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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百五十三話 もふもふもふ

 さて、日が変わって本日はザックを攫いにやってきました。


 シゲミチくんは今頃俺が昨日言いつけたリットちゃんへの引き継ぎと、出張の用意などで忙しくしていることでしょう。


 干物を食わせた上で、こそっとシゲミチだけに「もっと旨い魚が食える」と耳打ちをした所、


「味も気になりますが、見たことが無い魚というのに惹かれます!」


 と、やる気を見せてくれていたので、目を離した隙に逃げて隠れると言うことはまず無かろうと思う。



「こんにちはー!ユウサンがキタヨー!」


 ザックの魔導具屋の扉を開け、怪しげに挨拶をするとケモミミ共がモフモフと俺の元にやってきて取り囲んだ。


「怪しい奴!何者!」

「む、待て。こいつはユウだぞ」

「本当だ、ユウさんだ。温泉のユウさんだ!」


 なんだよその二つ名。どんだけ温泉のイメージが強いんだ俺は。ってなんでここにこいつらがモフモフしてんだ?


「聞きたいことはいろいろあるが、今は良い。ザック居るかい?」


「ザックとは誰だ?ユウの手下か!?」

「む、待て。ザックとは店長の名前だったはず」

「そうだな、店長だ。店長のザックさんだ!」


「お前らゲームのNPCかなんかかよ……。うん、その店長のザックはどこ行ったんだ」


「店長は客のところに行ったが、そのうち戻ってくるだろう」


「あ、そ。じゃあ少し待たせて貰うぞ」


 店内に設けられていた商談用のスペースに腰を下ろし、しばし店を眺める。

 

 ヒゲミミ村のケモロリ共はザックの魔導具に惚れ、3人揃ってこの村に修行に来たそうだ。

 まだ1から魔導具を作ることは出来ないが、店内の雑用は元より、店番や魔導具のメンテナンス等、他の業務は問題なく出来るようで、来客のあしらいも立派なもんだ。


 ザックめ、いつの間にケモロリ共をここまで仕込んだんだ……。

 何度も言うが、旅立ってからまだ一月も経ってないぞ。ここまで人員が育つとは思えないのだが。


「あれ、ユウさんだ。来てるって噂は聞いてたけどほんとに来てたんだな」


「おう、ほんとに来てるんだぞ。用があってきたんだが、先に俺の疑問を解決してくれ!」


「い、一体何だってんだよ……」


 その後ザックを尋問することにより、俺の疑問は見事に氷解した。


 そもそもこの店に居るケモロリ共はザックがケモミミ村に行った時、ザックに懐いていた弟子のような存在らしい。見た目的にはルーちゃん達と変わらんが、ステータス的には14~16歳とファンタジー世界的には既に大人と呼んでもいい年齢。


 親達もここに来るのに反対などせず、ダンジョンに向うドワーフ共にひっついて転送門(ゲート)をくぐり、村に帰る冒険者共にくっついてザックの元へ来たと言うことだった。


 成程、それで魔導具慣れしているわけか。


「私には及びませんが、あの子達も中々やりますのよ」


「お、居たのか!モリー!」


 ザックの懐からもそもそと桃色のモルモルが這い出してきた。


「居たのかだなんて失礼ですわね。ちょっとお昼寝して居ただけですのに」


 昼寝ってそんなところで……っと、要件を忘れるところだった。

 ここからは真面目なお話しの時間。姿勢を正してザックにむき直す。


「実はな、新たな村候補地を見つけたんだが、そこの村はここより気温が高く食べ物が傷みやすいんだ。その上、畑が無く、そこの人達は主に魚を食べて暮らしているんだよ」


「へえ、川とかデカい池の近くにある集落とか?でもな……畑を作らない意味が分らない……」


「まあ、見ればわかるとしか。それにヒゲミミの連中だって畑つってもマサモしか作ってなかっただろ。土地が違えば考え方が違うってわけさ」


「それもそうか。で、それでなんの用事で来てくれたんだ?」


「おっと、そうだった。それでな、ザックには大型の魔導冷凍室を作って欲しいんだよ」


「魔導冷凍室?」


「ああ、魔導冷蔵庫はあくまでも個人宅用だろ?しかも凍らせるほど冷やすことはしない。

 だが、魔導冷凍庫は建物全体がヒゲミミ村の外のようになっていると想像してくれれば良い。水が氷に成程寒く、肉や魚を置いておくとカチコチになってしまう、それが冷凍室さ」


「そりゃすげえが、なんたってそんな大がかりな者を?」


「理由は二つある。そこの集落では魚を大量に獲ることができる。それは集落の人の食卓を賄う以上、この村やヒゲミミ村に売っても余るほどにね。

 でも、魚は肉以上に傷みやすいだろう?だから魚を採ってきたらまずその冷凍室に入れる。そして凍った魚をそのまま交易所に運べば、傷まず運ぶことが出来ると言うわけだ。

 交易所では氷に乗せて売れば良いし、そこから各村に持って行く間くらいは持つはずさ」


「ヒゲミミ村はそうだが……この村はあそこから結構あるぞ」


 やべえ、忘れてた。なんでこの村に転送門ゲートがねえんだよ!ダンジョンが無いからか……。

 うーんうーん、それじゃあ……。


「うーん、じゃあついでに冷蔵車も作っちまおう。俺が乗ってる猫車を小さくしたようなもので、現状それを引くのは人間になっちまうが、まあ量が多くなけりゃなんとかなるだろ」


「おお、それは面白そうだな!冷凍室と冷蔵車だな!早速図面を書いてみるよ!」


 張り切るザックに出発は明日だと伝えると、「マジかよ寝れるかな」と言ってたが、こんだけ立派な従業員が居るなら多少長めにあっちに居ても良いんじゃ無いかと伝えると「ああ、現地の様子を見てから図面をかけばいいのか」と一人納得をしていた。


 こういう所馬鹿なんだよな、ザックは。

 

 何も行って直ぐに作れというわけでは無いのだ。とはいえ、その気持ちも分る。俺も発注されたら直ぐにかかずにはいられないからな。

 余り早く提出すると次回からそれを基準とした締め切りにされかねないので、提示された締め切り道理提出したりはするが。


 しかし、ザックにはまだ言ってないが冷蔵車は兎も角冷凍室には少し問題がある。

 

 それこそ現地である程度形になってから打ち明けた方が説得力が高まるだろうな。


 さて、クロベエと飯でも食いに行って明日に備えるか。


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