第百四十二話 湖底神殿
「いいか、何が居るかわからん。俺の背中に隠れながら進むんだ」
子供達を背に俺は水のダンジョン内にあった神殿2階層目の通路を進んでいる。
護るべき存在が居る、それだけで男って奴ぁ強くなれるんだ……!
「なにが強くなれるんだ……!よ……」
先頭を歩く女神が心を読みやがったらしいが、スマホランスで尻を突いて黙らせる。
「ちょ!やめなさいよ!お尻が消滅したらシャレにならないわよ!」
スマホは加護で頑丈だってだけでそこまで物騒なもんじゃねえだろ。
「尻の一つや二つ消滅した所でなんだってんだ」
「ちょっと!お尻は一つしか無いのよ?やめてよほんと!」
ギャアギャアと騒ぎながら進むと、やがて視界がひらけてくる。
どうやら広間に出たらしい。
如何にも神殿!という感じに作られたこの部屋には通路を挟むようにして燭台が並び、青い火を灯している。
一番奥には祭壇が見え、そこには青い球がふよふよと浮かんでいた。
「最深部じゃねえか!」
「……そ、そうねえ」
女神が俺から目をそらし空返事をし始めた。
……何か思い出したなこいつ。
ただの洞窟と言った具合だった火のダンジョンとは違い、明らかな人工物であるこの神殿。
「おかしいな……、野良ダンジョンはその土地の特色を持った物になる、リパンニェルという女神様からそんな話を聞いたんだよね。
ナーちゃんとこは火山の特徴を持った洞窟で、それを見た時なるほどなあと思ったよ。
水のダンジョン、ここも入った時、溺れた時、潜った時になるほどなあと思ったよ。
でもなあ、神殿なあ、今になって冷静になって考えると変だなあ、嫌だなあ、なんだろなあ」
「ええと……いーち、にー、さーん……」
「雲は見えないんだよなあ……」
「天井のシミを数えてんの!」
「まあいいや、ルーちゃん、ナーちゃんおいで」
「あ、ちょ!」
子供達の手を引き、ダンジョンコアに近づいていく。水のダンジョンコアはルーちゃんナーちゃんが近づくと、何処か嬉しげに二人の周りをくるくると回り始めた。
「ルーちゃんや、ルーちゃんはこの身体になる前のナーちゃんともお話ができたよね。この子の声も聞こえるのかな?」
「うん!聞こえる-!ままにね、久しぶりっていってる!」
「ほう、久しぶり」
「……そう言えば、前に来たことがあったかもしれない……わね?」
「またお昼寝にきたのっていってる!」
「お昼寝ね」
「え?あ、ああ!前に一度休憩したことが……」
「もういい……もういいんだよ……パン……」
「ユウ……」
「ひんやりとして静かで……昼寝には最高だもんな、ここ」
「なのよ!課題が辛くなったときとかさあ?静かな所でお昼寝したくなるわよね?ならない?それでさあ!あっ……」
「確保ー!!!」
やはりこの神殿はかつて馬鹿が作った昼寝部屋だった。
というか、昼寝をするためだけにここに地底湖を作った上で湖底に昼寝部屋を作ったらしい。
何度か使っているうち、ダンジョン化していたが女神的には特に問題ではなかったようで、寧ろ留守番ができて好都合とダンジョンコアにこの部屋を任せ、掃除などをさせていたらしい。
なんてやつだ……。
「まあ、その件については追々追求するとして、今はダンジョンコアを動きやすくするのが先だな」
「ほ、ほら!水のダンジョンでしょ?その件についてはさ、水に流してー?水のダンジョンだけにー?」
「今キャラデザしてるから静かに」
「……はい……」
ったく、場所が場所だけに駄女神っぽいことを周りでワイワイ言われると例の駄女神様が頭に浮かんでしょうがなくなるだろ……。
ええと……髪の色がかぶるのは仕方ないよな、水色だ。髪の長さをボブにして……いや、ナーちゃんがボブか。
ならばでっかいお団子……なんていうんだあれアップって言えば良いのかな?
