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第百七十二話 ティーラちゃん

 影でコソコソとステータスを見るふりをして目元を拭っていると、こちらに誰かがやってくる。

 ちくしょう、これは目でいい汗かいただけだからな!なんて急いで取り繕って振り向くと、なんだかもじもじとしたティーラがこちらを見ていた。


「お、おう。ティーラか。はじめまして、俺はユウだ。あの女神に喚ばれてこっちの世界に来て色々と手伝わされてる奴だ。よろしくな」


 そんな俺を見たティーラはまだなにかモジモジモジモジとしている。一体何だってんだ。


「……お父さん……」


 グハッ


 ナーちゃんやスーちゃんに「父上」とか「おとう」なんて言われてもここまで刺さらなかったが、これはヤバい。

 

 はにかみながら言われる「お父さん」これはヤバい。バフデバフかけた上で属性バッチリ合わせつつ、背後攻撃ボーナスがかかってさらにクリティカルが乗って倍率がドン!ドン!ドン!ってくらいヤバい。


「えへへ……!お父さん、素敵な身体を創ってくれてありがとう。ルーちゃんから貰った情報でお父さんの事を知りました。冒険者を創ってくれてありがとう。私とアーシュがやってきたこと……、無駄にならなくて済みそうです」


 はいきたー!


 にっこり笑って「ありがとう」からの超絶素直な俺への労いの言葉!一体どうしたいんだろうねこの子は。俺のダムを決壊させたいのかね!?くっそ、さっき拭いた涙がもう……!


「あ……ああ。でも、もうちょっと待ってくれよな。ティーラがアーシュ?と頑張ってくれたおかげでこのダンジョンはこんなにも立派だ。魔物の練度も高く、そこらの冒険者じゃ1階層も突破できないだろうさ。

 だから、他の子のダンジョンと同じ様に、塩のダンジョンの最終階層に入る鍵を隠す場所として、終盤に攻略するダンジョンとして使おうと思うんだけど、どうだい?」


「もちろんいいよ、お父さん。そんな立派な役割が出来たなんて聞いたらうちの子たちも皆喜んでくれるよ。それに聞いたよ、ルーちゃんのダンジョンと繋げるとうちの子達がやられて死んじゃうことなくなるんだよね?喜んでお手伝いするよ」


 なんていい子なんだ……なんてよく出来た子なんだ……。


 本当にあの女神が創ったコアなんだろうか……。スーちゃんのちょっとダラダラしたところなんて女神そっくりで納得するんだけど、ティーラはしっかりとしたお子さんで……ああ、反面教師。


「反面教師ってなによ!」


「くっ!だから急に心を読むのはやめろ!」


「……そりゃさ、私だって初めからこんなだったわけじゃないからね?これでも……その、結構成績は良くてさ、表彰もされたことだってあって……。ただちょっと実践となると其れが伴わなかったと言うか……なんというか……300年くらい頑張ったけどさ、なんか人類上手く育たなくってさ、やけくそで入れたエルフが思いの外頑丈でさ……あれー、私の知識って一体って……」


「やめろ!其れ以上はよせ!なんだか痛々しくて聞いてられない!」


 言わなくてもわかってるよ……。根っこの部分のお前はそこまでクソじゃないって。

 頑張り屋で、上の神との問題抜きでこの世界を純粋により良く育てたいって思ってるってさ。

 最初に会った時のお前はちゃんと女神らしく世界を憂いて俺を説得してたからな。

 大丈夫、誰が褒めなくても俺がしっかり……


「って!こらーーー!!!何顔赤くしてんだ!てめえ!また俺の心を読んでたな!」


「……だ、だって!またなにか碌でもない悪口でも考えてるのかと……もう、やだぁ……」


「『もうやだぁ』は俺の台詞だよ……」


 ◆◇◆


 なんだか生ぬるい微妙な空気から回復するまで30分ほど要しましたが、なんとか我々は回復することが出来、ティーラの歓迎会を開こうというお話になりました。


 それで、どうしようか悩んでいるのがアースドラゴン。彼はティーラがアーシュと名付けて可愛がるほど大切な存在で、永きに渡ってティーラと苦楽を共にしたもうひとりの功労者。是非とも彼も一緒にねぎらってあげたいと思ったのだが、会場をどうしようか非常に悩む。


 ドラゴンが姿を見せること自体は、多分紹介すればなんとかなると思うんだよ。この村の世界の連中は適応力高いからな。


 ただ、身体が結構大きいから適当な場所じゃ窮屈な思いをするよなあ、と悩んでいるわけで。


 さて、どうしようとティーラに持ちかけてみると、意外な解決策を提案してくれた。


「そういえばお父さんとお母さんにはまだ言ってなかったね。アーシュはね、人化出来るんだよ」


「「え、ちょ、まじでか」」


 一字一句綺麗にハモるのやめろ


「うん、時折入ってくる話が通じない魔獣なんかを退治してるうちにね、アーシュもレベルが結構上ったんだけど、50を超えた頃だったかな?人化を覚えたんだよね」


「ええ、そうですな。まだまだ若輩なので大した姿にはなれませんが、人の姿になれるのですよ。

 以前はよくそうやって人の姿になり、ダンジョンのトラップなどをチェックしていたものです」


 へえ、そういやコイツのステータス見てなかったな。どれどれ……


 =====================================

 名前:アーシュ(アースドラゴン)

 職業:フロアマスター

 LV:72

 体力:4820

 魔力:2480

 スキル:土石流、アースニードル、尖石弾、人族語、人化

 =====================================


 うっ……


 二人がどれだけ永きに渡って苦労し続けたかわかるステータスだな。ティーラもすごかったが、アーシュは更に上を行ってる……。こんなの倒せる冒険者とか居ねえし、今後暫く出ねえぞ。

 

 レッドドラゴンはもう少し弱かったが、ドラゴンは基本一定量削られたら冒険者の力を認めて云々見たいな役割にしよう……。じゃないと誰もゴールできねえ……。



 っと、せっかくだからこの場で人化してもらって、そのまま街に連れてってやるか。


「おい、アーシュ。今日はもうこのまま街に行って皆に紹介がてら歓迎会しちゃうからよ、人化してみせてくれよ」


 ティーラの事はまた適当に「また一人娘を呼ぶことが出来た」とかいって誤魔化せば良いんだが、アーシュをどう紹介するかはその姿を見てからじゃないとな。口調からして爺さんか、おっさんだと思うんだが、そうなったら「田舎の親戚で今日までティーラを見てくれてた」とか言えば良いわけだが、早めに姿を見ておかないと架空のおっさんの生い立ちとか語れなくなるからな。


「ですか。では、未熟ではありますが……えい!」


「あっ、未熟ってそういう……」


「うわ!なにそれ!そう来ちゃうの?」


 俺たちの目の前に立ち、照れ笑いを浮かべる其れは全裸の……

 

 全裸の可愛らしいショタだった……。

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