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第百十六話 かいせきめがねー(例の声)

 その日の夜、温泉から上がりビールをぐいぐいやってる女神を横目で見ながら呪文を唱える。


「困ったなあ、困ったなあ。何処かに聡明で美人な女神的な存在は居ないかなあ」


「何よそれ、私を呼んでるの?白々しいけど許してあげるわ」


 馬鹿が少し嬉しそうな顔でこちらを見た。馬鹿め、かかったな。


「おー、そうだウチには女神様が居たのでした!でもなあ、お休み中だからなあ。

 温泉で美しさに磨きがかかった女神様だからなあ、俺みたいなゴミクズのお話しなんてなあ」


「わきまえてるじゃ無い、どうしたの?急に良い子になっちゃって温泉?温泉の効果なの?

 いいから言ってご覧なさい?今なら叶えてあげることもやぶさかでは無いわよ?」


 ううむ、ここまで馬鹿だと心配になってくるな。

 っと、要らんこと考えると心を読まれてバレてしまうな。


「俺はスマホで、女神様は多分神スキルかなにかで住人のパラメータみられるじゃないっすかー」


「そうね、それが無ければこの集落なんて無理ゲーよ。てか名前を見ても無理ゲーよ」


 まあ、わかる。殆ど同じ見た目だから名前が違うくらいは大した差では無い様な気がしてくるからな。


「それでー、シゲミチ君達があ、困ってるんですよねー。

 名前とー年齢とー職業などがー分かるような眼鏡って作れませんかあー?」


「馬鹿にされてる気がしてきた……でもな……綺麗って言ってたし……玉の肌とも……」


 何かブツブツと自問自答を始めた。

 あまり露骨な口調は辞めよう、俺も面倒くさい。


「そんな感じで何か作れませんかね?俺も毎回スマホ越しに見るのめんどくせえしさ、眼鏡的なので見れたら便利じゃ無いかなって」


「作れるけど、これは量産出来たらかなり酷い事になるわよ。

 特に女性は年齢を気にするから……」


「まあ、その辺はさ、持ち主登録でもしちゃったら良いんじゃ無い?

 俺とシゲミチ、シズクだけが使用可能で、後は本人が許可すれば委譲出来るようにとかさ」


「それならいっか。眼鏡よね?じゃあデザインは適当に作るけど文句言わないでよ」



 と、調子に乗りまくった女神は良い具合に鑑定眼鏡を5つ作り上げたのだった。

 一つは俺用の黒縁眼鏡、シゲミチのはメタルフレーム、シズクは赤のセル眼鏡だ。


 残り二つは予備と言うことで俺が預かっている。


 それぞれ名前、年齢が表示される仕様だが、俺のだけ特別製でステータスがそっくり見られるようになっている。

 これさえあれば今後色々と楽になるはずだ。


 ちなみに女神は情報がロックされていて一切見ることが出来ない。

 これは前にスマホで試した時にも同じ結果だったので予想はしていた。


 その辺について聞くとどうせまた「女には秘密が多いのよ」とか「あたしに興味があるからって勝手にみちゃだめよ、このすけべ!」とか言い始めて面倒な事になる。


 名の出来にしないのが一番なのだ。


「おーい、シズク、シゲミチいいのやるぞ」


 二人を呼び、眼鏡を手渡す。


「報告書に上がっていた眼鏡だ。これをかければ見分けがつくようになるはずさ」


 二人は早速装着しキョロキョロとしている。

 シゲミチはほわっとした顔つきが精悍になり、逆にシズクはキリリとした顔が柔らかな印象になっている。


 眼鏡は大きく雰囲気を変えるからなあ。

 ザックが羨ましそうな顔をして居るが、あれは物が欲しい顔では無く技術が欲しい顔だ。

 バラした所で真似が出来る物では無いはずだが、確実にバラすはずなのでザックには渡さない。


 そもそもザックには今のところ必要が無いはずだしな。


「あの、ユウさん!」


 眼鏡がよく似合うシズクが質問をしてきた。

 

「はい、シズクくん!どうしたね!」


「今ユウさんを見てるのですが、名前が『ナルセ ユウ』と表示されているのも気になりますが、その横に書いてある数字は何なのでしょう?27と書いてあるのですが……」


「何って年齢だよ。ねんれ……ああ、そうかそういや年齢の概念がねえんだった」


 暦と共に広めたつもりだったが、そういや言ってなかったような気もする。

 なので、改めてざっくり説明してやった。


「と言うわけで、産まれた日から1年経ったら1歳、2年経ったら2歳……とその数字が変わっていくわけだ。

 年齢がきちんと管理されるようになれば、例えば身体が未熟な年齢……そうだなあ18歳未満は酒を飲んではダメ!とか、ボウガンの装備許可が下りるのは15歳以上、とか取り決めがやりやすくなるんだよ」


「なるほど、便利な物ですのねえ。私とシゲミチさんが15歳……と言う事は、同じ位の長さを生きていると言うことですね。

 ザックさんは17歳で、少し先に産まれている。ユウさんが27と言う事は……結構年が離れてらっしゃる……」


 地味に攻めてきよる。

 ちなみにパンの方を見ようとしたので、耳元でこっそりと


「あいつは年齢を知られるとめちゃくちゃキレる。

 隠れて見ようとしてもバレるから奴にだけは使うな」


 と、アドバイスを装った隠蔽作業をしておいた。

 あいつ全ての部分が「UNKNOWN」と表示されるからな。

 それの意味や理由を聞かれても『大人の女性には秘密が多いのさ』としか言えねえよって何処の馬鹿女神だ。


「折角だから、お前ら毎日自分の年齢をチェックしとくと良いぞ。

 その数字が一つ増えた日、それが誕生日つまり、お前達が産まれた日だ。

 誕生日にはお祝いをする風習が俺が知ってる土地にあった。

 その時が来たら教えてくれよな」


 実は俺には誕生日すら見えている。

 しかし、こう言う楽しみがあってもいいだろ?


 なので内緒にしておくんだ……ああ、ザックそんな目で見るな……。


 悲しげな目で俺を見つめるザックに負けて結局一つ渡す羽目になった……。

 壊したら二度とやらねえからなと言ったので、分解するようなことは無いだろう。


 ……ないよね?


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