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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百五十話 いつもの説明会の回

 ウサ族や住民たちに手伝ってもらい、マグロを始めとした海鮮料理を大量に作った。

 調理中、しっかりとマグロを捕まえて戻ってきた女神を煽て、ビールサーバーも出してもらって酒宴の始まりである。


 流石に人数が人数なので、全員を満足させる量を作るのは辛い。そこで便利なのがバーベキューだ。

 浜辺にバーベキューコンロをいくつも出して発熱の魔石をセットし、それで焼いていく。


 コンロを出した時「ああ、炭」と気付いたので、これは始まりの村の産業にしても良いな。

 あの辺りにはいい山もあるし、植林も頭に入れた林業を一つの仕事として教えるのは良い案だろう。


 鍛冶屋の連中は石炭を使っているようだったが、埋蔵量の問題もあるし、農具なんかを作る時は木炭を使っても良いんじゃないかと思う。


 住民たちはビールに感動し、料理に感動し、いい具合に緊張がほぐれている。


 ここをチャンスとばかりに自己紹介タイムだ。


「さて、今日は改めて俺達が誰なのか知ってもらおうと思ってこの場を設けたんだ」


「知ってるぞー!サクサクの人だー!」

「サクサクの人ー!ありがとうなー!」


「だからサクサクの人じゃねえ!ごほん。俺の名前はユウだ。ちっちゃいのは左からルーちゃん、ナーちゃん、スーちゃん、そしてマルリさん。最後にあっちでマグロの頭に齧りついてるのがパンな」


「サクサクの人……名前があったんだね……」


「こらこら!そこザワつくとこじゃねえ!で、俺達が何をしに来たか、それはブレイク達には話してあるんだが、俺達は「村」という人が集まって暮らす場所を作って生活しているんだ」


「ここも人が集まってるけど村とは違うのか?」


「そうだね。ここは惜しい所まで来ているけどまだ村じゃない。村にするには例えばブレイクを「村長」という代表者にして、その村長の取り決めに従って住んでいる人の管理……誰と誰が家族だ、とか、子供が産まれたとかを紙に書いて纏めたりする必要がある」


「それをするとなにか良いことがあるのか?」


「一口に何が良いとは言いにくいけど、簡単なところだと全員で何人居るかはっきりするようになる。そうすると、何かを全員分用意するという時やりやすいだろ?あと、何か良くないことが起きてさ、全員いるか!って時に確認が取りやすくなる。」


「魚を分ける時なんかに良いかも知れんな、良くわからんが」


「嵐の後なんか誰それが居ない!って確認する時あるよね」


「ああ、そういう時良いな!良くわからんが」


「まあ、管理はまだあんまり気にしなくていいよ。それより大事なのは……」


 と、後は何時も通りに通貨の説明やそれによってもたらされる他の村との交易の説明だ。

 

 通貨の説明として物々交換の話をはじめた時点で殆どが首を傾げていた。


 其れもそのはず、この村は住人総出で漁師だ。ある程度身体が出来上がった子供達は速いうちから親とともに海に潜って魚介類を採る。


 なので、基本的に家族が食べる分しか取らないわけで、物々交換自体あまりしないようだ。

 家をたてるのも、なにか作るのも全部協力してやるため、対価という存在すら無いのだ。


 これにはユウさん困りました。


 しかし、ここで思い出します、サクサクを。


「ちなみに海の中にはお前らが大好きなサクサクの材料として欠かせない物が生えている」


「なんだ……と……」


 この一言、凄まじい食いつきです。


「で、だ。それが何かは後で説明するが、皆がそればかり取るわけにはいかないだろう?魚も取らないと腹をすかせることとなる。あ!先に言っとくけどサクサクの材料と言っても別の材料も必要だからそれだけじゃ腹は膨れないからな!」


 と、前置きをしてから他の材料は他の村にあるという説明をして、それを手に入れるには代わりになるものが必要であるという話、実物の代わりにお金を使うという説明をさらりとした。


 実演は後日シゲミチを騙して連れて来てやらせようと思う。


 そして、今日やった釣りや地引網を利用すれば今までの様に総出で海に出なくても十分魚を採れるということ、後日それを保管する場所も作ってやるということ、そしてそれによって空いた人員でサクサクの材料の一つである「砂糖」を作ったり、干物を作ったりと別の仕事をすることが出来るということを伝えた。


 その流れで、仕事をすればお金が手に入り、そのお金で他の村からサクサクの材料であるミーン粉や野菜、肉などを購入できると伝えると皆手放しで村化に賛成してくれた。


「まあ、今日明日にと言う訳にはいかないからな!この土地ならではの物をもう少し調べて、お前たちにやって貰うことを色々考えるからさ。

 近い内に俺の知り合いを呼んでくるから、それまでそいつから色々聞いたり学んだりして村に備えるようにな」


 そんな具合に硬い話は終わりにして、マサモの酒も開放し、いよいよ酒宴は魔境に突入する。


 踊るマルリさん!埋まる女神!踊る住人たち!海に飛び込む女神!暴れるマグロ!沸く住人!


「この酒というものはよくわからんが美味いし気持ちがいいな!」


 いつの間にか俺の背後を取ったブレイクが俺の肩を抱いて快活に笑う。

 いやあの、酔ってるんだろうけど、やっぱお前怖いよ……。


「う、うん……まあ、程々にしておけよ? これは飲みすぎると翌日辛いからな」


「そうなのか?お前の嫁さん、すごい勢いで飲んでるが……」


「すごい勢いで飲んでるからあんなアホ面になってるんだよ……」


「……あの顔は元々じゃなかったのか!」


「それには同意するが」


 

 そして翌朝、案の定砂浜に横たわる多数のマグロ……じゃなかった住人たち。

 幸い何事もなかったようだが、その殆どが二日酔いで苦しんだのは言うまでもない。

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