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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百四十一話 水のダンジョンへ(再)

「……」


「ご、ごめんて!ね?ユウさーん?」


「ユウーごめんなさい……」

「父上……気づかなくて……その……」


 俺は溺れた。

 

 そらもう、盛大に水を体内に取り込みまして、普通の身体であればヤベーレベルで溺れました。

 溺れたのに気づかない子供達に湖底までご招待されまして、薄れる意識の中でダンジョン的な物の姿をみましたよ、ええ。


 そういや俺ってこの世界では不老不死という設定だったなあと思い出すに至ったわけですが、その切っ掛けがこんなしょうも無い事だって言うのも凄く残念だよね。


 もっとこう、ドラゴンのブレスを喰らって「うわ!死んだ!完!」とか思ったのに生きててさ、驚愕の顔に染まったドラゴンから「なん……だと……?」とか言われて「……思い出したぜ……今の俺は……無敵だ!」とか言いたかったよね。


「はあああああああ!!!!ふんだ!」


「ほ、ほら……今度はちゃんと加護を与えたから……ね?」


「ユウー行こうよー!ちゃんと見せたいよー」

「父上が好きな人魚もいますので行きましょう」


「……人魚?」


「は、はい!身体の半分がお魚のお姉さんがいましたよ。母上がそれは人魚で父上が好きな種族だとおっしゃってました」


「……そっか、いく」


「やはり即答か……」

「うるさい、ちゃんと加護かけたんだよな?」


「勿論よ。子供達は加護要らないし、マルリさんもこの間加護を与えて潜ったからさ、その……あんたにもかけた気がしててね……ごめんね?」


「……ごめんで死にかけちゃたまらんが、まあいいや……行こうか……」


 そうさ、男たる者いつまでもグチグチと言っていたらイカン!

 過ぎたことはスパッと水に流し、前に進まねばならぬのだ!


「よし!今度こそ行くぞ子供達!」


「「「おー!」」」


 再びルーちゃんナーちゃんに手を引かれ水に入っていく。

 若干トラウマになっているのか、足を踏み入れる瞬間顔が引きつったが、水に入った瞬間前回とは明らかに違う事に気づいた。


「あれ?これ同じ水だよな?」


 なんというか、抵抗を感じないのだ。

 それどころか浮遊感も一切無く、普通に地上と変わらず歩けてしまう。


「理屈は分らないけど水中でも地上同様に活動出来る加護なのよ」


「そこは知っておけよ!ドヤ顔で女神パワーを科学に置き換えて解説するところだろうが!」


「うるさいわね!いい加減なこと言うと詳しい人に怒られるから嫌なのよ!」


「……そんなメタい事を……まあいいや。快適なのには変わりないし。

 スイスイーっと泳げないのはちょっと寂しいけど溺れるよりマシさ」


 湖底を歩いて行くと、様々な魔物とすれ違う。

 如何にも強そうなでっかいサメや、背中にイソギンチャクを背負った亀、ギラギラとした目を持つ水玉模様の毒持ってそうな大蛸に、殻をガッチガッチさせながら魚を追い回す巨大な貝。


 そのどれもが俺達を見ると気さくに挨拶をしてさって行く。

 既に話は通してあると言う奴だな。

 火のダンジョンはなんだかカチコミみたいな感じだったから、これは楽でよろしい。


 ここもまた天然のダンジョンなので、知性が低い者は襲いかかってくるのだろうけど今のところは平気だ。


 遠くにぼんやりと光が見える。

 恐らくはそこがダンジョンのメインとなる場所なのでは無いかと思う。


 周囲を見渡せば、色とりどりの珊瑚や極彩色の海草。

 イソギンチャクも居れば、絵に描いたような赤い蟹まであるいている。


 これで淡水だというのだから力が抜ける。


「あ!来ましたよ!父上が大好きだという人魚です!手を振ってますね」


 来た来た!来ましたよ!どこだ?どこに居るんだ!人魚は!


「お待ちしていました、女神様御一行様!」


 背後から綺麗な声が聞こえる。

 心なしか良い匂いが漂い、期待に胸を膨らませて振り向くと……


「ほらなああああああ!!!」


 やっぱり上半身が魚で下半身が人間の魔族が微笑んで?やがる。


「ほ、ほら……ぷす……あんたの……くっく……好きな……あはっ人魚よーゲラゲラゲラ」


「お前其れこの人魚?達に失礼だから!」


 人魚?に適当な挨拶をしてさっさと光源に向う。

 くそ、生意気に良いお尻しやがって!見ちゃう自分が悔しい。


 っと、切り替えていこう。


 光の元は湖底神殿だった。

 

 入口は開かれているが、モヤモヤと揺らめいていて、何か膜が張っているように見える。


「あれがメインディッシュね。前回はお腹が空いたからここで戻ったけど今日はちゃんと探索しましょう」


「それは賢明な判断だ。今度俺をおいてさっさとダンジョン見つけて見ろ、ただじゃおかねえ」


「さみしがりー」

「ちゃうわ!悔しいだけだい!」


「ほらー、ママー、ユウー先行っちゃうよー?」

「あー、ごめんごめん!今行く!」


 ルーちゃんに急かされ、入口をくぐる。

 ぷるんという、何時までも揉んでいたい心地よい感触と共に身体が膜をすり抜ける。


 加護がかかっているために外と感覚が変わらんが、どうやら中は空気で満たされていて地上と変わらぬ環境になっているようだ。


「これなら中で野営もできそうだな」


「この部屋はセーフルームみたいだしね。魔物の気配を感じないし、冒険者に開放したらここで休憩させるといいわね」


 少し進むと階段が見えた。ここはどうやら複数の階層が存在するようだな。


 メインであろう神殿の他にそれを囲む湖にも魔獣が居るとは中々歯ごたえがあるダンジョンだな。


「ここから先はまだ仲良くなって居ない魔物が出るはずだ。念のため気を抜かず行くぞ!」


「「「おー!」」」


「では、女神様、お先にどうぞ!」


「あんたってやつは!」



 こうして俺達のダンジョン攻略が始まる……。

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