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第百十八話 そり遊び

 流石に大物なので図面を書くのに時間がかかる。

 

 こんな事なら無理矢理にでもあいつを連れてきておけば良かった……。


 とは言えぼやいていても始まらない。

 ルーちゃんナーちゃん達の楽しげな声をBGMにしながら必死に手を動かし続けた。


 一時間後、漸く図面が書き上がった。

 出来上がる前に日が暮れるのが嫌だったのでかなりはしょって書いたが、それなりには見えるだろう。

 

 2階建ての建物で、屋根は合掌造り風に書き換えた。

 早速中に入り内装を仕上げていく。


 製作キットを見ると断熱材が作れるようだったので、グラスウール製のそれをみっちりと敷き詰めた。

 ある程度は見た目もこだわりたかったので、内側には半分に切った丸太を貼り付け、

 ぱっと見は内側も丸太のみで作られているように見える。


 雰囲気的に暖炉が欲しかったので置いたが、この環境で薪を用意するのも大変なので熱源は魔導具にした。

 この間手に入れた火焔石だ。

 

 ドロップ品の火焔石はサイズがまちまちだったが、3つほど漬物石くらい有る大型の物が混じっていた。

 これならこの建物中を保温するのに十分な熱量を放出してくれる。

 ダンジョンで手に入れた魔石に大きな物があった。

 それを使えば1年くらいはつけっぱなしでも魔力が枯渇する事は無かろう。


 一番悩んだのがトイレだ。


 水のことは無限にある雪から賄えるが、出した物の処理は大問題である。

 

 モルモルを派遣すればいいのだが、寒いところにぽつんと置くのも可愛そうに思えた。

 良い案が浮かばなかったので、取りあえず穴を掘って調査してみることにした。


 ある程度の深さまで掘ると、火山の影響が出始め、土がホカホカとしている。

 これだけ温度が高ければ水路を作っても凍ることは無いだろう。


 あちこちで暴れて資材は有り余っている。

 

 遠慮無く集落まで排水路を延ばし、温泉施設の汚水槽と接続した。

 こうしておけば基本的にあちらで浄化作業が出来るし、定期的にこちらまで地下通路を散歩して貰えば排水路も清浄に維持されるはずだ。


 うん、ガバガバだがなんとかなるだろ……。

 考えるのが面倒なんだよ……。


 排水問題を無理矢理解決したので、厨房とトイレを作る。

 

 宿泊できるようにしても良かったが、取りあえず大きめの休憩所という体で寝室は作らなかった。

 どうせ建物中あったかいのだ。

 いざという時はそのまま雑魚寝しても風邪は引かないさ。


 取りあえず、ここはこんなもんでいっか。

 キッチンは自由に使えるようにして、基本は自炊用とする。


 何かイベントをやるときだけウサ族を連れてきてカフェみたいにするのもいいな。


 気づけば既に夕方だ。

 

 外に出るとルーちゃんナーちゃんはまだソリで遊んでいた。

 飽きずにずっと遊んでいたのだろう、あちこちにソリの跡が残っている。


「おーい、今日はもう帰るぞー」


「「はーい」」


 聞き分けが良い子供達で嬉しいぜ。


「父上!明日も、明日も来ていいですか!」

「ユウ!これはママにも見せるべき!」


 そうだなあ、明日も暇だろうし、それもいいかー。


「よし、じゃあパンを誘うのは君達の仕事だぞ!明日はシゲミチ達も誘って皆で来よう」


「「やったー!!」」


 奴らも連日仕事漬けでろくに遊んでいないはずさ。

 あんくらいの年の頃に俺は何してたって、勉強をそこそこに毎日友達と遊んでたからな。

 ゲームをしたり、釣りに行ったり、カラオケ行ったり……。


 あー、そう言えば歌というものはウサ族の妙な物くらいしか聴いた覚えが無いぞ。

 もしかして音楽ってのもないのかもしれねえなあ。


 手拍子みたいのはあるんだよな、泥酔した俺は良く其れに合わせて踊るらしいし。

 縦笛くらいなら教えられるし、落ち着いたらその手の文化も広めてみるか。


 ◇◆◇


 翌日――


 不機嫌そうな女神と、すこしウキウキとしたシゲミチ達を連れ雪遊び場にやってきました。

 

 お昼を作って貰うため同行させたウサ族達はログハウスへ。

 彼らにも手が空いたら少し遊んで貰うことにしよう。


「ユウ!こんな所で一体なにをするんじゃ?」


 勿論ついてきたマルリさんがクロベエの上から聞いてくる。


「あそこに丘が見えるでしょう?まずはあれからやってみましょう」


 あんな丘で何をするんじゃ、と首をかしげるマルリさん。

 うむ、ルーちゃんナーちゃんやってみせなさい。


「じゃー、私達がお手本見せるから見ててねー!」

「あれはクセになりますぞ!」


 ログハウスからソリを持ってきたルーちゃんナーちゃんがウッキウキでそれを引きずり丘に登っていく。


「ユウさん、あの子達は一体何をはじめるんですか?」


 わからない……と言う顔でシゲミチが聞いてくる。


「まあ、見てろって。きっとお前達も直ぐにやりたくなるから」


「いっくよー!!」


 ルーちゃんのかけ声と共に二人が滑り降りてくる。

 

 昨日ずっと乗ってたのだ、完全にソリをマスターし、波のようなシュプールを描きながら楽しげな表情を見せる。


「なるほど……あの台に付いた足で雪の上を自在に……」


 ブツブツと分析をして居るのはザックだ。

 その頭に乗っているモリーは既に乗りたくて仕方が無いとピョンピョン跳ねている。


「あれはソリと言って雪の上を移動する乗り物なんだよ。

 建物の中にもっとあるから、好きなように乗ってくれ」


 俺がそう言うと、直ぐにそれぞれソリを取りに向かっていった。

 あれは面白いからな、仕方が無い。


 間もなく、次々に滑り降りてくる姿が見られた。

 初体験ながら皆一様に楽しんでいるようで成功を噛みしめる。


 その中には女神の姿も混じっていて、あんだけ寒いのは嫌だと言っていたくせにとても嬉しそうに滑っている。


 なんだよ、遊びとなればあんな顔するんじゃないか……。


 微妙にほっこりした自分が悔しかった。

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