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第百七十四話 ユウ、久々に壇上へ上がる

「いるかい、ユウサンがキタヨー!」


 村役場(キンタの家)の扉を開け、挨拶をすると2階から何か警戒するような気配がした。

 ズカズカと2階に上がり、扉を開けるやいなやキンタが警戒の声を上げる。


「だめだぞ!今最高に忙しいんだ!お前がこの間言い出したゼイキンとか言うアレをどう説明したら良い物か頭を悩ませてんだ!ここでシゲミチを連れてかれたらどうなるかわかんねえぞ!」


 まったく俺を妖怪シゲミチ攫いみたいに言うのはよして欲しい。


「税金の説明はなんなら俺がしてやってもいいぞ。突然だがこれから報告会を兼ねたパーティーを開こうと思ってるし」


「え!なんだよなんだよ!明日はリブッカでも降るんじゃねえのか!?」


 まったく心外である。そりゃ、ここの所ここに来て言ったことと言えば「シゲミチ借りてくぞ」が殆どだったかも知れない。しかし、それ以外にも色々貢献してきたでは無いか。ここは断固遺憾の意を示していきたい。


「お前さあ……、今まで俺がどんだけ良くしてやったか忘れたのか?」


「うっ……、スマン。ユウサンにはほんと感謝してるって!それで報告会ってなんの報告なんだ?」


「ったく……調子が良い奴だな。ほら、この村にも人が来るようにして欲しいって行ってただろ?その話だよ」


「ああ!そうか、なんか作ってくれたんだってな。でも、聞いたぞ?結局ここまで来るのが大変だから集客は見込めないだろうって……」


「だからその解決策が見つかったんだよ。あーもう、めんどくせえ!何度も説明するのは面倒だから発表会で直接説明するわ!」


「村長なのに先に聞けないとか……」



 なんだかがっかりしているキンタを放置して広場に向う。


 広場ではパンや子供達、話を聞いたリットやマーサ、それに村人達が準備を手伝ってくれていた。


「聞いたよユウさん!また子供をこっちに呼んだんだって?まさかこんなに子だくさんだったなんてねえ……。ふうん、ふううん」


 村のおばちゃんがニタニタと俺とパンを交互に見ている。やめろ!そんな目で俺を見るな!


 まあ、流石にこれだけ子供が増えるとちょっと目立つよな。この村だと多くても3人兄弟ってとこみたいだしさ。


 予定では最低あと一人は増えるはずだから、そんときゃまた色々言われるんだろうなあ……。

 子供達と一緒に過す時間は楽しいし悪くないけど、弄られるのは少し悔しいから悩ましいところだ。


 ある程度用意が出来たらイベントの周知をしないとな、なんて思っていたが気づけば多くの村人がワイワイと集まって用意を手伝ったり、商機と考えた連中が屋台を出したりとやたら賑やかになっていた。


 屋台か。


 始めて来た時を思えば随分村らしくなったものだ……いや、これはもう既に街に片足突っ込んでいるよな。


 元々あった村に、ウサ族区画を中心とした住宅地、さらにもう一つ増えている。宅地だけでも元の3倍は軽く広がっているし、畑もかなりの規模になっている。


 後もう少し区画が増えたらこれはもう村じゃ無くて街にした方が良いだろうな。今ですら村の端から端まで徒歩で移動するのはかなりしんどいレベルだし。



 そして準備が整いいよいよ開会となった。

 もうすっかり慣れてしまった俺が簡易ステージに上がり、これがなんの集まりなのかを説明する。

 

 村人がほぼ全員押し寄せてきては居るが、これから何が始まるのか知ってる奴はほぼ居ないという凄まじい状況だからな。


「えー、お集まり頂有難うございます。毎度お馴染み、ユウ、人を集めりゃ何かを起こすユウでございます」


「いいぞー!今度はなにやらかすんだー!」


「はい!やらかしました!まずはわかりやすく嬉しいお話しから。ダンジョンや他の村に行ったことがある方はご存じだと思いますが、遠く離れた場所に瞬時に移動できる転送門ゲート、あんなに便利なのにこの村にはありませんでした。なので、今まで余所の村から来る人はあんまり居なく、寂しく思っていた人も居たと思います」


