスケッチだから身体に使うのは左半分な!」
軽く言い訳をしながらスケブを渡すと女神が眉をひそめる。
「なによこれ、『ここに居る』って」
「いや、ほら。このスケブって使った後もそのまま残るだろ?我が子の記録というか、なんというか……ここでこの子が産まれたんだぞっていう記録というか……」
「ふうん……まあいいわ。この子……ああ、名前書いてるわね。ソフィア?なんかそう言うバンドが居たような気がするけど良いじゃ無い」
「バンドは関係ないから!どっかの言葉で風的な物を意味する言葉だから!」
そして何時もの通り、るーちゃんと手を繋いだ女神が風のコアに加護を注いでいく。
(絵をもとにして実体化するのってなんか3Dプリンタみたい)
ふとそんな事を思ったが、口には出さずに幻想的な光景を見守る。
やがて光が晴れ、可愛らしい少女が目の前に降り立った。
「お父さん、お母さん!ありがとう!今日まで頑張ってきて本当に良かったよ!皆、今日からよろしくね!」
ティーラの様な感じだが、少し幼さが残る若干元気な感じの娘っこじゃのう。エプロンドレスをなびかせながら元気よくお掃除をする光景を想像していたから、何だかとってもしっくりくるな。
さて、恒例のステータスはっと。
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名前:ソフィア
職業:ダンジョンコア
LV:18
体力:5400
魔力:4800
スキル:人化 ダンジョン管理 使役 召喚 自動翻訳 清掃 浄化 飛行付与
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魔力降り体力のが高い。お掃除で鍛えていたせいだろうか……?わからん。
固有スキルは『清掃』と『浄化』は予想通りとして、『飛行付与』!そんな物も有るのか!
「なあ、ソフィアや。飛行付与とはなんだい。お父さんに教えておくれ」
「飛行付与はね、風に乗って飛ぶことが出来るんだよ、お父さん」
「ほう、それはそれは素敵なスキルじゃのう」
「これを使えばみんな飛べるよ。これから上に上がるんでしょう?帰りはみんなで飛んでいけるよ、お父さん!」
俺は良い娘を持った……。
この道を、あの階段をまた戻るのか、チラチラと頭にそれがよぎる度、深いため息が出たものだよ。
いっその事、駄に頭を下げて上まで転移!なんて考えたりもしたけれど、流石にそれはプライドが許さなかったし……。
ああ、飛行……なんて甘美な響き……。
「じゃあ、ソフィアや。女神以外の全員にかけておくれ」
「ちょ、なんで私をハブるわけ?」
「いや、お前ソロで飛べるだろ……?」
「うっ……それは……それ、これはこれー。1人だけ違うなんてやだやだ!やだやだ!」
面倒くさい流れが見えたので、駄を含めみんなに加護をかけて貰った。
「じゃ、ラーファ!行ってくるね!何かあったら何時でも呼んでね!」
「主が嬉しそうで我も嬉しいです!沢山楽しんできて下さいね」
ドラゴンというのはコアとほんと仲が良いよな……。水のダンジョンどうして……。
皆でラーファに手を振り、ふわりと空に舞った。ア……これは新感覚……。
なんていうの?水の中に居る感じなんだけど、全く抵抗がない感じで、優しくふんわりとした物に包まれているような……気持ちいい……。
「なによこれ……自分で飛ぶより気持ちいいじゃない……」
どうやら女神にとってもこれは心地が良いようだ。どうせアイツのことだ、普段は反重力ジェネレータとかそういう女神らしからぬ物を使って飛んでいるに違いない。
「そ、そんな事は無いわよ?か、加護の力よ?女神デバイスは加護、そう、加護なのよ!」
「心を読んだか、馬鹿め。ならば言わねばバレなかった物を……」
「あ!」
やっぱり図星かよ。ファンタジー的な夢が壊れるからあんまりそう言う話をしないで貰いたい。
見ろ、子供達を。あんなにも純粋な笑顔で空の旅を楽しんでいるでは無いか。
「わー!こうすると速度が出るよー!みんなもおいで!」
「待って下され!姉上!」
「わっ、ちょっとすーちゃんゆっくり沈んでるよ!」
「ありがとー、ティーラ姉ー」
「凄いのじゃ!ソフィアに引っ張って貰うと速いのじゃ!」
「あはは!こんなに楽しいのはじめてだよー」
やべえ……、改めてみるとめっちゃ子だくさんじゃん、俺。
「ビッグダディ……クール」
「やめろ!パン!それだけは辞めろ!」
しばらくの間遊んでしまったので、階段を上る以上に時間がかかってしまったが、なかなか楽しかったし、全く疲れると言うことが無かったので良しとしようじゃ無いか。