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第百八十三話 住所不定無職

 ユウです。風のダンジョンみっけました。


 なんの捻りも無く、草原の真ん中にぽっかりと口を開けた入口がありまして、確かに中から風が立てる音が聞こえてきます。


 草原に降り立ちまして、集落を捜しながらちょっと走ったら直ぐにありました。


 あまりにもあっさり見つかったので、ただの洞窟かと思ったのですが、ダンジョンだって言うんでもうどうでも良くなりました。ユウです。


 あんまりにもさっくり見つかりすぎて、取りあえずダンジョンは保留になりましてまず集落を捜そうって事になったんですが、これがまた見つからない!


「おいおいおーい!女神さんよー、一向に集落がみつからねんだがどうなってんだーい?」


「それはその、あれよ。ここの人達はその、遊牧民?だから、絶えず移動してて……住所不定無職みたいな……」


「なんだよそのちょっとアレなプロフィールは……。捜す気が萎えてきたぞ……」


「無職ってのはまあ、言葉の綾だけど……本当に彼らの住処は掴めないのよ……。まあ、ダンジョンからそう遠くないところに居るはずだからウロウロして捜すしか無いわね」


 ウロウロって……もっとこう、なにか……無いのか?


「なあ、女神なら周囲のマップ出してさ、光点かなんかで人類の反応を表示して把握できたりしねえの?FPSゲームみたいにさ」


「あっ」


「出来るならやれ!もうこれ以上ウロウロするのは嫌だ!」


 それは女神も思っていたようで、特に嫌がることも無く直ぐに実行してくれた。やれば出来るじゃねえか。



「あーいたわ。こっから西に30分程行ったところ!今丁度落ち着いてるところだから急ぎましょう!」


 落ち着いてる所って……一体どんだけ慌ただしい連中なんだよ。


 猫車で30分、けしてコアから近いとは言えない場所に奴らはいました。


 モサモサのモップのような魔獣の群れ、そしてそこから見え隠れする明らかに人っぽい何か。

 近くまで馬車を寄せてようやくこちらに気づいたようで、ワラワラと魔獣から姿を現しました。


「ハロー!ワタシユウデス。アナタタチ、ココノヒトタチー?」


「変な奴がきた!」

「なんだこいつ!」


 いきなり不信感全開です。失礼な連中だな。


「ちょっと!何変な自己紹介してんのよ!警戒されちゃったじゃないの!」


「ジョークジョーク。ああ、すまん。俺は遠い所からきたユウって言うんだ。お前達に会いにな」


「俺達に会いに?そらまた変な奴だな」

「なんだこいつ!」


 くそ、さっきから犬みたいな奴が「なんだこいつ!」しか言わなくてとてもウザい。


 どうやらここもダイスロールで決まった悲しみの組み合わせのようで、男は犬獣人……、どちらかと言えばコボルトに近い感じだな。顔が完全に犬で小柄の体型をしている。犬種がまた雑に色々居る感じで、そこも女神のいい加減さが伺える。


 そして女、女がこれまた頭を抱えた。


 赤いオーガなんだなこれが。大柄の身体で顔は結構美人。真っ赤な肌に金や銀の髪で立派な角が生えている。青鬼さんが魔族で赤鬼さんが人族ってなんの冗談だよ。


「まあ、こうしててもしょうがないな。なあ、話をしたいんだがこの集落で一番偉い人って誰だ?その人の家まで案内してくれ」


 と、言うと、キョトンとした顔で犬と鬼が首をかしげている。いったいどうしたってんだ。


「偉い奴は向こうでメリルに埋まってるモフモフの爺だが、そのイエとかシュウラクってのはなんだ?」

「なんだこいつ!」


 ハハハ、そう来ましたか。


『おい!女神!なんだこいつ!はこっちのセリフだよ!こいつらなんだ?他の地域より大分凄いじゃ無いか』


『だから言ったじゃ無いの……。この子達はメリルのミルクを飲み、それを狙ってやってくる魔獣を返り討ちにし食べ、メリルが動けばそれについて回るパラサイトよ。つまり特定の家を持たず、職も持たず、一族ずっとこうして暮らしてきたの』


『なるほど、住所不定無職』


『ね?』


『悔しいが納得した……』


「ねえ、ユウ、ママ。いいの?あの人達行っちゃったよ?」


 言われて振り向けば、のっこらのっこらとメリルの群れが移動を開始し、それに合わせて連中がごっそり居なくなっていた。


「ちょっとまってえええええ!!!」


 結局この日はついて回るのに精一杯でろくに話も出来ず疲れ果ててしまった。


 取りあえず準備をしなければ会話もままならんと言うことで、その日の野営時に作戦を立てた。


「と言うわけで、連中を囲い込むことにしました」


「囲い込むってどうすんのよ。何かで懐柔するの?」


「その囲い込むじゃ無くて、物理だな。あいつらほっとくとどんどんどっか行っちゃうだろ?動きのパターンからすれば三日後、ダンジョンの近くにやってくるはずだ。そのタイミングで柵を作り、メリルをダンジョン周辺に封じ込める」


「なるほど!そうすれば連中も動かなくなるわね!」


「その後、あれやこれやで強引に話をつけていけば良いのさ」


「そうね。これはこれで面白い文化だと思うけど、なんかちょっと危ういからねこれ。ある程度まともな生活を送れるようにした方が良いと思う」


「うむ、せめて屋根がある場所で寝るようにして貰いたいからな。このままじゃ何かでバランスが崩れてメリルが全滅したらあっさり滅びるもんな」


「ほんと良く今日まで滅びなかったわよ……」


「お前がそれを言うな」



 なんだかとっても面倒くさい所に来ちゃった感が凄いですが、ミルクを手に入れるため打算的にがんばりたいとおもいます。


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