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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百三十三話 次の旅をたくらむ

 はじまりの村に滞在して半月後が経った。

 多少戸惑いながらも双方の村人は転送門ゲートを使い始め、互いの村から転送門ゲートを行き来する姿が見られるようになった。

 

 それに伴い、物好きなヒゲミミ村の村人がはじまりの村に訪れるようになり、漸くマーサの誤解が解けることとなった。

 俺としてはこうなる前に温泉に招待して驚かせたかったんだけど、忙しくて其れは叶わなかった……。


 ヒゲミミ村の住人達は雪がない世界に驚き、始まりの村の住人達は逆に初めて見る雪に驚くという思ったとおりの展開になって俺はもう大満足であった。


 さて、そんなある日俺は家でスマホのToDoアプリを弄って予定を確認している。

 今では村は二つになり、それに加えてダンジョンや俺の家周辺のこともあってアプリでも使わんと把握できなくなってきたからな。


 勿論これは普通に地球の誰かが作ったアプリなので特別な力などなにもない。

 ただ単に「やることリスト」を作って眺めるだけのアプリである。


「はじまりの村の用事はオッケー、ヒゲミミ村もまあオッケー、ダンジョンもオッケー!」


「なにアホヅラしてオッケーオッケー言ってんのよ?とうとう……壊れちゃった……?」


 本気で心配そうな顔をする失礼な女神。

 やることが無くなったという事を察してくれよな。


「わかりやすく言うと、暫くの間自然に任せてもいい状態になったってことだよ。

 つまりは、俺達にまた暇ができたってこと」


「あら!じゃあ私久々に日本に泊まり込もうかしら!面白いお店いろいろ見つけたし、ちょっと飲み歩いて……」


「違うだろ!つか、そんなずるい真似は許しません!」


「ケチ!」


「ケチ!じゃなくて。そろそろさ、他の村候補を探しに行こうと思うんだよ。

 でさ、今回から探す方針を変えようかと」


「方針?」


「どうせさ、女神様の事だから、無意識に優しさが溢れ出して火山以外にも加護がかかっちゃったところが何箇所かあるんでしょ?」


「うっ」


「当然そういった場所は住みやすくなるから、集落があるに違いない」


「……でしょうね」


「そしてお前の加護がかかった所はなんかこう、ダンジョンができちゃう!」


「……」


「ダンジョンコアと仲良くすればどんなに遠く離れていても村間の移動は楽ちん!」


「はっ!その発想はなかったわ……」


「つうわけで、大人しく海辺のダンジョンが何処にあるか吐きなさい」


 年配の刑事のように優しくパンの肩に触れながら言うと、パンは涙ながらに顔を上げる。


「け……刑事さん……でも……私……本当に……知らないの……」


「ブーケニュール……といったか。お前さんの同僚……、今のこの世界見たらどう思うかなあ……。

 う~さ~ぎおーいし……」


「ちょっとブーケは関係ないでしょ!というか別にあいつから郷愁なんて感じないから!何よその歌!」


「ダンジョンの場所は知らない……。そうかもしれないな。だがよ、お前さんは知っている。

 海辺に集落の一つや二つ……あるんだろう?」


「……あります……集落はありまあす……」


「そんな何かみたいな言い方しなくていいから。ほら見ろあるんじゃねえか」


「急に素に戻らないでよ!あたしがバカみたいじゃないの!」


(あ、ようやく気付いたか)


「ようやく気付いたか!じゃないわよ!あるわよ、集落!魚とって暮らしてるとこが」


「ほう、魚ですかいいですね。近くで米とか酪農とかしてない?」


「流石にそこまで都合がいい場所じゃないわよ……」


 まあ、そうだろうな。何もいっぺんで済まさなくても良いんだ。

 俺が欲しいのは魚介類。そしてそれから得られる出汁だ。


 川魚のシンプルな白身は嫌いじゃない。

 でも、暴力的な脂を持った海水魚!たまらない!

 貝!エビ!カニ!居るのか知らんけど食いたい!


 というわけで、パンから海辺の集落の場所を聞き出すことにしたわけだけれども、やっぱりあったのでほっとした。


 問題はその周辺にダンジョンがあるかどうかだが……。

 無かった場合はまたのんびりと帰ってくることになるが、もしその場合は向こうでアホほど魚介類をとってボックスに入れて帰るからそれはそれでいいのだ。


 目的はあくまでも俺の食欲を満たす事。


 今回はそれくらいゆるい感じで行きたいと思う。



 昼食の際に皆に相談すると、ノリノリで賛成してくれた。

 海のことを「とても大きくて果が見えない水たまり」と説明したもんだから子供たちの食付きは半端なかった。


「凄いのう、凄いのう!そんなに大きな水たまりには何がいるのかのう!」


 一番ワクワクしているのはヒゲミミ村の村長さんなわけだが、ヒゲミミ村(あっち)はマルリさんがいなくてもなんとかなりそうだし連れて行くことにした。


 もし村にするとなった時、サンプル……になるかはわからんが、実際に村長をやってる人を見せれば少しは違うかも知れないしな。


 そして運良くダンジョンが近場にあった際にはやはり転送門ゲートで繋いで交易をする予定なので、はじまりの村とヒゲミミ村の名物をお試しに持っていく必要がある。


 という訳で俺がやることは決まった。


 交易場から二つの村の名物を買う。

 最近姿が見えないクロベエ達をみつける

 料理スキルがあるウサ族とメイドスキルがあるウサ族をさらう

 仕上がったモルモルとアイスモルモルに名前をつけて召喚を楽にしておく

 猫車をもう少し大きく改造する


 だいたいこんなもんか。


 シズクにはさっさと連絡をしておくとして、キンタにはギリギリになってから報告しよう。

 じゃないと絶対引き留めようとするだろうからな。




  

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