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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
第7章
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第百三十二話 久々にダンジョンへ

 会議の後からスキを見つけては「最近の女神は可愛い」とか「賢そう」とか「知性がぱねえ」とかコツコツ言いまくったおかげで、奴はご機嫌でヒゲミミ村に向かった。


 村間転送門をあちらの村民が自由に使えるよう整備をするためだ。


 転送門ゲートを使用するには、仕様上ルーちゃんと眷属(お友達)登録をする必要がある。

 面倒でダンジョンの仕様と統一してしまっているのがその理由だが、そのため使用の際には予めルーちゃんかナーちゃん、そしてルーちゃんからその権利をスキルとして与えられた者に登録して貰う必要がある。


 転送門ゲートの事は一度登録を済ませてしまえば以後は自由に使用できるので、登録用の係員と其れが詰める小さな施設の設置に向かったわけだ。


 今回もウサ族から一人係員として拐かされていったが、ウサ族はどんどん増えているそうなので尽きることはないだろうと思う。


 便利なお友達を作ってくれたもんだなあ……。


 ちなみに冒険者にはギルドカードが発行され、一度作ってしまえば其れがダンジョンへ続く転送門ゲートへの通行証となるわけだが、ダンジョンに潜らない一般人が紛れ込んでしまうと気の毒なので、ダンジョンに用が無い人向けに色が違う「村間専用」のカードを別途発行することにした。


 紛れ込んだ所で登録した以上は死ぬことはないけど、なんか一応ね。



 奴は気分屋なので、転送門から出てきた冒険者と意気投合して飲みに行きかねないと判断し、きちんと見送りに行った。


 ルーちゃんナーちゃんを引き連れて行ったのでまあ、問題は起こらないだろう。

 気付いてるか、パンよ。子供たちがお前のお目付け役なんだぞ。


 で、俺はせっかく来たのだからとマルリさんを連れ、ダンジョンの様子を見に向かったのだ。


 転送門自体は村から来る時に使ったので、「ここのは大きいのう」くらいの反応だったが、出た後は目を丸くしていた。


「洞窟の中からこんな所にでるとはのう。別の村か何かかの?」


「いや違います。ここはダンジョンの中、魔物と人が戦う場ですよ。

 説明した通り死ぬことはないけど俺から離れないでくださいね」


「うむ、死なずとも痛いのはいやじゃからな!」


 あちらこちらから戦いの音が聞こえてくる。

 よく見れば、ダンジョンのあちこちにパーティーを組んだ狩人たちが戦っている。


 すっかりダンジョンらしくなったもんだなあ。

 もう直ぐこれにドワーフや猫耳も加わる。

 そうなれば尚更それらしくなるだろうなあ。


 以前のようにいきなりおっさんがリスキルを仕掛けてくることもなく、きちんとバランスよく配置されたままのようで安心する。


(クソゲーから良ゲーに変わった感じがするよ……)


 入り口周辺は弱い敵がポップし、奥に行くに従って敵は強さを増していく。

 何度も何度も冒険者が歩いたためなのだろう、ダンジョン内に街道のように道が出来ていた。


 それに沿って歩いていくと、大きな池に到着する。

 ザバリと音を立てて現れたのはタルット。


「おりゃあ!新人かあ?こんなとこまでよう来たの、だけどもうオネムのじかんやぞ」


「……」

「なんじゃこいつらは?妙な魔物じゃのう」


 俺達を取り囲み、ジリジリと近づくタルット達。

 ははあ、こいつ俺のことを知らない、後から生まれた連中だな?

 魔物の成長速度は知らんが、ずいぶんとまあ立派に育って……っとお!


