表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/577

第百八十七話 先発隊、女神の報告

 俺がせっせと学園設立のために働いていた頃、女神たちは風のダンジョンに足を運び内部の調査をしていた。


 正直なところ、俺もそれに加わりたかったのだが、この世界にないものを作るとなると流石にウサ族なんかに丸投げすることも出来ず、渋々ながら女神たちに任せていたわけである。


 開校式を執り行った晩、いよいよ丸投げしてダンジョンに逃げれるぞ!と、先行していた女神達からダンジョンの情報を聞いたわけだが、やはりこの世界、一筋縄ではいかないようだ。


◇◆◇


 まったく、ユウのやつ気軽にぽんぽんぽんぽん女神様を使ってくれちゃってさあ?

 まあ、確かに学校の方の手伝いはあんまりやりたいとは思えないし、子供達もダンジョンに行こう行こうってお願いしてくるし、私がこうやって来るのは仕方がないことだけどさあ。


 はあ、しょうがない。風のコアの事も気になるし、様子を見に行ってあげましょうかねえ。


 ゆったりとダンジョン入り口に足を運ぶと、ソワソワとした様子の子供達が待っていた。

 この子達はちゃんと待ってられるいい子ねえ。


「ママー、このダンジョン面白いね。中から風がビュウビュウ吹いてくるよ」


 風のダンジョンというだけあって、吹いたり止んだりしているわね。うーん、多分ここもこれだけ強い力を持つコアが居るくらいだから何らかの形で私が……、不本意な言い方をすれば「やらかした」のが切っ掛けで産まれたダンジョンだと思うんだけど、なんだったかな……。


 なんでかは忘れたけど、確かにここにこのダンジョンがあることは覚えていたわ。なんたって、この周辺に配置する風の民をダイスロールで選定してダンジョン付近に放したわけだしね。


 ダンジョン付近の土地にはコア由来の加護が何らかの形でかかる。

 だからその土地最初の人間族はダンジョンの近くに放して最低限の加護を与えて、その後は天から応援して発展を願うって感じなんだけど、ここの加護は果たしてなんだったかしら……。


「お母さん、早く行こう?風の子が呼んでるよ?」


 気づけば子供達が袖を引っ張り早く入ろうとせがんでいた。そうね、考えていても仕方がない。中を見れば何かを思い出すかもしれないしね。


 ◇◆◇


「へえ、やっぱり案の定何時も通り過去のことをスッパリ忘れてたってわけか。この揮発性女神めが」


「ちょっと!人を冒険の書かなんかみたいに言わないでよ。まあ、忘れてたっていうか、記憶と違ってたって言ったほうが正しいんだけど……」


「気になる言い方だな……。それで、ダンジョンの性質はどんななんだ?風が吹いてるのはわかったけど、他に何かなかったのか?加護的な要素とかさ」


「それがさ、ちょっと面白い仕様でね……」


 ◇◆◇


 中に入ると、石造りのダンジョンで、壁には謎照明が付いているいかにもダンジョン、といった作りだった。似たようなダンジョンを作っていたティーラもあちこち見ながら感心した様子で頷いている。


「お母さん、見て!凄いよこのダンジョンとっても綺麗!凄いなあ、どうやってるんだろう」


 綺麗かなあ?いやまあ、足元は石畳でドロドロってことはないからまあ綺麗っちゃ綺麗だけど、所々に白亜を用いたティーラのダンジョンのほうが綺麗だと思うんだけどな。


「地のダンジョンのが綺麗じゃない?」


 思わずそう言うと、ティーラは何を言っているのだという顔で補足をする。


「そうじゃないよお母さん。確かに見た目は地味かもしれないけど、見て、壁に地面にあの隅っこ!何処を見てもホコリがないよ」


 確かに!ダンジョン特有のホコリ臭さと言うか、カビ臭さ、そういったものがここでは感じられない。それどころか何処か爽やかな、マイナスイオン的なアレを感じるほど空気が澄んでいる。


「なるほど、ティーラが言う綺麗っていうのは掃除が行き届いてるっていう意味なのね」


「そうだよ。凄いなあ、私もモルモルにお掃除を頼んでるんだけどね、どうやっても隅っこはちょっと残っちゃうし、空気はやっぱり淀んじゃうしさ。あー、早くここの子とお話したいなあ」


 人工系ダンジョンの同士としてなのか、ティーラがやたらと張り切って動いている。天然系ダンジョンのナーちゃん、スーちゃんは特に興味が無いのか、二人で何やらおしゃべりをしているし、ルーちゃんもまた、マルリちゃんとおやつを食べている。


 ああ、しまった。またナチュラルにマルリちゃんを連れてきてしまった!

 流石に何かあったら危ないからユウに任せるつもりだったのに……まあいっか、しょうがない。

 この子は既に色々な事情を知っちゃってるし、いまさら隠すような事もないしね……。


 最初の階層はただの通路になっているのか、特に分岐もなく一直線で魔物とも遭遇しないうちに下に降りる階段に到着した。


「母上、下階から強く風が吹いていますな。それにこの気配は……」

「そうね、どうやらここからが本番みたい。いい?なるべくお話で片をつけるけど、馬鹿な子には容赦しなくていいからね?マルリちゃん、怪我をしないようルーちゃんに守ってもらってね」


「うむ、わかったのじゃ!ルーちゃん、頼むぞ」


「うん、任せてよマルリさん!」


◇◆◇


「ってなわけなのよー」


「はーん、つまり風のダンジョンがもたらす加護は「清潔」とかそういうお話?」


「うーん、まあそれも一つの効果なのかな。いやほんとすごいのよ。ティーラに言われて見てみたけど、ダンジョンピッカピカでね、空気もあれなんていったっけ、ブラックホールクラスターとかいう機能がついた空気清浄機みたいでさ」


「そんな物騒な空気清浄機はねえよ! ……まあ、言いたいことは理解できる。なるほどなあ、中々面白い特性を持った子のようだな」


「そうなのよ!でさ、階段のしたからビュウビュウ風が吹いてるわ、魔物レーダーにガンガン反応があって髪が立つわ!」


「可愛いですよね、今期の猫娘」


「誰が人間と妖怪のハーフの子か!いやまあ、ネタ振ったの私だけど……そうじゃなくって、下階は兎に角一見よ!悔しいけど私のボキャブラリーじゃ上手く説明できないから、行ってのお楽しみってことにしましょう」


「あきらめんなよ!」


 そんなわけで、結局聞き出せたのは1階層の情報のみ、っていうかほぼ直線で魔物が出ない場所の話だけされてもどうしようもねえわ。


 とはいえ、一応コアの所までは到達してルートを確保してるとのことなので、まあ何時も通り観光がてら行ってくるとしますかね。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