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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百五十九話 鳥と龍市場に行く

 流石に苦情が来そうだったので、渋々ながらシゲミチくんを村に返すことにした。

 本当は海の村(仮称)の開村式まで居てほしかったんだけど後の思えば仕方ない。


 まあ、どうせ式をやる際にはキンタやバーグ等の村長連中を招待して顔合わせもついでにやるつもりだからシゲミチくんにはそん時来てもらえばいいか。


 というわけで、シゲミチくんを送るついでに冷凍した魚類を持った住人を何人か連れて交易をさせることにした。


 理由は簡単。手っ取り早く他の村の物を自分達が得た金で手に入れるという経験をさせたかったからだ。


 今後のことを考え、取り敢えず今いる住人全員にルーちゃんとの契約をさせた。

 そのうち海の家の管理人を兼ねたウサ族等を転送門(ゲート)の管理者として置くつもりだが、今のうちはこれで構わんだろうという荒業だ。


 シゲミチと共に転送門(ゲート)をくぐったのは5人。地底湖の湖畔に建てられた怪しげな小屋にビクビクしていたが、転送先で外に出た時は目を白黒させていた。良いねえ、その反応!久々だよ。


 外に出れば相変わらず賑やかで、俺に気付いたリリィがなにかもらえると思って駆け寄ってきたので砂糖を一袋分けてやった。


「これなんです?塩ですか?」


「こりゃ砂糖だよ。料理や飲物に入れて使う調味料さ」


「へえ……塩みたいですね……わ!甘い!」


「こういうのを作る時使うのさ」


 と、クッキーを手渡してやるとモクモクと食べ、改めて砂糖を眺めると大事そうにしまっていた。

 ウサ族は手先が器用で料理が得意な者が多い。リリィもそれに漏れず料理が好きなため、とても嬉しそうにしていた。


「ミーンの粉を水や生卵と混ぜたものに入れて焼くと美味い物が出来るんだが、色々試して良いのが出来たら食わしてくれよ」


「なるほど、ミーンの……。わかりました!その際は是非!ってもっとこっちに帰ってきてくださいねえ」


 ブンブンと手を振るリリィに別れを告げ、交易場に急ぐ。

 あ、シゲミチくんは待ち構えていた狩人に引き取られて行きました。毎日の見張り、ご苦労さんでした!


 空いている場所に魚屋用のスペースを作ってやり、魚を陳列していく。まだ少し凍っているが時期にちょうどよくなるだろう。


 ボックスに収納してきていた氷を砕き、箱に詰める。足が速い魚はここに並べてもらうのだ。


 今度ザックに頼んでここにも冷凍室を作ってもらうと色々捗りそうだな。食品の貯蔵はもちろん、氷だってあればかなり使うと思う。製氷機能を重視した冷凍室といったものが良さそうだ。


 さて、ただ魚を並べただけじゃあ「珍しい魚を売っているな」程度の印象しか保たれず、大して売れるとは思えない。


 なので隣に屋台を出し、魚汁と塩焼き、アジ(みたいな魚)フライを作る。


 香りは強力な武器となる。香りに釣られてやってきた間抜けな腹ペコ共はまんまと料理を買って食べ、その材料である魚を買って帰るという寸法だ。


 本当は試食として振る舞っても良いんだが、大して特別でもない日にそれをやると「今日はやらないのか」と後から強請られるハメになるからな。そういうのはそのうちやるであろうイベントまでお預けだ。


 料理を作り始めてからソワソワとこちらを見る視線が増え始めたことに気づく。しめしめ、獲物が餌に食いついたぞ。


 料理ができあがる頃には露骨に人が集まってきていて、すでに何人かは魚を買ってくれているようだった。


 よし、頃合いだな。


「らっしゃいらっしゃい!本日限定!ユウの魚料理屋さんだよ!理屈はいらねえ!まずは買って食ってくれ!まずかったら金は返す!さあ!よってらっしゃい!食ってらっしゃい!」


