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第百七十三話 外へ

 目の前に現れた全裸ショタに多少動揺しつつも、色々と毒なのでさっさと服を作って着て貰った。

 パンツはボクサータイプの子供用サイズ。服はロンTにカーゴジャケット、下は七分丈のカーゴパンツにしてやった。


 サラサラの茶髪にやや日焼けしたような肌、女の子かと見間違う程に顔面ガチャで勝利したその姿は俺が転生お姉さんだったらひとたまりが無かったかも知れないな。


 まあ、俺には日焼けしたそこらの虫取り小僧にしか見えないわけだが。


「しかしまた、随分と若い姿に化けたものだな。服も着てないしよ」


 ようやく"見ても平気な姿"になったアーシュに言うと、面白い答えが返ってくる。


「ユウ殿を見るまで人間という物を見たことがありませんでしたからな。この姿に疑問は抱かなかったのです。なるほど、これは幼生体だと。うむむ、言われてみれば主より背丈が小さい……」


「恐らく、心の幼さがそのまま姿に適応されてるんじゃないかしら。長い年月を過したとは言っても、二人きりで、他の知的な存在との付き合いなんて無かったわけだからね」


「大人びた口調のくせに中身は子供のままって事か……それはそれでまた雑な……」


 雑な推測だ、そう思ったが作った人が言ってるのだから恐らくはそうなのだろう。おれはもうちゃんと考えるのを辞めたぞ!


 全裸なのも俺達を見るまで人という物を見たことが無かったのだろうからな。人が服を着るものだという認識が無かったのかも知れない。


「うーむ、しかしこの「服」は凄いですな。脆弱な人の身体を適切に保護している……。ああ、それで魔物の一部は「服」を着て居たわけですか……なるほど……」


 そういやゴブリン的な連中はパンツはいてたり、ちょっとした防具つけたりしてるもんな。それを見て察して欲しかったものだが、一体このドラゴンは人を一体どんなものだと思ってたんだ……。


「うし、取りあえず今後のことは外でゆっくり話そうか」


 帰りも歩くのは流石に嫌だったので女神に頼んで表に転移してもらいました。

 


「わあ……これが……外の世界……」

「おお……様々な音や香りに溢れている……」


 ティーラ達が感極まって涙を流している……。そうか、こいつら外に出たことが無かったんだな……。

 

「ほら、見て?ティーラ、アーシュ。向こうに家が沢山見えるでしょう?あれ全部に人族が住んでるのよ?」


「凄い凄い!お母さん、冒険者も居るんだよね!」


「ええ、そうよ。ユウがここの人族を冒険者に育て上げてくれたからね。まだ力は弱いけど、きっとそのうちティーラ達の元へ辿り着くでしょうね」


「ユウ殿!あちらの建物には魔族の気配がしますぞ」


「ああ、ウサ族だな。魔族なんだが、ここで人族と共に暮らしてるんだよ。知力が高い魔物に限っては地上で人間とのいざこざを起こさず、共に暮らすようにしたいんだ。その分ダンジョンで仲良く喧嘩してもらうけどな」


 村まで歩きながら今までの話、これからの話をざっくりと二人に教えていく。ティーラはルーちゃんと繋がった際にある程度事情を把握してくれたようだが、あらためてきちんとね。


「あと、忘れちゃ行けないのが「設定」だ。お前達がコアやドラゴンだって事は当然内緒にしてもらうわけだけど、じゃあなんなんだ?ってなった時困るよね?だから、お前達には俺の家族になって貰う」


「主はわかるのですが……、私もユウ殿の家族として振る舞えと……?」


「ああ、ティーラはルーちゃん達の姉で、長女、お前はどうすっかな……まあ、末っ子ってことにするか。あいつら雑だしそこまで気にしないだろう」


「む、むむ……で、では私は主のことをお姉ちゃんと呼ばなければいけないの……ですか……」


 なんだか凄い顔でうろたえるアーシュ。嫌なのかと思えば、どうもそう言う顔ではない。ただ、突然そんなことになってどうしたら良いか分らない、そんな表情だ。


「別に普段から『お姉ちゃん』って呼ばなくてもいいよ。他人の前ではそうしてくれってだけさ。口調も今更変えなくていいからな。ナーちゃんなんて子供らしからぬしっかりとした口調だしさ……」


 そんな具合で俺の家族に二人加わった。ざくっと纏めると……

==========================

 父   ユウ 

 母   パン

 長女  ティーラ

 次女  ルト

 三女  ナール

 四女  スゥ

 長男  アーシュ

 名誉娘 マルリ


 クロベエ

 ヒカリ

 小春


==========================


 メモ帳にさらさらと書いているとパンがのぞき込み、微妙な顔をして居る。


「……随分とまあ、子だくさんね……私達……」


「ああ、そうだな……随分と……な」


「ねえ、ユウあなたそのうち称号がビッグダ「それ以上はいけない!」


 本当にいけない!それ以上はいけない!


 と、向こうからノッコラノッコラとやってくる猫達の姿が目に入った。

 上に乗っているのはマルリさんだ。


 今回マルリさんにはクロベエ達と共に重要なお仕事があったので同行していなかったのだが、どうやらそれが終わったようで迎えに来てくれたようだ。


「おーいユウー!そっちはおわったのかのー?」


「ああ!終わったよー!そしてまた家族が増えたよー!」


「ほんとにまったく、お主らは仲睦まじい夫婦じゃのう!」


 頬を染めてそんな事を言うな!何度も言うがナニかをやって出来てるわけじゃ無いんだから!

 くそ、パン、お前も顔を紅くすんなクソ!最近少しリアクションがおかしいぞ!


 マルリさん達も加わり、さらにゾロゾロとあちこち紹介をしながら歩いてようやく村の東門まで辿り着いた。


 門と言ってもただ柱を立てて看板をつけた物だけどね。


「よーし、見てくれティーラ!アーシュ!これがこの世界で最初の村、はじまりの村!お前達がずっと待ち望んでいた冒険者達の最初の村だ!」


 立ち止まり、感慨深そうに門柱を見上げる二人。その表情はとても嬉しそうで、そしてその二人を見つめる女神の表情もまた、晴れやかな表情をしていた。


 

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