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第十二話 ごはん!


「ふう……こんなものか」


 夕方までがんばり、さまざまな生活用品をクラフトした。


まずは一番欲しかった物、快適な睡眠は心と体を健やかにする!そんなわけで真っ先にベッドを作りましたとも。初めてクラフトしたヤカンもそんな理由があったからだけれども、暖かい飲み物と安らかな睡眠は身体は勿論心に安らぎを与えますからね。有るとないとでは疲れが段違いだ。


 まだ手持ちの材料に乏しいため、手近なもので作れる干し草のベッドだけれども、フカフカでとても気持ちがよいんだ。ハイジだって干し草のベッドで寝ていただろう? 安眠出来ないわけが無いのさ。それと合わせて毛皮を素材にした贅沢な毛布も作ったので少しくらい冷えても安心。


 めっちゃケモノ臭かったらどうしようって思ったけど、クラフト機能の妙で綺麗さっぱり無臭になっていたのがありがたい。


 そしてお次は調理器具だ。包丁に小さなナイフ、お玉に菜箸と、フライパンに鍋! 料理をするのに最低限必要なものを作ったよ。さらに皿やナイフとフォーク、箸なども忘れずに作り、それらを入れる食器棚まで作っちゃいました。


 で、最後の仕上げにキッチンにテーブルと椅子を並べるとかなり家らしくなって、そりゃもう満足感がハンパなかったね。


 後は建造ツールを駆使して水道的なのを作れれば文句ないな。うーんこれぞ文化的な暮らし。


 文化的な……暮らし?


 そう、口に出した時、はたと気付いてしまう。今はまだ明るいが、これから夜が訪れる。


 今までの狭い仮住まいではスマホのライトで誤魔化してきたが家となれば照明は是非とも欲しい!蛍の光で本を読むだなんて文芸的には美しいけれど、実際やったら目が死んでしまいます。


 昨日はさっさと寝てしまったから気にならなかったけれど、これから毎日暗い部屋で夜を過ごすのは嫌だ。


 となればランプが必要だなと考えたときに燃料問題が頭をよぎったけれど、あー、流石ファンタジーだね! 製作キットで調べると魔石ランプというおそらくそのままの意味だろう物が見つかった。


 そりゃもう、クラフトするしか無いよな。


できたものは魔石からエネルギーを取り出して光を発するランプで、思いのほか結構明るい。60ワットの白熱灯くらいは軽く凌駕するのでは無かろうか?


 取りあえず2つ作ってキッチンと部屋に吊るせば夜でも充分活動できそうだ。説明を見ると点かなくなったら代わりの魔石を入れろとある。なるほど電球と同じ仕組みか。実にわかりやすくてよいな。


白熱灯に例えたが、あかりの色もそれに近い落ち着く色合いで非常にありがたい。ゆらゆらと揺れる光は魔石から発せられているとは思えないほど柔らかで優しい光だった。


 こうやって一生懸命俺がなんやかんやと働いてる間、女神と猫は何をしていたかといえば、怠惰に惰眠をむさぼっていた。


「ぷー しゅるるる……ぴすー しゅるるる……」


 鼻から妙な音を立てクロベエの腹をよだれでべしょべしょにしている姿はばっちり写真に収めておいた。

 

 機会があれば他の神などに見せてあげようと思う。弱みは握ってなんぼだぜ!


 あれば有る程よいと、何枚か撮っているとシャッター音がうるさかったのか目を覚ましてしまった。

 

 おのれ、次はムービーを撮ろうと思っていたのに!

 

 そして、起きたからと言って俺にアドバイスをしに来るということもない。謎の教えたがり属性どこにいった。


 起きて何をするかと思えばクロベエの腹をまさぐっている。クロベエもクロベエで気持ちよさそうに喉を鳴らしているので、ダ女神もまただらしない顔で「ここがいいのかー!ここかー!」などと言いながら次々に場所を変え腹をまさぐり続けている。


