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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百六十三話 海の村 その名は

 満を持すぎるくらいに持したので流石にそろそろ開村式を始めましょう。


 司会はお馴染み、私ユウ。では張り切っていきましょう!


「よーし!君達こっち注目だ!今日はいよいよこの集落に名前が付いて『村』になる。今日は『はじまりの村』と『ヒゲミミ村』から村長達が来ているぞ。後で色々話を聞かせて貰おうな!」


 開会のつかみとして我ながら適当すぎるような気もするが、こんなのノリと勢いでわっとやったもん勝ちなんじゃい。


「では、先ず先に村長の紹介だ。ブレイク、ハンナ出てきてくれ」


 舞台袖からブレイクとハンナが現れる。見てくれ、この堂々とした風格。まさに村長に相応しい。

 村長と言うより、竜王とかそんな雰囲気すらあるから困るな。ファンタジー世界の村長っていうとお爺ちゃんとかそんな印象が強いもんね。


「こちらのドラゴニュートがブレイク、そっちの鳥人がハンナだ。こいつらは夫婦なんだが、どちらも中々に切れ者なのでそれぞれ村長、副村長をやって貰うことになった」


 俺が目配せをすると、それぞれ事前に打ち合わせたとおり挨拶と紹介を始める。


「俺はブレイクだ。そこのユウからいきなり村長をやれと言われて、良く分からないまま頷いたが、正直今でも良く分からん!」


 会場からどっと笑いがこみ上げてくる。バーグなんかめっちゃ笑ってるが、キンタは神妙な顔でうんうんとめっちゃ頷いている。いやいや流石にキンタはもう慣れててくれよ……。


「だが、この場所がより暮らしやすくなり、皆が幸せになるのは良いことだと思う。ユウが来てあまり日は経っていないが、あっという間に便利な物が増え生活が一変した。村というのは凄いのだと感じた」


 凄いのは村じゃなくてスマホのアレやウサ族のスキルなんだけどな。まあ村化するってならないとそこまでやらんから言ってることは間違いではないのか。


「うちはハンナ、ブレイクの妻で副村長をやれって言われた者さ。私もブレイク同様、村というのは凄いなと思った。食べ物が多く手に入るようになり、他の村からも新たな食料が手に入れられるようになった。これなら周辺に散らばっている集落を取り入れ、より大きな村にすることができるだろう」


 おお、他の村で流されるままそうなっている集落の統合を目標に掲げて居るぞ。すげえなこの村長達。


 「さあ、ユウ!教えてくれ!俺達の村の名前を!」


 くそ、ブレイクめ無駄に盛り上げて来やがったな!良いだろう、言ってやるよ!


「ああ、お前達の様な連中なら立派な村にできるだろうさ。そんなお前達に相応しい名前を考えた……村の名は……」


 敢えて引っ張ることにより期待度を高めるというこの自傷行為、これね。

 なんとなくノリでやっちゃうけど自分でハードル高めるからつらいんだよなあ……。

 実は村の名前、考えてなかったんだよね……。


 そのうち思いつくだろうと思ったまま早一週間。案が浮かばぬままあっという間に1週間が溶けてしまった。

 鳥と龍だからチキタツ村でいいんじゃねえか……だめか……。

 参ったな……何か良い名前は……うーん、海かあ。安直だけど……まあ、響きはいいしこれにしよう。


 いい加減皆の視線が痛くなってきたので、もう勢いで流してしまうことにする。


「む、村の名はぁっ!マリーノ!マリーノ村だ!」


「おお、思ったより良い響きじゃないか!ユウ!いい名をありがとう!」


 興奮したブレイクが俺の手をギリギリと握り乙女のように跳ねて喜んでいる。

 気持ちは嬉しいが、俺の腕が今にももげそうで辛い。


「わかった、わかったから!嬉しいのはわかったから離せ!」


 集落あらため、マリーノ村の住人達も口々に村名をコールして嬉しそうだ。


「では、引き続き会場を海に移して開村記念祭をやるぞー!今日は食べて飲んで思いっきり楽しんでくれ!」


「「「うおおおおおお!!!!!」」」


 今日一番の盛り上がりでした。はい。



 会場に向って移動しようとすると、珍しく女神が駆けよってきた。


「おーい!ユウ!驚いたわよ!」


「一体何に驚いたんだよ」


「何って……村の名前よ。あんた普通の名前もつけられたのね!びっくりしちゃった」


「失敬な!はじまりの村もヒゲミミ村も、それぞれ特徴を活かした良い名前じゃないか。今回のマリーノ村だって、マリンをもじって海を入れた名前で他と変わらないと思うんだけど……」


「それでもよっぽどまともよ!正直なところ『チキンタツタ村』とかつけるんだとばかり思ってたわ」


「は……はははなんだいそりゃ、よくわからないな……」


「知らないわけ無いでしょー?だってさ、鳥人と龍人が住む街なのよ?面白いじゃないの」


 なんてこった……俺のセンスは……俺の思考レベルはこいつと同じレベルだったのか……。


「ん?どうしたの?急に元気無くしちゃってさ。ああ!そっか今日まで頑張ったものね、疲れちゃったんだ。いいわ!今日は特別にゆっくり休んで遊びなさいよ!3つも村を作ったのよ!立派立派!」


 何故だか妙に女神が優しい……その優しさが今は少しだけ辛い……。

 だが、チキンタツタの件がバレるとウザいのでここはそれを利用して誤魔化すことにしよう。


「う、うんそうだな!流石女神様だなあ、隠しても疲れてるのバレちゃったかあ。よーし、飲むぞお!お前もたっぷり飲むと良いさ!」


「勿論よ!よーし!今日はビールサーバーたんまり御馳走しちゃうわ!」


「よ!そうこなくっちゃ!」


 こうしてマリーノ村が誕生し、3つの村の交流が始まった。

 後どれくらい村候補地があるのかは分らないが、後は酪農周りをなんとかすればかなり食の欲望は満たされるような気がするな。


 っと、今日はじっくり休むんだった。


 今日くらいは俺も女神に優しくしてやろう。

 せめて、あいつが変なところで寝ないように見ていてやらないと……。

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