第百二十八話 ウサ族とモルモルとウサ族と俺
あとを付いてきたモルモル達に上下水道の接続をお願いした。
ザックやモルモルの活躍で今では村中を地下水路が駆け巡っている。
なので大規模な工事の必要はなく、既存の水路まで接続する経路だけ作れば良いというわけだ。
モルモル達は2班に別れていた。
土を吸収しながら水路を掘る掘削班。
体液で土を硬化させ仕上げる仕上班。
体液で土を効果、其れを聞いた時は驚いた。
俺の家地下でのブートキャンプで編み出された秘術らしい。
どのモルモルにでも芽生えるスキルではないらしいが、素質を持つモルモルは複数存在し、上下水道の工事に大活躍しているそうだ。
側溝やらパイプやら通す必要が無いのはリーズナブルでよろしいな。
間もなく、うちの工事が終わったようでモルモル達が報告にやってきた。
「ユウ殿、工事は終わりました」
「後日何か不備がありましたらば、ザック魔導具店まで連絡して下され」
社員教育がしっかりとしてるな。
あのモルモル達がこんな立派になって……。
「ああ、そうだちょっとこれ食いながら聞いてくれ」
モルモル達にリンゴのような実を投げてやって、今後の予約を入れる。
「今後このあたり一体に新たな家が建ち並ぶことになっているんだ。
直ぐ直ぐではないが、そうなったら大規模な工事を頼むことになると思う。
ザックに伝えておいてくれ」
「分かりました!必ずや伝えますぞ!」
「あ、そうだ忘れるところだったよ!今そこでウサ族の連中が家を作ってるからさ、一応そこにも上下水道を引いてやってくれないか?」
「重ねて了解ですぞ!よし、皆の者休憩は終わりだ!次の現場に行くぞ!}
「「「おー!」」」
モルモル達と一緒にウサ族の様子を見に行くと、既に壁を貼る作業に取り掛かっていた。
だからはええってば!
「おお、ユウ殿!そろそろ呼びに行こうと思ってましたぞ!」
「だから速いってば!お前ら大工極めすぎだろ!」
「いやいや、ユウ殿には叶いませんよ。目を離したスキにあんな立派な建造物を既に…。
いつか必ずやその域に追いついてみせますからな!」
女神が寄越したツールに追いつくってそれもうまさに神の域だから!
「ちょっと今のうちに上下水道の設置するぞ」
「おお、ありがたい。では我らも壁を急ぎます!」
「いやゆっくりでいい、ゆっくりでいいよ……」
森ウサ族が死にそうな顔で働いている。
大工のバケモン達に合わせてたらそらそうなるわ。
「おめーらは弟子たちの様子を見るってことも覚えやがれ!
みろ、森ウサ族を!ひどい顔じゃねえか!」
「なんてこった、そう言われてみれば我らも最初は虚弱でしたな。
お前ら、無理をさせてすまなかったな、少し休んでいいぞ」
「少しじゃなくて一服にしやがれ!おら、これでも皆でくいな」
ボックスからリンゴみたいな実をゴロゴロと出してやる。
ホントはアンパンかなにか差し出せりゃいいんだが、砂糖がな。
「「「有難うございます!棟梁!!!」」」
「誰が棟梁だ!」
ったく、俺は大工の親方になったつもりはないってーの!
ウサ族がいっぷく中に水回りを整えていく。
モルモル達に支持を出し、トイレとキッチン、それと風呂場になる部分にそれぞれ上下水道を引いてもらった。
村でもまだ一般家庭に普及していない風呂場、どうしようか迷ったが今後のことを考えて設置することにした。
ウサ族はこれからこの家でともに暮らし、暫くの間大工として働くことになる。
森を奪った上に強制労働めいた事を強いるわけなので、どんな鬼畜だよと思うが、まあいいのだ。
人化したことにより今後も生活のため働く必要はあるだろうから、その職業訓練にもなるし、人間の生活になれることも出来るし、この家での共同生活と労働はいい経験になることだろう。
そこで問題になってくるのが風呂だ。
ウサギ時代には水浴びをする風習などないわけで、ダンジョンのウサ族共も最初は酷いものだったらしい。
見かねたパンが風呂を与えたおかげで良い匂い漂う、俺を惑わすやばい獣人に生まれ変わってしまったわけだが。
(実際パンの誤爆加護で寄り人間に近い姿に生まれ変わったわけだけれども)
そんなわけで、肉体労働の後に風呂に入らぬなど言語道断であり、村近くで暮らすのであればもう少し人間らしく進化した方が良いわけであり、そのほうが俺も遊びに来た時幸せなので、どんどん加護を受けていってもらう!
ちょっと本音が出てしまった。
兎も角、お風呂は必要!必要なのです!
ちなみに肉体労働は男共の仕事で、女性陣には内装の手伝いや、周囲の簡単な整備をお願いすることにする。
ちょっとした花壇を作ってもらったり、家庭農園をやらせてみたりだな。
家を作り終わったら、店でもやらせて見るのも良いかもしれないな。
やりたいことがあったら言うように伝えておいて、やりたい仕事につけるように手伝ってやろう。
……俺だって森を潰したことに多少の罪悪感はあるんだい。