「ほんとだよー!あれがあればダンジョンにも直ぐ行けるってのにさー!」


「それな。ああいや、それなじゃねえや。それがさ、見つかったんです!置ける場所!理由は秘密ですが、あれはダンジョンにしか置けないんだよ。それがこの村に今まで無かった理由なんだけど、実はこの村の直ぐ近くにもダンジョンが見つかってね、めでたく転送門ゲート設置の予定がつきました!」


「「「うおおおおおおおお!!」」」


「そのダンジョンに稼ぎに行くことは出来るのかい?」


「あー、しっかりと作られた立派なダンジョンだし、稼げそうな魔物も沢山居たよ。でもお前らじゃ入った瞬間外にペイっと出されるのがオチってくらい難しいダンジョンだ。だから、申し訳ないが他の村にあるダンジョン同様、直には入れないよう仕掛けをさせて貰ったよ」


「それならしかたねえな。塩のダンジョンの森すら抜けられねえし今は自分を鍛えるよ」


「そうだなあ、森のオッサンがまた強くてな」


「はい、タルットのお話しは後でしてね。それで転送門ゲートは近いうちに作るから、楽しみにしててね。じゃ、次ちょっと面倒なお話し」


 と、税金について説明した。村は軌道に乗るまで俺の融資と善意の寄付によって公共事業を賄っていた。しかし、流石に人口が増えやりたいことが増えてくるとそれじゃとても間に合わない。なのでみんなから少しずつお金を集めることにするよ。


 なんて説明をするとざわついた。不満というわけではないらしいのだが、何のために集めるのかという疑問が大きいようだ。


 なので簡単に利点を説明する異にした。


「ゲートが出来たと言っても大きな荷物は通せないから交易場へは荷車を引いて行く必要があるわけだ。

 そこで問題になってくるのが街道の悪さ。あの道がもう少し歩きやすかったらなって思うだろ?」


「確かにあの道はちょっと歩きにくいな……」


「だろ?でさ、今でも手が空いた人が善意でちょっとずつ整備してくれてるけど、それじゃいつまで経っても終わらない。でも、誰かにお金を払って仕事としてやって貰えば、人を沢山集めてやればそれだけ早く街道が綺麗になるわけだ」


「なるほどなー、確かに仕事となれば優先して作業してもらえるよな」


「それでさ、街道は皆で使うよね?通らない人だって街道を通ってやってくる商品を買うことはあるだろう?代わりに売って貰うこともあるかもしれない。だからそのお金を皆で少しずつ出し合うんだ。それが税金ってわけさ」


「「「ほえー」」」


「街道だけじゃ無いぞ。村内の道を良くしたり、皆が集まって会議をする建物を作ったり、病気の人を治療する場所を作ったり……税金で集めたお金があれば色々出来る様になるのさ」


「しかし、食べるのにやっとって奴も居るぞ。そういうときはどうすりゃいいんだ?」


「そうだな、先ず前提として税金は働いている大人から徴収されることになる。子供のうちは税金がかからない。そして生活するのにギリギリな人も免除される。今のところそれを調べる仕組みを作る余裕は無いから、そこは皆の善意に任せるからな。無理して払わなくても良いけど、少しでも余裕がある人は払って欲しい」


「いくら払えばいいんだ?あんまり多くは払えないぞ?」


「そうだなあ、年に100リパン、金貨1枚だ。10リパンずつ払える時に払っても良いし、纏めてでも良い。まずは100リパンから始めてみようと思う」


「一気にはキツいけど、10リパンずつならいけるか……」


「俺は最近稼いでるから楽ショーだぜ」


 ま、最初はこんな反応で十分だろう。ガッチガチに徴収して良いことはないし、金額もこのくらいで様子を見たら良い。正直大きな公共事業をするには全然足りない額だけど、まずはシゲミチやキンタに練習して慣れて貰うのが大きな役割だからな。


 そしてこの村をモデルケースとして徐々に他の村にも税金システムを広めていけば良いのだ。


 さて、後は飲みながら食べながらじっくりと語っていくことにしよう。


「よし、まだまだ話したいことはあるが、腹も減り喉も渇いたことだろう!まずは飲んで食べてそれからだ!皆グラスは持ったな!?」


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」


「じゃ!はじまりの村の未来に!乾杯!」


「「「「かんぱーーーい!!!」」」」


 そして久々の大宴会がスタートした。

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