表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/577

第百八十二話 楽しい旅……楽しいかな……そうかも……うん……

 ガタゴトニャアニャアと何時もの様に猫車が走ります。


 今回の旅は以前より2人増えたため、車内は増して賑やかです。

 「念のために」と本人が言って聞かないため、アーシュはお留守番ですが、何が何でもついて行くぞと何も言っていないのに頑張っていたヒカリはフロアマスターとして見習って欲しいですよね。深淵の森林には既に冒険者が入っています。地のダンジョン以上に警戒が必要な筈なんですが、ちょっと危機管理が足りてないなあと思います。


 まあ、森のおっさん達が張り切ってるし、ラウベーラもウロウロしてるのでもう暫くは大丈夫だろう。


 ちなみに万が一それも抜けられてしまった場合、3階層、凛烈りんれつの雪原に無条件で降り立つことが出来てしまうわけですが、なんの準備もせずに降り立つと詰むようになっているため、それはそれで問題がありません。


 ヒカリを破るとチケットが貰え、それと交換でウサ族の村で防寒具を作って貰えます。それには若干の加護がかかっているため、寒さ耐性が上がり凛烈の雪原でも活動出来るようになるというわけです。


「しかし、相変わらずなんもねえなあ」


 今回ばかりはファストトラベルを辞めてくれと女神に厳命したけれど、やっぱりこれはこれで退屈だ。


 延々と続く似たような景色、たまに現れる魔獣。前回の旅と同じく特に楽しみが無い移動である。


 一応、新たな食材を手に入れるべく周囲に目を光らせては居るけれど、大した成果も無く。


 楽しみと言えば一日の終わりにやってくる野営くらいの物だった。


 テントを張り、女神やマルリさんと酒を飲んでいるといつの間にか何人か増えている。

 大体がタルットなんだが、稀に見知らぬ魔族が混じっているためちょっと楽しい。


 今日来ているのは青い顔をしたオッサンだ。身体がデカいのと、角が生えてるのを除けばただの青いおっさんなんだが、これでもブルーオーガと言う種類の魔族らしい。


 女神によれば人間族の候補でもあったけど、ダイスロールに負けて魔族側に入った種族だとのことで、本当に良いかげんっつうか、魔族と人間族の境界線があってないような世界だなあと心から思った。


 青いオッサンはそこそこ賢くて力持ちだと言うことで、良かったらどうぞとダンジョンにスカウトした。ダンジョンの話を聞いたオッサンはそれが気に入ったようで、家族や仲間も良いかと言うのでまとめてダンジョンに引っ越して貰うことになった。


 見た目的にさほど違和感もないし、ダンジョンだけでは無く村にも住んで貰って土木作業等で活躍して貰うのも悪くないな。


 こう言う出会いがちょいちょいあるため、野営が楽しみになっているわけだ。


「今夜の野営ガチャSSRでろ!コモン(タルット)はもういらねえ!」


「この辺りはフェアリーピックアップガチャね。来ると良いわね、フェアリー」


 なんてこの世界の人間が首をかしげるような謎の会話を女神と楽しみながら夜を待つ日々だ。

 

 まあ、大体タルットがくるわけなんだが、輩出率狂ってませんかねえ、このガチャ。

 運営に文句言わないといけないなって運営隣に居たわ。


 そんな退屈しのぎもそろそろ終わり。


 ガタゴトニャアニャアすること半月、とうとう境目が見えて参りました。

 体感気温はさほど変わらないけれど、目に見えて木々が鮮やかに染まっていきます。


 ああ、秋だ。


 春の「地」夏の「水」冬の「火」と来て秋の「風」ですよ。


 ざっくり4つの季節に分断してるってほんと頭悪いよなあ。


 一体どう言う形の大陸なんだと女神に聞いてみれば、花形だという答えが返ってきて頭を抱えた。

 4枚の花びらを合わせたような形になっていて、それぞれ季節が違うのだという。

 で、女神が言うとおりに図を書いてみたら花形ではなくてただの円グラフでちょっと笑ってしまった。

 

 女神は怒っていたが、円グラフにしかみえんのだから仕方有るまい。


 ……というか、と言う事は中心に何らかの拠点を作れば春夏秋冬を味わえるのでは無かろうか。

 いつか暇な時中心に滞在して試してみないといけないな。


 しばらくの間紅葉を楽しみつつ移動し、何度かの野営を繰り返しました。

 秋と春って似たようなもんだからあんまり違いは感じないけど、夕方からの冷えが少し春よりキツい気がするな。


 出発から20日が経ち、女神が限界を迎える直前のことだった。

 長い上り坂を越えると眼下に広大な草原が広がった。


「うおおおおおお草原だあああああ」


「あーーーー!!!ついたああ!ファストトラベル使うところだったあああ!!!」


 ファストトラベル言うなや。つうか頼むからマップくらい覚えておいてくれよ……創造者だろ……。

 

「で、女神さんよ。ダンジョンや集落の場所を教えてくれよ。どうせ今回も近いんだろ?」


「うーん、ダンジョンの場所はまあ、何となく分るけど集落はわかんないんだなこれが」


「何言ってるんだ……?ああ、あれか?草原だけに遊牧民がいるとか?」


「うーん、まあ遊牧民っちゃ遊牧民なんだけどちょっと事情が違うって言うか……。文化が育ってればまともになってるかも知れないけど……」


 なんだこの煮え切らない態度は……。


 まあいい、取りあえず草原を探索しようじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