そんな具合で、竜の角を模したアホ毛をつん、つんと。
いい具合だな。ルーちゃんが伝えてくる感じだとなんだか眠たげな雰囲気がするから……そんな顔で……。
耳は鳥人族っぽいアレにして、服は水をモチーフとしたワンピース……尻尾はドラゴニュートっぽい感じの水が滴る感じで……。
こんな感じだな。
「ざっくりラフだし色はついてないけどいいよな?」
「ん?あ、ああはいはい。だいたいのイメージさえあればいいし、色も指定さえしておけばいいわよ」
「んじゃこれでお願い」
ナーちゃんに続いて2回めなので淡々と進んでいく。
俺がかいた設定画をコアの上に置き、ルーちゃんと手をつないで儀式めいたアレが始まる。
「私の時もこんな感じだったのですね」
「そうだね、一緒に見てようねー」
「はい父上!妹が出来るのは楽しみです」
「そうだねえ」
妹が生まれる瞬間を娘と見守る……母親はアレだが悪いもんじゃないな。
「これはなにをしておるのじゃ?」
やべえ、マルリさんが居たんだった……まあいいか。
「うーん、ルーちゃんとナーちゃんの妹を作ってるんだけど……皆には内緒ですよ」
「む、こ、子作りか……?こ、こんな所で?」
「ちょ、勘違いしないでくださいよ?これは普通の子作りとは違うので……。
あー、もう、面倒だから言うけど、この子達は普通の子とは事情が違うんですよ」
「そうなのか?まあ、ユウ達はどこかわしらとは違うからの。
気にせんし、誰にも言うつもりはないのじゃ」
「ありがとう。じゃあマルリさんも一緒に見ようね」
「うん」
マルリさんは単純だから好きだ。モフモフで可愛いから好きだ!
っと、光が強くなって来たな、そろそろか。
「いいですか、見てて下さいって眩しくて見れないか。そろそろ終わるよ」
ゴウっと音が聞こえ光が止む。
光の中からルーちゃんとパンの間で手を握られた小さな女の子が現れた。
「む……これがからだ……わたしのからだ?」
「そうよ、あなたの身体。私とユウで紡いだあなたの身体よ」
「おー、じゃーそこに居るのがわたしのオトウかー」
思った通り眠たげな声と喋りだな。言いたくはないが、ナーちゃんは見た目と性格のギャップが激しかったから、今度はストライク感があって嬉しい。
「おお、オトウだ、えっと……ああそうか名前か。今回も俺が決める感じ?」
「うん、任せるわ」
「そういうと思ってググっといたわ」
「仕事早いなおい」
「お前の名前は今日からスゥだ。水という意味がある。よろしくなスーちゃん」
「よろしくね、スーちゃん!私はルーちゃん、お姉ちゃんだよ!」
「よろしく、スーちゃん。姉上の妹でスーちゃんの姉のナーちゃんです」
「よろしくの、スゥ。長女のマルリじゃ」
「マルリさん?」
「だめかの?」
「マルリさんがいいなら!」
「こらユウ!ややこしくなるでしょ!」
さり気なく家族になっているマルリさんを置いといて、スーちゃんのステータスを見てみよう。
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名前:スゥ
職業:ダンジョンコア
LV:1
体力:3200
魔力:1200
スキル:人化 ダンジョン管理 使役 召喚 自動翻訳 水中適応付与 水中歩行付与
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概ねナーちゃんと同じ感じだが、体力がナーちゃんより多く、魔力が少ないな。
スキルは水中適応と水中歩行、つまりスーちゃんの加護があれば呼吸や水圧の問題が消える他、水中歩行も付与されれば探索が楽になるというわけだな。
この二つが別れてるのは便利だな。
水圧や呼吸を気にせず泳ぎたい時には歩行は邪魔になるし、例えば海底を散歩したいと言うときであれば浮力が消えあるきやすくなる歩行スキルは便利なものになるだろう。
転送門を作って生贄に集落を任せられるようにしたらスーちゃんのスキルで海の探索をしてみることにしよう。
誰よりも早く新キャラのキャラ絵を描いてしまうという酷い段取りですが、
絵で見たほうが伝わりやすいかなって……。
もっと早くやれって話ですが、他キャラはまた追々と。