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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百五十四話 連れてきました。

 ザックとモリー、そしてシゲミチを小脇に抱えさっさと海の集落に戻ったユウです。


 いやあ、転送門ゲートを潜り通路を抜けた後視界に広がる海!

 それを見た一同の驚きようと言ったら!最高ですね。


「ぬあ!」


 ぬあ!って。ザック、それ人が出す声じゃ無いから。


「イケッ!?」


 イケッ!?って。シゲミチ、それ鳥の魔獣かなにかの鳴き声だから。


「おほおおおおおお」


 モリーのそれはいけないからやめな。


 それぞれ様々なリアクションを返してくれて満足……しかけたのだが、もういっちょ意地悪をしてやった。


「すげーだろ。これ全部水なんだぜ。池や沼とは違う物で海っていうんだが、この水がまた池とは違う味なんだよ」


 わざとそんな話をしてやると、味を見たくなるのは必然という物。好奇心の塊である少年二人はだだーっと海に駆けよると、両手で掬ってぐいっと思いっきりいきました!


「ぐおおおおお」

「ユウさん……謀ったな……」


 謀ってない謀ってない。


「毒じゃねえから心配するな。ただ、飲み水にはならんからな。普通は飲まないぞ」


「ぐ……この水は……一体……」


「ったく、お前ら味から推測できんのか?海の水、海水は塩が含まれている。だから塩の味がするんだ」


 その後当然の如くその理由を聞かれたが、面倒くさいから海中に塩がふき出るツボがあると言って誤魔化して置いた。地球の成り立ちと同じだとは考えられないし、何より惑星だの隕石だの化学反応だの話したところでオーバーキルにしかならんし、俺だってスマホ片手に説明する羽目になるのは嫌だ。


 もっとも、それはそれで「なんでそんな意味が分らない真似を……」と聞かれる羽目になるのだが、実際あの女神ならそう言う事をやりかねんので「女神の気まぐれじゃねえのか」と答えて置いた。


◆◇◆


「え?海水?そんなの海底に置いたジェネレーターから海水が出てるからに決まってるじゃ無いの」


 集落に居た女神(制作者)を捕まえて聞いてみたらそんな答えが返ってきたので頭を抱えてしまった。もっとこう、猫型ロボットが同居人の子供に出してたようなガチな惑星製作キットみたいな方法で創ったのかと思ったが、思った以上に雑なことをしているようだ。


 天地創造かと思ったら思った以上にテラフォーミングゲームみたいな感じでやんの。


 気を取り直し、ブレイクとハンナを捕まえてシゲミチ達と顔合わせをさせる。


「こっちの二人が村長候補でこっちの二人がお手伝いだ。双方挨拶!」


「「「「雑過ぎる!」」」」


 えー?だってもうめんどくせーもん……。

 

 しょうが無いので改めてきちんとそれぞれ紹介をして、そのまま話し合いに入る。

 冷凍室を作る場所とついでに砂糖を作る工場の場所も確保して貰う。それぞれ建物は用意ができ次第俺がちゃっちゃと建てることにして、村長候補共には場所となるスペースの確保、ザックには設計を任せる。


 モリーにはモルモル達の指揮を任せ、ダンジョンの水を水源とした水道を各世帯に引いて貰う工事を任せた。


 既に村をぴょこぴょこ飛び回っているモルモル達はすっかり受け入れられているため、今更色違いが増えたところで特に問題はなかろう。


 そしてシゲミチには重要な重要な村長講習と、村の視察、それを基にした村の運営設計を考えて貰う。勿論、俺もそれには協力を惜しまない。現在出来る村の産業や将来思想の情報を提供し、よりよい村づくりをして貰う。


「残念ながらこのシゲミチ君は1週間くらい……ええと、あんまし長くはいられないので、その間みっちりとやるからな。ブレイク、終わるまで漁に出れると思うなよ」


「ええ……でも俺が行かないと魚が不足して……」


「バカタレ!釣りや地引き網で余るほど獲れるようになっちゃったからこうして魚を保存する場所を作る人を連れてきたんだろうが。今更お前の一人や二人居なくても漁はなんとかなるんだよ」


「ぐぬぬ……」


「心配しなくても色々終わったら村長業務と兼業出来るようになるから。こいつらがいる村の村長だって狩人……、森の魔獣を狩る仕事と一緒にやってるしヘーキヘーキ!」


「そうだよ、ブレイク!あんたが頑張らないと!村長になるんだろ!」


「ハンナ、お前も村長候補だからな。まあ二人でって言うのもアレだから、お前は副村長として仕事を手伝うことになる……飛んで逃げても無駄だからな。ウチの変な女がどこに居てもお前を捕まえに行くぞ」


「ぐっ……」


「シゲミチは1週間の講習の間、二人の得意分野を見いだしてくれ。流石にどっちも計算がダメだったら困るが、分担して仕事を出来るようにさ」


「ええ、キンタさんよりは知的な顔をして居るのでなんとかなると思いますよ」


 さり気なくディスってやがる。キンタには何時も困らせられているのだろうな……。

 実際キンタはデスクワーク向けでは無いからな。統率力はあるのだが、いかんせんINTがな……。


 最初の顔合わせが終わり、今夜歓迎会をやるという話をしてブレイク達と別れた。


 適当な空き地にシゲミチ達の簡易ハウスを作ってやり、預かっていた荷物を出して片付けさせた。


「つうかさ、あの二人というか、この集落の人達を見てもあんまり驚かねえのなお前ら」


「驚く……?ああ、見た目か。ヒゲミミの人達で慣れたって言うか、あそこの人達よりわかりやすいし」


「そうそう、男の人は顔こそ見分けは付かないけど色が微妙に違うからわかりやすくて良いですよ!ヒゲ無いの最高!」


「うーん、それはそうなんだが、何処か魔族みたいな感じとかするだろ?特に男がさ」


「今更魔族とか言われてもなあ。モルモルとか、ウサ族の人とか村の住人みたいな物だし、狩人の話を聞いてる分にはタルットとか言う連中も外で会ったら普通だっていってたし……」


 タルットと外で会うこと有るんだ……気をつけよ……って会ってたわ俺も。


 言われてみれば、魔族と人間族の区別がふんわりしてるというか、無いような気がする……。

 

 女神の気まぐれ(ダイスロール)で人間系の枠組みに入れられているけど、作品によっちゃ連中も、いやそれどころかドワーフやエルフだって魔族の枠組みに入ってたりするからな。

 

 それはそれとしても、この世界における「魔族」と「人間族」は俺のせいでかなり距離が縮まってしまっているような気がするな。


 元々人間vs魔族と言う世界では無いので、そうなってしまうのも仕方が無い話なのだが。

 それが原因で停滞してるからってことで、女神はそう言う世界にして欲しい様なことを言ってたが、意図せずどんどんその依頼からかけ離れて行ってるような気がするな。


 ……まあ、ダンジョンでドンパチやってるから良いことにしよう……。

 何かあった時人間族と魔族が手を取り合ってそれに挑む、そんな世界でも良いじゃ無いか。


 と、無理矢理理由をつけて納得しているとマルリさんがやってきた。


「ユウー、海で面白い物を捕まえたから来てくれって子供達が呼んでるぞ」


 面白い物……?

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