もう用事も済んでする事も無く、ただただ暇をつぶすだけのパンちゃんが帰らずクロベエの腹を撫でくり回してる理由は一つだけだろう。


 今日も手伝ったぞ、うまい飯を食うまで帰れるかという意思が時折チラチラとこちらを見る顔から強く感じられる。無言のアピールという奴だな。


……日も暮れてきたし、そろそろ飯の用意をしてもいい頃合いか。調理器具も揃ったし、無い腕を奮ってやろうじゃないの。



フライパンを熱しヒッグホッグの脂身を落とす。じっくりと脂身を炒めるとと、じゅうじゅうとたっぷり脂が広がりふわりと甘い香りが立ち上る。そこに刻んだジャンニの葉を入れ丁寧に炒めて香りをつける。脂とガーリック的な香りが合わさって最強に腹が鳴るね。


脂身とジャンニは一度取り出し、香りがついた脂でヒッグホッグの肉を炒めていく。


 頃合いを見てジャンニの茎を加えさっと炒め、ジャンニの葉を戻して塩、胡椒を振って味を調えたら歓声だ。脂身は後でクロベエが美味しく頂きます。


 次の一品はムックルのスープだ。


めちゃくちゃデカいキノコなので、あらかじめ調理しやすいサイズに切り分けて置き、作業手順を短縮してある。ボックスから取り出したそれを一口サイズにスライスし、水から茹でて出汁を取ってみる。


 うん、えぐみのない良いダシがでているな。


 シンプルにそのままいけそうだったので、塩と胡椒で味を調え完成としてしまう。


 そして最後の品はサラダ。リーゼを軽く水で洗い、切りそろえたものをボウルに入れて湯通ししたシラウに塩胡椒を加え、ペースト状にして上からドレッシング代わりにかけた。ペーストをペロリとなめてみたが、なるほど確かにこれはアボカドに近いな。青臭さは一切無く、卵黄のようなコクを持つ濃厚なソースに仕上がっている。これは色々と便利に使えそうだ。


まだまだ調味料が乏しいが、それでも料理と呼べそうなものができて満足だ。


「めしだぞーう」


一声かけた瞬間椅子にパンちゃんがいた。クロベエの腹から転移してきたようだが、どんだけ待ってたんだこの女神は。


そしてクロベエもいつの間にか背後に回りのしかかってくる。普通サイズの頃から飯時が近づくと良く俺の脚にしがみついてきてそれはそれはかわいかったが、今のサイズでやられると……その、ちょっとシャレにならない……ライオンにのしかかられている様なもんなんだぜ? 重てえってレベルじゃねえ。


 つぶされる前にクロベエのお皿に肉を盛る。魔獣とはいえ塩分がだめかもしれないので、一応味付け無しのボイル肉と、味付け前に取り上げておいた脂身だ。


「では、いただきます!」


「いただきます」

「いただきー!」


うむ、いただきますが言えるよい女神だ。


まずは肉炒めだが、ニンニクのような風味が効いてとてもうまい。ジャンニの茎がまたにんにくの芽のようで歯ごたえも楽しく、肉単体で食うのとは違って『ちゃんとした飯を食っている』感があるね。


スープはキノコの優しい味がした。さっさと作ったため、やや薄味になってしまったが、肉炒めの味が濃いめなのでちょうどよかった。

 

 野菜が手に入ったら鍋でも作るとよさそうだなあ。どうせ来るだろう女神とクロベエで鍋を囲んでさ……キットそれなりに楽しいことだろう。うーん、その前に酒や醤油もなんとかしなきゃな。醤油は作れる気がしねえけど、そこはクラフト機能様に丸投げして……。


 そしてどんなもんか作ってみたサラダがまた美味い。


ペーストの味見をした時に濃厚なアボカドのようだと思ったが、これが思った以上にリーゼと相性がよかった。シャキシャキと瑞々しいリーゼを濃厚でねっとりとしたシラウが優しく包み込む。単体ではややしつこい感じがしたシラウだが、リーゼの香りでサッパリするのでちょうどいい。


 サラダでさっぱりした後、再び肉炒めをほおばる。うーんやはりご飯かビールが欲しいな……


「これさービールがあったら最高だよねー」


 と、思わずパンちゃんに同意を求めると


「っかー!」


女神は缶ビールを片手に満足そうな息を吐いていた。



……うん……もうなにもいうまいよ…。


「あの……おれにも1本ください……!」






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