 夜店の手伝いで鍛えたやけくそセールストークが火を噴くぞ。

 ドドドッと押し寄せた客はたまたま通りかかったウサ族に押し付ける。いいよね……便利なウサ族……。


「え、ちょ、私はユウさんが来てると聞いて挨拶に、ちょ、ちょっと」


「いいから手伝え!手伝った分はちゃんと払うから!お土産も有るぞ!」


「え?じゃあがんばります!」


 砂糖はアホほど持ってきている。ウサ族には砂糖、これね。


 買った客が場内の椅子に座って美味い美味いと食っている。それを聞いた他の客達も屋台に集まり、かなり賑わってきた。ウサ族は3匹に増やしました。


「えー、この美味い美味いと大評判の魚、何を隠そう「海」という塩を含んだ巨大で不思議な水たまりに住む特別な魚です!」


「そんな魚がいるのか……」


「どうりで普段のより脂があって美味いわけだ!」


「穫れる場所はここから遙か遠い場所、しかし!なんと今日からこの市場で買うことが出来ます!」


「うおおおおまじか!!」


「新しい食材?何処で買えるの?」


「お前らの目は節穴か!何を隠そう、その屋台こそが隣の屋台、かわいい鳥さんと、イケメンドラゴニュートのお店だ!さあ、そちらのお店もご贔屓に!さあ、買った買った!」


 ◆◇◆


 2時間後、在庫がすっかりはけた屋台には干からびたウサギ5匹と鳥2匹、龍が3匹転がっていた。

 

 果汁のジュースを飲ませて蘇生し、ウサ族には小銭と砂糖を握らせ開放した。

 リリィにしたのと同じ説明をすると、思った通り大喜びで飛ぶようにぴょんぴょこ宿に帰っていった。


 砂糖を売るのはもう少し後だな。村にしてからミーン粉を使ったお菓子とともに売らせることにしよう。

 当分の間は魚で印象を付けて置いたほうが良い。


 ……俺が面倒だからな。


 鳥と龍をゾロゾロと連れて市場で買い物をさせる。すでに海の集落でも金を使った取引は始まっているため、さほど問題なく買い物が出来ているようだ。


 ボックスから荷車を出し、買ったものを入れるように伝えると、今まで帰りのことを考えて遠慮していたのか、水を得た魚のように大きな肉塊や野菜、ミーン粉の袋等を担いで戻ってきた。


 赤い顔をしたドラゴニュートが樽を一つ担いで帰ってくるのが見えた。やつめ、マサモ酒に堕ちたか。


 荷車を引き集落に戻ると多くの歓声に包まれた。魚と交換で様々な物を得てきたわけだから感動は大きかろう。


 ちなみに荷車を引いて戻ったは良かったが、浜から村に上がるには階段をのぼる必要が有ることを忘れていて頭を抱えることとなった。


 面倒なのでその場はボックスに入れてから階段を登り、上で再度出すという荒業を使ったが、製作キットで手動エレベーターを作って設置したので次回からは彼らだけでなんとか出来るだろう。



「というわけで、次回からは順番に交易に行ってもらうからな。毎日行くのは大変だろうから3日に1度くらい行けばいいだろう。足りなかったらもっと増やしてもいいが、最初は3日に1回な。

 次回は今日行った5人のうち二人が行きたいもの3人を連れて行くこと。そしてその次も同じ様に経験者2名に未経験者3名で組んで行って、最終的に皆が経験者になってくれたら良い」


 俺の説明を皆真面目に聞いている。現物を見てやる気がでないやつは居ないからな。飴はとても大事だ。


 さて、ここまでやれば後は時間が解決してくれることだろう。

 まだまだ手を付けたい所はたくさんあるが、取り敢えずこの集落はここで一時おしまいだ。


 1週間後、ここを村にする。




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