 突然タルットの1匹が殴りかかってくる。


(めんどくせえなあ……)


 ボックスからキウリを取り出し、遠くへ投擲する。


「あ!キウリやん!なんてことするんや!おい!拾うな!ワイのや!おい!」


 キウリを追いかけてタルっと達が池に潜っていく。

 やがて、他の物に拾われたのか、諦めたのか1匹のタルットが水から顔を出したところを槍で優しくつっついてやる。

 

「ぐおおおおおお!!!!チョン、って触っただけなのになんやそれ!」


「めんどくせえ、おい、お前らの親分連れてこい」

「はあ?なんでワイがそんな……」

「リスポンしたいのか?」

「ほな……また……」


 間もなく一回り大きなタルットを連れてきた若いタルットは「ほら、あいつですわ」と息巻いている。

 俺が呼べと言ったのは喧嘩をするためじゃねえんだけどなあ……。


「む、お前アレだろ、おっさんだろ」

「なんや誰かと思ったらユウさんやないですか」

「お前さあ、若いもんの教育ちゃんとしとけよなあ。こっちは調査に来てんだよ、お前らの数を減らしに来たわけじゃねえぞ」


「お前……ユウさんに喧嘩売ったんか?」

「ええ……知り合いなんです?」

「この人はダンマスの親や。フロマスの親の親や、わかるか?」

「ええと……うわあ、魔王様ってことやないですか!」


「誰が魔王だ!まあいいよ。俺に殴られたら一発で暫くお仕置き部屋行きになるんだから、今後はちゃんと相手見て動くようにしろよ」


「は、はい……すんません……」


「まあ、水から飛び出して囲む作戦は良かった。そろそろ強くなった冒険者が調子に乗ってくる頃だ。

 お前たちもそうやって工夫しないと勝てなくなるからな!精進した前」


「ははあ、ありがたきお言葉!」



「ユウ、お前さんは魔物とも付き合いがあるんじゃのう」

「ああ、ここの魔物は厳密には人間と敵対してないんだよ」


「そう言えば、ここでは互いに死なないといってたな」

「そうそう、お互いに鬱憤を晴らし合ったり、素材を取り合ったりする雪遊び場みたいなとこさ」


「変なものを考えるわい。くっくっく、じゃが好きじゃよそういうの」


 マルリさんにほっこりしているとやがて湿地のダンジョン最奥、モル丸の間にたどり着いた。


「おっす、モル丸元気にやってるか」

「おお、ユウ殿!久しいですな!日々鍛錬に明け暮れておりますぞ」


「冒険者は来るようになったか?」

「いえ、まだですな。しかしそろそろ来る気配もあります」


「今度連中に新たな武器が広まるはずだ。となればお前もボヤボヤしてられんぞ」

「はっ、であればなお一層鍛錬を続け、必ずやここの護りを鉄壁に……」


「いやいや、良いくらいで負けてくれないと冒険者たちが次の階層に行けないだろう……」

「それもそうですな……まあ、数で来られれば危ないと思いますので、その際は恐らく」


「ん、まああまり難しく考えんようにな」


 モル丸には周辺の魔物たちにも冒険者が強くなる事を伝えてもらうようお願いした。

 ルーちゃんの調整で2階層はここより魔物が強く育って居る。


 例え、この階層を突破したとしてももう少しここで鍛えてから行かないと歯がたたないだろうからな。

 モル丸の間周辺の魔物に冒険者の強化を伝えれば意地になって鍛えるはずだ。


 となれば、ここを突破するためさらなるレベリングに励んだり、武器の強化に励んだりするようになるはず。


 モル丸を倒せるまでになれば2階層の魔物たちともそれなりに戦えるようになるだろう。

 

 2階層にはちょっとしたボーナススポットもあるから、冒険者諸君には是非頑張って到達していただきたい。


 となりから「クウ」と可愛らしい音が聞こえた。

 ちらりと見ればマルリさんが照れ笑いをしている。


「今日のご飯はオムライスですよ」

「おお!オムライス!わしオムライスだあいすき!」


 ぱあっと花のように笑うマルリさんにすっかりやられてしまった。

 残りの視察はなかったことにするとマルリさんを肩車し、帰り道を急いだ。


 

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